前日については、為替操作国に認定された中国が、人民元の基準値レートを6.9683元にすると公表し、節目の7元よりも元高水準だったため、米中貿易戦争に加え、通貨安戦争にまで発展することが懸念されていましたが、中国当局が元高水準に設定したことにより、過度な通貨安戦争への懸念が後退しました。ドル円は105.526円まで下落していたものの、一時107.080円まで急騰しました。本日も人民元の基準値レートが注目されており、1ドル=6.9996元と発表されました。前日よりは元安に振れていますが、7元よりは元高水準ということもあり、影響は限定的なものになっています。
中国人民銀行は、外国企業に対して「人民元の大幅な下落は続かない」と伝え、先行きの不安払拭に努めており、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長も「トランプ米大統領は中国との協議継続を望んでいる」「中国への関税についての状況は変わり得る」と発言していることもあり、状況次第では両国の関係回復のきっかけが生まれる可能性がありそうです。ただ、FRBの政策金利動向については、ナバロ米大統領補佐官は「FRBは年末までにあと0.75%か1.00%利下げするべき」との意見を述べる一方、ブラード・セントルイス連銀総裁は「追加利下げが必要か今すぐ決めるのは時期尚早」との考えを示しており、依然としてホワイトハウスとFRBとの温度差があることが証明されてしまいました。
クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、さらなる通商協議に向けて9月に中国の使節団を迎える検討をしているとの考えを示しています。9月についても、引き続きFRBの金利動向に加え、米中通商協議が為替動向に直接影響を与えそうです。
今後の見通し
英国各紙は、ジョンソン首相はEU離脱の条件に関してEUと再交渉する意図をもっておらず、「合意なき離脱」がジョンソン首相の中心的なシナリオになっていると報じています。EUの外交担当者は、英国政府が合意のないままでEUを離脱する強いエビデンスがあると発言したとも報じられており、英国とEUが離脱条件で合意できる見通しはさらに低下したと考えていいかもしれません。ドナフー・アイルランド財務相とジャビド・英財務相が会談を行い、「英国は合意なき離脱に向けた方策を見出す意向だが、合意できないと判断すれば、合意なき離脱を検討する意思があると認識している」との声明を出していることからも、「合意なき離脱」の可能性が高まっていると考えられます。
米財務省が中国を「為替操作国」に認定したことで、中国財政省と協議し、国際通貨基金(IMF)へ訴えることになりますが、国際通貨基金(IMF)は先日の報告書で「人民元水準はファンダメンタルズに合致している」と言及しており、為替操作の訴えは却下される可能性があります。中国人民銀行は、「中国は為替操作をしていない」「中国は競争的な通貨の切り下げをしない」と繰り返し声明をだしていることもあり、米中通貨安戦争の宣戦布告と捉えらえた米国の「為替操作国」認定は、空振りに終わるかもしれません。その場合は、一時的にリスク回避の巻き戻しの動きになりそうですが、引き続き両国の関係悪化が意識され、上値が抑えられる展開になりそうです。
AUD/USDは0.6800ドル上抜けが焦点になりそうだ
RBAの政策金利発表は、市場予想通り据え置きとなり、豪ドル買いが強まる場面もありましたが、0.6800ドルを手前に上値が抑えられました。ただ、下値の底堅さは依然として確認することができるため、AUD/USDのロング戦略は継続とします。0.6760ドルでのロング、利食いは0.6830ドル付近、損切りは0.6730ドル下抜けに設定します。
海外時間からの流れ
本日発表されたNZ中銀政策金利発表では、市場予想は25bpの利下げでしたが、結果は50bpの利下げとなり、サプライズの内容になりました。NZドルは当然としてオセアニア通貨全般が売られており、前日据え置きを発表したRBAの早期利下げ観測が再び再熱しそうなため、リスクオフの材料として見られそうです。
今日の予定
本日は、独・6月鉱工業生産、加・7月Ivey購買部協会指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、エバンス・シカゴ連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。