不動産投資は、投資先となる不動産購入に資金が必要な投資だ。ほとんどの個人投資家がローンを組んで不動産を購入する。そこで今回はローン申し込みの手順やポイント、限度額などを紹介していく。ローンの知識を得ることで不動産投資を成功させてほしい。

不動産投資のローンと住宅ローンの違いとは

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(画像=PIXTA)

不動産投資のローンと住宅ローンの大きな違いは、ローンの借り入れ目的と融資審査内容だ。

住宅ローンでは「自分が住むための家(不動産)」を取得するために、物件購入費用を借り入れるのに対して、不動産投資のローンでは、「購入した不動産を他人に貸すことで家賃収入を得る」ことを目的に、購入資金を借り入れる。事業資金を借り入れるのと同様だ。

目的の違いにより、融資審査内容も変わる。住宅ローンでは、現在得ている給与などから返済能力を判断されるのに対して、不動産投資のローンでは、物件の収益性など事業内容によって審査される。住宅ローンはあくまで「住む」ことが目的であるから、ローンは現在得ている収入の範囲内で返せる額が限度額となるが、不動産投資ローンでは物件の収益性が高ければ、現在得ている収入以上の額を借り入れることが可能だ。

金利も異なる。住宅ローンは返済原資が「給与」であり、その範囲内で返せる額を貸し付けているため、銀行側としては貸し倒れリスクが少ない。そのため住宅ローンの金利は0.5~2.0%と低くなっている。それに対して不動産投資ローンでは、空室ができるなどして、家賃収入が想定通り入ってこないリスクがある。その分住宅ローンより貸し倒れリスクが高く、金利も1.5~4%と高い。

不動産投資のメリットとデメリットとは

次に気になるのが不動産投資のメリットとデメリットであろう。

まず不動産投資のメリットは、入居者がいれば安定した収入源を得ることができるという点だ。ローンの返済が終わった後も入居者がいれば、家賃収入を得続けることができる。ローン返済がなければより収益性も高まるため、定年までに投資用物件を購入し、完済しておけば、老後資金が引き続き収入として入ってくることになる。

さらに不動産投資は節税効果もある。不動産購入後1~2年は諸費用が発生し、所得税控除が受けられることが多い。特に高所得者にとっては高い節税効果を発揮する。不動産は現物資産であるから、元本割れのリスクが少ないというのもメリットだ。

デメリットは空室になれば赤字になり、赤字がかさめばローンが破たんする可能性がある点だ。不動産投資で収益を出すには、借り手がつき家賃が毎月入ってくることが前提となっている。借り手がつかず空室が発生すると、ローン返済額に加えて管理手数料、修繕積立金などの支出がかさみ、キャッシュフローが行き詰まる。特に割高な物件を購入してしまったり、購入前の利回り計算が甘い場合はリスクが大きくなってしまうので、注意が必要だ。

また不動産資産は流動性が低いこともデメリットである。さまざまな理由で資産を現金化したい場合に、株などの資産に比べて不動産は売却までの手間も時間もかかってしまう。

不動産投資のローンで押さえておくべきポイント

不動産投資にあたり、ローンを利用する場合に押さえておきたいポイントを紹介していこう。

ローンのリスク

不動産投資でローンを組むリスクについてまとめておこう。きちんと把握することで、より安定した収益を出すことにつながるからだ。リスクには以下のようなものがあげられる。

・空室になり家賃収入が途絶え、ローン返済ができなくなる
・所持している不動産が地震や火災で使えなくなる
・売却価格がローン残高を下回り、手放すことができなくなる
・流動性が低く、現金化したい時すぐに売却できない
・金利の上昇リスクを受ける可能性がある

なかでも最大のリスクは、ローン返済ができなくなり破綻する可能性があることだ。不動産投資ローンを返済する原資は、家賃収入を利用する。家賃が滞りなく入っていれば返済できるが、空室が多くなり収入より支出が上回れば返済ができなくなってしまう。返済ができなくなれば不動産を売却することになるが、売却額がローンの借り入れ額を下回った場合など、最悪の場合は自己破産をしなければならないこともある。

不動産を所持している間はローン返済以外にも、管理手数料や修繕積立金などの支出がある。空室になったときはそれらも自分で支払わなければならないので、赤字額が大きくなり、負担となってしまう。

所持している不動産が地震や火災など避けられない災害で使えない状態になってしまった場合も、家賃収入が途絶えてしまう。それでもローン返済は残るため、たちまち収支がマイナスとなる。

家賃収入が滞り物件を売却するにも、売却価格がローン残高を下回った場合は、差額を別で用意しなければ売却することはできない。売却価格が上回ったとしても、売却までには時間がかかり、流動性が低いのもリスクとなる。

金利の上昇など経済の影響を受けやすくなるのもローンを組むデメリットだ。変動金利のローンを組んでいる場合、金利が上がれば返済額が上がって利回りに影響が出てしまう。金利上昇リスクは、現金で購入していれば関係ないが、ローンを組んだ時には気をつけて見ていかなければならない。

「借金」ではなく「融資」であることを念頭に

不動産投資ローンは借金ではなく融資として考えることが大切だ。

住宅ローンは「借金」として現在の収入の範囲内で返済できる額を借り入れることが大切となる。しかし不動産投資ローンは事業資金を「融資」してもらうものだ。そのため現在の収入よりも「物件の収益性」が重要となる。ローン返済額が現在の給与収入の範囲で返せる額だとしても、物件の収益性をきちんと判断していなければマイナスが重なるだけと考え、収益性を高める努力をしていかなくてはならない。

物件の収益性を高いものにするには、まずは物件選びが重要だ。購入前に経費などを織り込んだ実質利回りをしっかり計算し、キャッシュフローを組んでおくことで、より安定した収益を産むことができる。つまり経営としての意識を持つことが、不動産投資ローンを組むうえでとても大切なのだ。

属性によって限度額が変わる

不動産ローンの限度額は、借りる人の属性によって変わってくる。ローンの限度額や融資の是非は属性ですべて決まるわけではないが、審査の中で大きなウェイトを占める要素だ。なぜなら属性は返済能力につながり、貸し倒れや遅延が起きにくい属性の人には、多くの資金を貸すことが可能になるからだ。

属性の判断基準は金融機関によって異なるが、一般的には以下のような項目で判断される。

・業種
・勤続年数
・経済状況
・家族構成
・信用情報

融資審査でまずチェックされるのが、職業と勤続年数だ。高収入で失業の可能性が少ない職種が高く評価される。公務員、医師など安定性があり、ある程度の収入が見込める場合は好印象とされる。逆に収入が高くても自営業や非正規雇用など安定性が低い場合は、評価が下がる。

職業の信頼性が高くても勤続年数が短い場合は審査に通らない場合もある。明確な基準は明らかになっていないが、勤続年数3年未満の場合は融資が厳しくなるといわれている。

次にチェックするのが経済状況だ。いくら年収が高くても、審査の時点で住宅ローンや自動車ローンなどの残高が高い場合は評価が下がる。負債が多すぎる場合、これらはどのように返済するのか、不動産投資に影響を及ぼさないのかを説明しなくてはならないケースもある。

家族状況は、共働きの配偶者がいる場合は、配偶者の収入を見越して返済能力が高いと評価されることがある。未成年の子どもの人数は養育費の負担が大きいと判断され、評価が下がる場合もある。

信用情報とは、ローンやクレジットカードの返済履歴のことだ。年収や保有資産額が高くても、過去に滞納履歴があると評価が下がり、ローンの審査に落ちることがある。

例えば年収450万円のサラリーマンの場合、年収の7倍から10倍程度までは受けられることが多いため、限度額は4500万円前後となる。属性が上がると限度額が高くなるケースが多く、例えば勤務先が上場企業であったり妻帯者であれば、年収に対する融資額を1割増加する金融機関もある。つまり一部上場企業で共働きの妻を持つ年収450万円のサラリーマンであれば、5000万円から5500万円まで融資を受けることが可能になるというわけだ。

不動産投資のローンを組む際の手順

不動産投資ローンを組む場合の手順を紹介していこう。まずは物件を探すのが先決だ。収益性が高そうな物件を見つけ、投資したいと思ったら、電話やファックスなどで銀行員に物件概要を送付する。利用する銀行は自分が住んでいるエリアか、物件があるエリアに本店や支店がある銀行でなければならない。今後の手間を考えると自分が住んでいるエリアに本店や支店がある銀行を選ぶといいだろう。特に地銀や信金は、営業エリアに住民票や法人登記がないと、審査の対象外となるので注意しておきたい。

銀行員に物件概要を見てもらい、融資が可能か簡易的な審査をしてもらう。簡易審査でOKが出たら、銀行に事業計画の説明をしにいく。この時、事業計画を説明できる資料を作成しておかなくてはならない。必要となる資料は以下のようなものになる。

・事業計画書
・自己紹介資料
・物件概要書
・レントロール(家賃表)
・登記謄本
・建物図面(各界平面図、立体図、間取り図)
・公図
・建築確認済証
・固定資産課税証明書
・全部事項証明書
・駐車場区画図
・都市計画証明
・告知事項
・修繕履歴
・空室賃貸募集資料

物件概要書以下の資料は不動産業者にお願いすると作成してもらえる。投資家が作るべき資料が事業計画書と自己紹介の資料だ。特に事業計画書がきちんとしているかどうかは融資の結果を大きく左右する。空室率の推移や家賃下落率、大規模修繕のタイミング、売却の予定などを入れた計画書を作成することで、銀行への説得力が増す。自己紹介の資料は経歴、家族構成、資産背景、不動産賃貸業への意気込みなどを記載しておくこと。

ローンを上手く使って不動産投資を成功させる

不動産投資は多額の資金が必要な投資だ。しかしローンを上手く利用することにより、サラリーマンでも不動産投資を始めることが可能になる。

不動産投資ローンの審査を通すには、しっかりとした事業計画が必要だ。事業計画をきちんと立てることは審査を通すだけでなく、実際に収益を安定させるために重要となる。しっかりとした計画を立て、ローンを上手く使って不動産投資を成功させてほしい。(ZUU online 編集部)