医療保険は、被保険者(保険に加入している者)が病気やケガで入院したときに、治療費の一部または全部が給付される保険だ。被保険者の死亡を保障する生命保険よりも身近なリスクに対応しており、その分給付金を受け取る機会も多い。医療保険の具体的な請求手続き全般について解説しよう。
医療保険の給付金はいつ請求する?請求期限は?
医療保険の給付金は、被保険者自身が受取人となっているケースが多い。給付金は原則として、受取人本人から請求を受けて支払われるので、手術が終わった後や退院後など給付金を請求できるタイミングになったら、受取人自身がすみやかに書類を整えて、保険会社に提出しなければならない。保険の請求権には時効があることにも注意したい。
医療保険の請求は退院後に行うのが一般的
一般的に、医療保険の給付金額は被保険者の入院日数で決まるため、給付金の請求手続きは退院後に行われるケースが多い。ただし入院が長引きそうな場合は、入院中でもそれまでの入院期間分の入院給付金を請求でき、その後の治療期間分の給付金は退院後に改めて請求することになる。
このとき注意してほしいのは、医療保険の給付金を複数回請求する場合、診断書などの必要書類をその都度用意しなければならないことだ。医療保険では、診断書の作成にかかる費用は被保険者の自己負担となっている。そのため請求手続きを何度もすることは、経費の無駄を招くことになる。入院中に給付金を請求する場合は、このことを念頭に置いておきたい。
医療保険の請求期限は入院翌日から3年以内
医療保険の請求期限は、入院や手術など給付金の支払い事由が生じた日の翌日から3年以内だ。3年を過ぎると、請求の権利は時効で消滅することになる。
ただし、診療明細書などの必要書類をすべて用意できれば、3年を過ぎても請求が認められるケースもある。うっかり請求期限を過ぎてしまった場合には、保険会社のサービスセンターに問い合わせてみよう。
医療保険の給付金請求手続き
医療保険の被保険者が、一定期間以上入院して給付金の支払い対象になった場合は、すみやかに保険会社に連絡しよう。保険会社の連絡先は、保険証券に記載されたコールセンターや、最寄りの支店・支社の窓口、取扱代理店、インターネットのサイトなどだ。
いずれの窓口でも、契約者と被保険者の氏名や住所、証券番号、被保険者の入退院日などの情報を求められるので、あらかじめ保険証券と医療機関の診療明細書を手元に用意しておこう。
給付金を請求するには、以下の2つの書類が必要だ。これらは保険会社の窓口で受け取ることもできるし、郵送してもらうこともできる。
⑴保険会社が指定する専用の給付金請求書
⑵入院・手術証明書(または診断書・治療証明書)
⑴の給付金請求書は、契約者(契約者と被保険者が異なる場合は被保険者)が空欄に必要事項を記入して、認め印を押す。印鑑は保険契約時と同じものでなくても問題ない。
給付金の請求書類では、⑵の診断書が最も大切だ。保険請求用の診断書は、医療機関が発行する一般的な診断書ではなく、保険会社が指定する診断書用紙で作成しなければならない。診断書の書式は保険の種類や保険会社によって違うので、給付金を請求するときは保険会社指定の診断書用紙を医療機関に提出して、担当医に作成を依頼することになる。診断書の作成には2~3週間ほどかかるので、早めに準備しておこう。
契約者が複数の保険会社の保険に加入している場合、原則としてそれぞれの保険会社指定の書式で作成された診断書が必要になる。ただし保険会社によっては、条件付きで他社用の診断書のコピーによる請求ができる場合がある。複数の保険に加入している人は、請求時に各保険会社に問い合わせてみよう。
給付金請求書と診断書が用意できたら、医療機関の領収証(診療明細書)、給付金の受取人(通常は被保険者)の免許証のコピーなど本人確認用の書類を揃えよう。それらを診断書と請求書に添付して保険会社に提出すれば、請求手続きは完了だ。
医療保険の簡易請求ができる保険会社もある
医療機関が発行する診断書は、ほぼすべてが有料だ。特に保険請求用の診断書は詳細な記載が求められるため、作成料は1通あたり税抜き5,000~7,000円と高額になる場合が多い。この作成料は被保険者の自己負担になるので、給付金額が少ないと診断書作成料のほうが高くついてしまうことにもなりかねない。
なお入院日数が少ない場合は、診断書を省略して診療明細書と被保険者自筆の報告書で代用する「簡易請求」が認められるケースがある。
診療明細書は医療費の内訳を示したもので、領収証とともに無料で交付される。簡易請求ができれば診断書作成料の負担がなくなるだけでなく、診断書作成に要する時間をカットできるので、給付金の請求から支払いまでにかかる日数も短縮されるというメリットもある。
医療保険の代理請求を認める指定代理請求制度とは
医療保険の給付金は、原則として被保険者本人が受取人として請求することになっている。しかし被保険者が重いケガや病気によって給付金請求の意思表示ができない場合や、余命わずかで本人に病状を告知できないような場合には、受取人自身が請求手続きを行うことができない。
そこで、あらかじめ被保険者が指定した代理請求人が、被保険者代わって給付金を請求できる制度がある。それが指定代理請求制度だ。被保険者を給付金の受取人とする医療保険に無料の特約(オプション)として用意されている。
代理請求人の指定手続きは簡単だ。被保険者が保険を契約するときに指定代理請求特約を利用して、代理人を指名すればいい。保険を契約した後でも、被保険者の意思で代理人を変更したり、指定しなかった保険に後で指定を加えたりすることができる。
なお、代理請求人は誰でもいいわけではない。細かい条件については、それぞれの保険約款に定められているが、基本的には被保険者の配偶者か直系の血族、または被保険者と同居する3親等以内の親族などに限られる。
医療保険の請求方法は変更になる場合もある
医療保険の加入率は、全世帯数の88.5%(公益財団法人生命保険文化センターが発表した平成30年度の「生命保険に関する全国実態調査」による)。医療保険は生命保険に並ぶ人気商品であり、各保険会社は医療保障の充実と拡販に力を入れている。医療保険の請求方法は変更される場合もあるので、詳しく知りたい場合は、契約している保険会社に相談してみるといいだろう。
文・MONEY TIMES編集部/MONEY TIMES
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