前日については、三つの中銀が市場予想を上回る利下げを実施したことにより、世界経済の先行き不透明感が鮮明になったことで、リスク回避の動きが強まりました。まずは、NZ準備銀行(RBNZ)は25bpの市場予想を上回る50bpの利下げを断行し、インド中銀は25bpの市場予想を上回る35bpの利下げ、タイ中銀は据え置きとの市場予想に反して25bpの利下げを行いました。昨日の利下げラッシュに代表されるように、世界の政策金利が低下することは、金利の下げ余地が殆どない日本と比べて金利差が縮小することになるため、自然と円買い圧力がかかることになります。米中通商協議が難航していることを考えると、引き続きこの流れは継続するのではないでしょうか。
海外時間では、特段材料はなかったものの、米10年債利回りが1.5931%前後まで低下し、ドル売り、円買いの動きが強まり、ドル円は、一時105.499円の水準まで下値を拡大しました。ただ、その後は、注目されていた米10年債入札では、低調な結果となり、米10年債利回りが1.68%近辺まで低下幅を縮小し、ドル円は一時106.20円近辺まで買い戻されました。NY時間午後にかけては、一時は580ドル超下落したダウ平均がプラス圏を回復したほか、日経平均先物が2万0200円から2万0640円まで急速に持ち直したことも、下支え材料になりました。
ただ、トランプ大統領は自身のツイッターで、「我々の問題は中国ではない。米連邦準備理事会(FRB)だ」「FRBは大幅で迅速な利下げを実施するべき」との考えを示したほか、合わせて「馬鹿げた量的金融引き締めも終了させる必要がある」とも指摘しています。ここにきて、再びトランプ大統領の利下げ要求が如実になってきたことから、ドル円の上値を重くする材料として意識されそうです。
今後の見通し
中国が「為替操作国」として認定されてから、俄然注目度が高まっている人民元の基準値レートですが、5日が6.9225元、6日が6.9683元、7日は6.9996となり、トランプ米政権がレッドラインと見なしている「7元」に隣り合わせになっています。そして、本日の基準値レートは1ドル=7.0039元にすると発表し、7元のレッドラインを上抜け、2008年来の元安水準になりました。ただ、一部報道では市場予想よりは元安設定ではなかったとも報じられており、基準値レート公表後は、ややリスクオンに傾いています。
目先リスクオンには傾きましたが、7元のレッドラインを上抜けたことで、米中貿易戦争の新たな引き金となる可能性があり、両国高官からの発言が今後の重要なポイントになりそうです。状況によっては米財務省のドル売り介入懸念が残り、そうなると、世界最大の米国債保有国である中国が報復措置として米国債の売却に乗り出す可能性が意識されます。一時的にリスクオンに傾いてはいますが、影響は限定的になりそうです。
ユーロドルはテクニカル重視で考えれば、1.1250ドルショートが機能しそうだ
NZ準備銀行(RBNZ) が想定外の50bpの利下げを行ったことで、豪ドルが連れ安となり、0.6760ドルのロングは、0.6730ドルで損切り、手仕舞いです。ファンダメンタルズ要素がプラスマイナス入り組んでいるため、テクニカル重視の戦略を想定し、1.1250ドルで上値が抑えられているユーロドルのショートを検討します。戦略は1.1250ドル付近での戻り売り、利食いは1.1130ドル、損切りは1.1300ドル上抜けを想定します。
海外時間からの流れ
本日発表された中国・7月貿易収支では、3100億元の黒字予想が3102.6億元の黒字と、ほぼ市場予想通りの内容になったことから、影響は限定的になりました。今年1月から6月までの中国の対米貿易黒字は、1,404億ドルとなり、昨年同時期の1,340億ドルから増大しており、トランプ米政権による対中制裁関税が米中貿易不均衡を是正できていないことが示されていましたが、一旦問題は先送りされたと考えられます。
今日の予定
本日は、米・新規失業保険申請件数(前週分)、加・6月新築住宅価格指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。