「OPENNESS」こそがゴールへのカギだ

OPENNESS
(画像=Tom Wang/Adobe Stock)

国内外で数多くのプロジェクトを成功に導き、現在は企業や教育機関におけるプロジェクトリーダーの育成に力を入れる伊藤大輔さんは、著書『プロジェクトリーダー実践教本』で次のように述べています。

「多くのリーダーは“OPENNESS(オープンネス)”を重要視しています。これはあらゆる国のビジネスにおいて共通の概念といっても良いでしょう」

「オープンであること」が大事なのは想像がつきますが、具体的にどう振る舞えばいいのかと考えると人それぞれに違うイメージを持つのではないでしょうか。

ここでは、リーダーたちが重要視するという「OPENNESS」について、『プロジェクトリーダー実践教本』第1章を中心に見ていきましょう。

信頼されるためにまず必要なこと

伊藤さんは「OPENNESS」を「寛大さ」「心が開かれていること」「開示性」「開放性」と表現しています。また、OPENNESSは2つの重要な観点を持っていると指摘します。それは「自己を開示すること」と「他を受け入れること」の2つの観点です。

企業でも政治の世界でもディスクローズ(情報を明らかにすること、発表すること)が求められます。なぜなら、情報が開示されないと透明性がなくなり、信頼・信用が得られないからです。

このことはリーダーシップにもいえます。チームメンバーやステークホルダーから信頼を得たかったら、リーダー自身が、自分がどういう人間なのかを真っ先に明らかにする必要があります。そうすることによって、メンバーたちはコミュニケーションのきっかけをつかめます。それが、深い関係を構築することにつながるのです。

もしあなたがリーダーになったら、時間や場所、公式か非公式かなどを問わずに、自分から積極的に情報開示しましょう。内容も仕事に関わることだけでなく、趣味や好きなスポーツ、家族のことなどプライベートな情報も提供します。「相手との接点」をできるだけ多く見つけたいからです。

プロジェクトは期限が決まっている仕事ですから、より早くチームメンバーやステークホルダーとの関係構築を進め、リーダーとしての信頼を得ていく必要があります。そのために関係構築のきっかけとなる接点をより多く提供することが重要です。(51ページ)

キックオフで重視すること

伊藤さんも多く関わってきたグローバルなプロジェクトでは、キックオフを旅行形式で行なったり、懇親会を開催したりすることが多いようです(「プロジェクト アクセラレーション プログラム」といいます)。コストはかかりますが、チームビルディングのためのプログラムを最初に設けることでプロジェクトの成功率も高まり、結果的にトータルコストも抑えられる、と考えられているからです。

しかし、小規模なプロジェクトの場合は予算もなく、いきなり旅行、というわけにもいきません。その場合は、伊藤さんがすすめる「Speed Dating」を試してはどうでしょうか。

もうひとつ、「Speed Dating」という簡単なワークがあります。ホワイトボードの前にチームメンバーと一緒に立ちます。そこに自分とメンバーの名前を書きます。さらに自分とメンバーとの共通点をホワイトボードに書き出します。リーダーから積極的に話しかけて書き込んでいきましょう。

例えば「私は営業出身です。皆さんは?」というような感じです。すると「私は今営業です」など、メンバーとの共通点が見つかったら、自分とメンバー、メンバー同士を線で結び、その線の間に「営業」と書きます。

もちろん、仕事だけではなく、先ほど述べたプライベートの情報もリーダーから提供してみましょう。

例えば「私はランニングが趣味です」と話し、「私もランニングしています」というメンバーがいれば、自分とメンバー、メンバー同士で線を描き、線の間に「ランニング」と書いたり、走っている人の絵を書いたりします。(54-55ページ)

OPENNESS
『プロジェクトリーダー 実践教本』53ページより(画像=日本実業出版社)

ランニングをしなくても、ゴルフやフットサルが趣味だ、という人が出てくるかもしれません。それらもボードに書いて、メンバー同士の共通点を見つけていきます。

このワークのポイントは、やはりリーダーの自己開示です。自分の情報を率先して開示するのは恥ずかしいかもしれませんが、リーダーがオープンにならないとチームビルディングのスピードも遅くなる傾向にあるそうなので、限られた時間のなかで強いチームを作るために、どんどん自分を出していきましょう。

価値観の違いを前提に

次に、OPENNESSのもう一つの観点、「他を受け入れること」について考えます。

例えば、あなたがあるプロジェクトメンバーで、「タスクの順序設定はこうしたほうが良いと思います」とリーダーに提案・進言したとします。

「いや、それだと失敗する可能性が高い、私が考えた通りにやってほしい」と返答するリーダーと「その理由を詳しく教えてくれないか」と返答するリーダー、どちらについて行きたいと思うでしょうか。

自分の提案が受け入れられるか、受け入れられないかは別として、一旦提案を受け止めてくれるリーダーについていきたいと思う方が多いと思います。合理的に考えれば、YES-NOを早く決断してくれるリーダーのほうが、時間を無駄に使わないリーダーとしてよいのかもしれません。でも何か心の中にもやもやしたものが残りませんか?(56ページ)

誰にでもプライドがあり、承認欲求があります。自分の提案を完全否定されると、否定した相手とのコミュニケーションには気持ちが向かないでしょう。チームにとってはマイナスです。

また、人はそれぞれ違う価値観を持っています。仕事をする理由、目標とすること、ゆずれないこと。生きてきた環境や経験から生まれる価値観を否定することは、相手を否定することにつながります。

価値観の異なるメンバーをどうまとめるか。伊藤さんは「議論」の重要性を指摘します。

先ほどチームメンバーとの共通点を見つける重要性を述べました。価値観においても同じ要素が必ずありますから、同一である部分から築いた信頼・信用関係を基に、価値観が異なる部分について互いの相違点を議論していくのです。

議論によって、他者を理解することができ、他者を理解することでプロジェクトチーム内の独自の文化が醸成されていきます。(58ページ)

以上のように、「自己開示」と「寛大さ」つまり「OPENNESS」は、チームビルディングの基本です。『プロジェクトリーダー実践教本』には、OPENNESSを土台とした、チームをゴールに導くための実践スキルがまとめられています。

最初から完璧なリーダーなどいません。ゴールを目指すなら、まずは「OPENNESS」から始めてはいかがでしょうか。

(提供:日本実業出版社)

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