にわかに不動産投資の人気が高まっている昨今だが、なかでも「ワンルーム投資」に注目する人が多くなってきた。一方、「不動産投資でワンルームを選ぶと失敗しやすい」などという情報も飛び交っている。一体なにが正しいのか……投資初心者には判断できず、ただ不安だけが増している人も多いことだろう。そこで今回は、ワンルーム投資の実体とともに、成功するための投資のコツについて詳しく伝えることにする。ぜひ参考にしてほしい。
ワンルーム投資とはどのような不動産投資なのか
不動産投資とは、簡単にいえば「不動産を購入して第三者に貸し、賃貸料を受け取る」というものだ。「大家になる」とイメージするのもいいだろう。賃貸料のほかに、最終的に物件を売却して、購入資金との差額利益を得る要素もある。
一口に不動産(投資)といっても、実際にはさまざまなだ。土地を購入してそのまま貸すこともあれば、大きなビルを一棟建てて、階や部屋ごとに他人に貸すこともある。なかには誰にも貸さず、転売目的のみで不動産を投資として購入する人もいるのだ。
その一つの形として「ワンルーム投資」は存在する。これは文字通り、アパートやマンションなどの一室(ワンルーム)のみを対象とした不動産投資だ。イメージ的には、分譲マンションの一室を購入し、それを賃貸物件として第三者に貸すようなものを指す。
もしかしたら、自分で住むために購入した住居を将来的に人に貸す、または売却することを考えている人もいるかもしれないが、それも立派な不動産投資といえる。少なくとも初心者は、「誰もが関わる可能性のある身近なこと」と捉えると良いだろう。
ワンルーム投資のメリット・デメリットを解説
全ての投資において「万能なもの」は存在しない。どんな投資でも、投資である限り「リスク」はつきものであり、一定のデメリットは確実に存在する。一方で、投資手法ごとのメリットも確かに存在するため、その両面を考えて自分にあった投資かどうかを考えなければならない。
多くの初心者は、メリットにばかり気を取られ、リスクやデメリットを軽く考える、または無視する傾向にある。ものにもよるが、難しかったり分かりにくかったりするほど、メリットのみで暴走しがちだ。そのほうが簡単なのは分かるが、投資では危険極まりない。
ワンルーム投資においても、もちろんメリット・デメリットは存在する。この場合は、どちらかといえば「一般的な不動産投資と比べて」といった意味合いが強いかもしれない。他の投資手法と比べつつ、他の不動産投資とも比べながら考えたほうが賢明だ。
具体的なワンルーム投資のメリット・デメリットは以下の項目があげられる。
ワンルーム投資のメリット | ワンルーム投資のデメリット |
---|---|
購入費用が割安 | 空室 |
管理が簡単 | 家賃下落・物件価格の下落 |
死亡・税金・相続・老後対策など | 換金(売却)が困難 |
災害・金利上昇・法務など |
次の章から、一つずつ詳しく伝えることにする。
ワンルーム投資で得られるメリット
そもそも不動産投資は他の投資手法といろいろと違うが、なかでもワンルーム投資は「さらに違う特徴がある」といえる。このような視点で、ワンルーム投資のメリットを伝えていこう。
・購入費用が割安
これこそが、投資初心者に好まれる一番の理由といえる。例えば、あなたが購入したマイホームはいくらしただろうか? 一般的な不動産投資なら、購入費用はマイホームと大差ないのが基本だ。ワンルーム投資の購入費用は、1000万円程度で済むような物件も多い。
不動産投資をやってみたい、でも高額な不動産は怖い……。そう考える投資初心者にとって、ワンルーム投資の購入費用は、極めて敷居が低いように感じるだろう。購入費用が割安なら、それだけローン審査が通りやすい点も見逃せない。
・管理が簡単
不動産は集客したら完了ではなく、賃貸料の集金や管理、清掃、トラブル対応など、実にさまざまなことをしなければならない。賃借人や物件の数が多いほどに、その管理は困難になり、不動産管理会社に任せるのが一般的だ。
しかしワンルームならどうだろう。物件が1つ、または少ないうちは、何となく自分で集客・管理できそうにも思えるのではないだろうか。相応の経験者なら、実際に自分で管理することもある。どちらかといえば「物件を自分で管理したい」と考える人にはワンルーム物件はメリットだろう。
・死亡・税金・相続・老後対策など
一般的な不動産投資と同じく、ワンルーム投資でも他に以下のようなさまざまなメリットがある。
・死亡時に賃貸物件を遺族に残せる(生命保険の代わりにできる)
・節税につながる(計算上の赤字を給料と相殺できる)
・現金より価値が低い(相続税を減らせる)
・賃料収入を年金に上乗せできる(老後対策になる)
一般的な不動産投資と比べて、不動産価格(購入費用)が割安だからこそ、これらのメリットも効果は薄くなるが内容自体は変わらない。十分なメリットを得たいなら、ワンルーム不動産そのものを「増やす」という方法もある。後述するデメリットも踏まえ、存分に両方を天秤にかけて考えていこう。
ワンルーム投資で生じるデメリット
ワンルーム投資のリスクやデメリットは、大きく「より高額な不動産投資と比べて」と「一棟、または複数展開の不動産投資と比べて」に分けられる。初心者の場合、後者を主な基準に考えたほうが分かりやすいだろう。そこで以下、複数展開の不動産投資と比べたリスク・デメリットについて一つずつ紹介しよう。
・空室 冷静に考えてほしい。そもそも、不動産には空室(賃借人がつかない)リスクはつきものだ。仮に、あなたが10室のワンルームを持っていたらどうだろう。10室とも空室という可能性もあるが、数が多いほどに少しは埋まり、賃料も入る可能性が高いのではないだろうか。
1室なら、埋まらなければ賃料収入はゼロだ。逆にあなたのワンルームが魅力的な場合、2人目の客を逃がすことになる。数が少ないほうがリスクは小さくなるともいえるが、利益を優先して考えればデメリットだろう。「規模の力」が劣るのは、仕方ない側面といえる。
・家賃下落・物件価値の下落 投資の世界には、「卵は一つのカゴに盛るな」という格言がある。例えば、あなたが10室のワンルームを全国バラバラに持っていたらどうだろう。価値が下がるものもあれば、上がった物件もあるだろう。しかし、一つしか不動産を持っていなければ、影響をモロに受けることになる。物件価値の下落は、そのまま家賃の下落につながる点にも注意しよう。
不動産の価値とは、土地については上下するが、建物については築年数の関係で下がり続けるのが基本となる。下がり方は全国一律ではないが、一つしか不動産がないなら強制的に一律だ。ワンルーム投資の初期の頃は、特に意識しておきたいデメリットといえる。
・換金(売却)が困難 そもそも、不動産は他の投資手法に比べて換金しにくい特徴がある。仮にあなたがワンルームを10室持っていれば、いくつかは早めに売れるだろう。しかし1室しかないなら、その分だけ現金化しにくいといえる。不動産全てを手放す手間に比べればラクだが、すぐ現金化できるかという点ではデメリットだ。
物件の立地などにもよるが、ワンルーム投資は割安なものが多い。なぜ割安なのか――、それは1室だけという理由に加えて、「そこまでの人気がない、見込めないから」ということも多い。つい初心者は「安いほうがいい」と考えがちだが、売る時にも同じことがいえるかどうか考えておこう。
・災害・金利上昇、法務など 一般的な不動産投資と同じく、以下のようなリスク・デメリットも考えられる。
・自然災害(地震や台風で不動産が壊れるかもしれない)
・金利上昇(借りる金額が大きいほど影響も大きい)
・法務税務(間違えると相応の責任を負わされるかも)
ワンルームという割安投資だからこそ、こういったリスク・デメリットも割安に考えてしまいがちな点が、一番のデメリットかもしれない。たとえワンルームでも、そこに住む賃借人からすれば、あなたは唯一の「大家」だ。しっかり理解して投資を実践しよう。
ワンルーム投資の失敗事例
投資初心者のなかには、成功については何となくイメージできていても、「失敗」については考えが及んでいない人もいるものだ。失敗する理由は何で、それはどういう前提があるからなのか……。考えていなければ「失敗の予兆」にも気づかず、そのまま本当に失敗してしまうだろう。
「失敗は成功の元」という言葉があるが、どうせなら自分で失敗するより、他人の失敗を成功に活かしたほうが効率的ではないだろうか。ワンルーム投資にもリスクはつきものなので、過去には膨大な数の失敗した人・事例が存在する。ぜひ、いろいろな事例を見て勉強しよう。
余談だが、なかには「不動産投資としては成功したのに、ライフプランとしては失敗した」ような人も一定数いる。初心者には厳しいかもしれないが、(不動産)投資に集中していると、他の要素を忘れることもあるわけだ。慣れてきたら、ライフプランも考えながら投資のことを考えていこう。
ワンルーム投資でよくある失敗
ワンルーム投資で一番よくある失敗は、やはり「入居者が見つからない」というものだろう。直前の持ち主も入居者が見つからないから安値で売り出し、それに飛びついた可能性が高い。入居者を入れたいあまり、「賃料を値下げ」せざるをえなくなるケースが実に多いのだ。
「(想定通りに)なかなか売れない」という失敗も多い。買う時は割安なほうがいいが、売る時には割高を望むのが人間心理だ。上記のように「入居者が見つからないから」という理由での売り出しも多いため、想像以上に売主の希望通りに売却するのは困難といえる。
「メリットを表面的にしか理解しなかった」もよく聞く失敗だ。節税になると聞いた、老後対策になると聞いたのに、実際はならなかった……。本人としては騙された気分かもしれないが、投資は自己責任が基本だ。条件や理由をちゃんと知って、理解を深めていこう。
ぜひ先人の失敗を、あなたの成功へとつなげてくれれば幸いである。
ワンルーム投資の失敗事例から成功法を導き出す
例えば、子供の大学費用に困る世帯は多い。直前なら奨学金などを使う、進学をあきらめてもらうなどの対処法はあるが、一番リスクを回避できる策は「出産時に大学費用も想定して家族計画を行うこと」ではないだろうか。出産時点で未来の失敗予兆が見えるわけだが、ワンルーム投資でも似たことがいえる。
「入居者が見つからない」という失敗が多いなら、「そんな時はこうやって集客する」という対処方法を考えておくことも大切だ。しかし一番大事なのは「最初からなるべく簡単に入居者が見つかる物件に投資する」ことといえる。
あなたは、投資物件をどのように選ぶだろう? 初心者は、「少しでも割安、または利回りが高いかどうか」で選びがちだが、この時点ですでに入居者のことは考えていないことにお気づきだろうか。そうなると高い確率で、先人と同じく失敗するだろう。この理屈を、実際の現場で活かせるかどうかが勝負の分かれ目だ。
次の章からさらに失敗事例を基にした正攻法を伝えていく。
ワンルーム投資は出口戦略まで綿密に計画を立てる
出口とは、この場合「購入したワンルーム不動産を売却する時」のことだ。入居者がつかない売却もあるが、入居者がいても「まとまったお金が必要になった」などで売却することも意外と多い。不動産投資は「長期投資」なので、それにあわせた「長期計画」が必須である。
あなたのライフプランは、どのようなものだろうか? まとまったお金が必要になる時期はないか、あるならいつで、貯金などで賄えないのか……など、まずは自分の計画が根底にくる。このライフプランと不動産計画をかけあわせることが、出口を見据えた戦略の第一歩だ。
例えば、10年後に売却しなければならない計画なのに、30年ローンを組むことはありえない。換金が難しいのに直前まで貸す前提の計画も無茶だろう。そもそも計画立案に不慣れな人にはアタマの痛い作業だろうが、行き当たりばったりでは失敗確率も高まる。少しずつでもがんばろう。
周辺環境に依存した物件は選ばないようにする
例えば、「近所に大学がある」という立地なら、毎年のように学生の入居者が見込めるだろう。学生専用と銘打ち、設備や家賃を相応のものにすれば、さらに確率は上がる。「近所に居住不動産が少ない」という立地なら、やはり需要さえあれば簡単に入居者が見込めるだろう。
しかし最近の大学は廃校、または縮小などによる移転の可能性が少なくない。もしそんな事態になったらどうするのか? 周辺の需要も考えて物件は選ぶべきだが、需要の理由が一つしかないとそれだけに依存してしまい、空室リスクが高まる。
都市部ならいろいろな需要があるものだが、地方ほど需要は限られてくるのが一般的だ。一番手堅い需要は「駅に近い」があげられるが、地方では「駅自体が寂れる」こともあるし、都心部なら「不動産価格が高い」ことにつながる。物件選びは慎重に考えよう。
実質利回りをシミュレーションする
一般的な不動産投資のチラシに掲載されているのは「表面利回り」という。簡単にいえば「形式的な利回り」のことで、これには「経費」が計算に入っていないし、経費も計算すると大幅に利回りが下がる物件も多い。投資前に、実質的な利回りをシミュレーションすることが大切だ。
表面利回りは、「年間賃料÷購入価格×100」で計算する。例えば年間賃料100万円、購入価格1000万円の物件なら、表面利回りは10%となる。例えば、これに以下の経費を加え、実質利回りを計算する。
・購入諸経費100万円、管理費6万円、修繕積立金3万円、固定資産税等6万円
・実質利回り:85万円÷1100万円×100≒7.73%
実際のワンルーム投資ではローンを組むことも多く、その場合は完済まで赤字ということも多い。投資は元金を回収したうえでの利益を考えるが、元金(物件価格)は値下がるものなので、実質的な利益は減ることも多い。実際には空室も発生するものなので、なおさらだ。
多角的なシミュレーションのもとで、投資物件は選んでいこう。ただし、投資物件の条件だけで選び、入居者目線を忘れると失敗の元なので、くれぐれも気をつけてほしい。
ワンルーム投資を成功させるには失敗から学ぶ必要がある
失敗する前提で投資する人などいないにも関わらず、実際には数多くの失敗経験者がいる。それほど、先人の経験を活かすのは簡単ではないということだ。しかし逆に上手く活かせれば大きな「成功の元」になりえるだろう。ぜひ存分に考え、必要なら専門家にも力を借りて、自身のワンルーム投資を成功へと導いていってくれることを強く期待する。