プロ棋士・羽生善治九段に学ぶ「次の一手」の考え方
(画像=マネックス証券)

投資でいい結果を出すには「先を読む力」が欠かせない。マネックス証券が8月3日に開いた創業20周年記念イベントで将棋の羽生善治九段が講演し、勝負に臨むプロの心情を語った。歴代プロ棋士で通算勝利数最多を誇る羽生氏は、いわば「先読みの専門家」。彼の言葉には、リスクと向き合う投資家にとって重要なヒントが詰まっている。

羽生氏は1985年に中学生プロ棋士としてデビューした。将棋界の数々の記録を塗り替え、主要7タイトルで永世竜王、永世名人などの称号を得る前人未到の「永世7冠」を2017年に達成。昨年はプロ棋士として初めて国民栄誉賞を受賞している。

何手先を読むのか?

将棋は9行9列の盤に敵と味方の駒がそれぞれ8種20個ずつ載った状態からスタートする。打つ手は無限にあるわけだが、打てる手は1つ。無敵の棋士は何を考えて一手を繰り出すのか?

「駒を動かせるパターンはだいたい80通りくらいあるが、その中から直観で2つか3つを選ぶところから始める。残りの70以上ある手は最初から考えていない」と羽生氏は打ち明ける。「しらみつぶしに全パターンを考えていたら、いくら時間があっても足りない」と、理由はシンプルだ。「1手ごとに選択肢が3つとしても、『数の爆発』という問題にぶつかってしまう。10手先まで考えると、選択肢は3の10乗(5万9049)通り。6万通り近いシミュレーションをこなすのは現実的ではない」と、文字通り現実的な答えだ。