前日については、前週金曜にトランプ大統領が、米国は当面中国の華為技術(ファーウェイ)と取引しないと言明したことを受け、米中貿易摩擦が一層激化するとの思惑が強まったことで、リスク回避の円買いの動きが強まりました。ただ、トランプ大統領の発言は、ファーウェイ製品の購入のみを禁止することを意味しているとの報道が流れると、一時的にリスク回避の巻き戻しの動きが強まりましたが、米中貿易摩擦が世界中に波及している中で、問題解決の糸口のない状況では、ドル円、クロス円の上値は限定的になりました。
昨日は日本が祝日となり、東京市場が休場となった影響で、海外時間も全体的に商いが薄い状況になりました。ドル円は、一時105.053円まで下値を拡大しましたが、105.00円付近では厚い買い注文が控えていると言われており、105.00円の水準を割り込むことなく、じりじりと反発しました。注目の人民元の基準値レートについては、本日は1ドル=7.0326元だと公表され、前日の基準値(7.0211元前後)からは0.0115元程度の元安・ドル高水準になったものの、想定の範囲内であったこともあり、影響は限定的になりました。
ただ、引き続き、「逃亡犯条例」改正案をめぐり香港で混乱が長引いており、リスク選好の動きに至るには、難しい地合いになっています。ただ、戻りがあったところは上値が重く戻り売りのオーダーが増える一方、下値では戻り売りの買い戻しが入っており、年初来安値付近の水準ではありますが、ドル円は105円台での狭いレンジの動きになっています。
今後の見通し
ユーロについては、イタリアの政治危機が大きくなっています。コンテ首相は、今週、もしくは来週にでも内閣不信任案の投票を実施するのではないかと報じられています。サルビーニ副首相が率いる極右・同盟は連立政権から離脱するとみられ、10月に総選挙が実施される可能性が高まっています。世論調査の結果は反EUの姿勢を示している極右・同盟の勝利を示唆しており、イタリアの財政状況が厳しいことを踏まえると、政治的不確実性の大きさがイタリアの格付け引き下げの可能性を強めています。もし、引き下げられるようなことになれば、イタリア国債がECBのQE対象から外れる可能性も考えられます。
また、米中貿易摩擦が長期化していることを受け、ECBは9月に金融緩和策を決定する可能性が依然として高いことも、ユーロの上値を抑えています。考え得るシナリオとしては、ECBが9月の理事会で国債買い入れの再開に加えて、社債の買い入れも再開、そして、中銀預金金利も0.10%引き下げたうえで、金利の階層化も実施することが考えられます。おおよそ、マーケットも織り込みつつありますが、ユーロ売りの材料として意識されそうです。
ユーロドルはテクニカル重視で考えれば、1.1250ドルショートが機能しそうだ
1.1250ドルがユーロドルの上値目途として引き続き意識されているものの、ポジションメイクには至っていません。ただ、このラインはテクニカル的には重要視される水準であるため、引き続き戻り売り戦略は継続です。1.1250ドル付近での戻り売り戦略、利食いは1.1130ドル、損切りは1.1300ドル上抜けを想定します。
海外時間からの流れ
市場予想を超える50bpの利下げを行ったNZ中銀が、更なる利下げを示唆したことによりオセアニア通貨の上値が重くなっていますが、NZ財務省はテクニカル的には「NZ準備銀行(RBNZ)はオフィシャル・キャッシュ・レートを-0.35%まで引き下げることは可能」と発言していることもあり、まだまだ下げ余地があると考えられます。
今日の予定
本日は、英・7月失業率、独・8月ZEW景況感調査、米・7月消費者物価指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。