前日の海外時間では、まずは、中国国営の新華社が「劉鶴副首相はライトハイザー通商代表部(USTR)代表、ムニューシン米財務長官の両氏と2週間以内に電話協議を実施する」と報じたことをきっかけに、米中貿易摩擦が緩和されるのではないかとの思惑が強まり、ドル円は105.20円付近から一気に105円台後半まで円売りが強まりました。

その後に、USTR(米国通商代表部)が9/1から10%の関税を賦課する予定だった中国からの輸入品の一部について、クリスマス商戦に影響しないよう、関税賦課を12/15日まで延期すると発表したことを切っ掛けに、円安が加速しました。一部報道によると、スマートフォン、ノートパソコン、玩具等の約1,600億ドル相当の輸入品に対する関税賦課が12/15まで延期される模様です。ドル円は106円台半ば付近まで急騰し、円独歩安の動きになりました。その後も株高の動きも円安と後押しする形となり、ドル円は一時106.975円まで上値を拡大しました。

その後のトランプ大統領の発言においても、「中国との閣僚級の電話協議はとても生産的だった」「米国が受け取っている数百億ドル(関税)は中国からの贈り物」など楽観的なものであったことも、今後の米中貿易摩擦の緩和に向けて好意的に捉えられた模様です。ただ、今回はリスク回避の巻き戻しの動きになりましたが、トランプ大統領のツイート一つでいつでも大相場になることが証明されたとも考えられるため、市場の期待に沿うような結果にならなければ、再びリスク回避の動きが強まる点は注意しなければならないでしょう。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

昨日の動きは実にダイナミックでしたが、米国の対中制裁関税の一部適用延期発表を受けて軒並みストップロスを巻き込んだ動きでもあり、ドル買いとなる材料が一旦出尽くしたことを踏まえると、利食いの動きに加え、マイナス材料には敏感に反応してくるかもしれません。ただ、105円割れを何度もトライして失敗していることもあり、下値も限定的になっていることで、これまでのような積極的なショートポジションは限定的になるのではないでしょうか。

独・8月ZEW景況感調査が市場予想の-28.0から大幅に悪化する-44.1となり、7月の-24.5からも大幅に悪化しました。これは、2011年12月以降で最低水準の内容であり、ドイツ経済がリセッション入りになるとの懸念が如実に示されています。イタリアの政局不安、香港での市民デモなどが市場心理を減退させていましたが、米中貿易摩協議の進展期待は、これらを払拭させるほどの内容だったのではないでしょうか。

ただ、米中貿易摩擦に緩和の兆しが見えてきてはいますが、引き続き、ECBは9月に金融緩和策を決定する可能性が依然として高いと感がられます。考え得るシナリオとしては、ECBが9月の理事会で国債買い入れの再開に加えて、社債の買い入れも再開、そして、中銀預金金利も0.10%引き下げたうえで、金利の階層化も実施することが考えられます。おおよそ、マーケットも織り込みつつありますが、ユーロ売りの材料として意識されそうです。

ユーロドルはテクニカル重視で考えれば、1.1250ドルショートが機能しそうだ

1.1250ドルがユーロドルの上値目途として引き続き意識されているものの、ポジションメイクには至っていません。ただ、このラインはテクニカル的には重要視される水準であるため、引き続き戻り売り戦略は継続です。1.1250ドルまでの戻りが難しくなってきていることもあり、1.1220ドル付近での戻り売り戦略に変更、利食いは1.1130ドル、損切りは1.1260ドル上抜けを想定します。

海外時間からの流れ

米中貿易摩擦が緩和されるとの思惑から、本日の人民元取引の基準値レートが注目されていましたが、結果は1ドル7.0312元と市場予想の市場では7.0502元付近よりも元高に設定したこともあり、東京時間の調整売りが一段落しています。直近の中国の基準値レートが想定の範囲内の内容であることから、今後は、基準値での反応で相場が動くのは限界があるとの見方が強まりそうです。

今日の予定

本日は、英・7月消費者物価指数/小売物価指数、ユーロ圏・第2四半期GDP(改定値)、米・7月輸入物価指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。