企業にとっての「自由に使えるお金」とは?
それに加えて、キャッシュフロー計算書から企業を見る指標の1つとして重要であり、かつ簡単にわかる指標があります。それが「フリー・キャッシュフロー」です。
フリー・キャッシュフローとは、企業が経営活動によって得たキャッシュフローで、使途自由なものを意味します。具体的には、営業キャッシュフローから、その会社の現状維持のための設備投資を差し引いた金額を指します。
「営業で稼いだキャッシュから、事業を維持していくための設備投資を差し引けば、残りは自由に使えます。それをフリー・キャッシュフローと言いますよ」という程度に理解しておいてください。
使途自由なキャッシュは、事業拡大のための投資や、株主への優遇策等に使うことができます。このフリー・キャッシュフローをどのくらい稼げるかが、企業価値を判断するのに非常によいとされているのです。
しかし、実際にフリー・キャッシュフローの計算を行う時には、「現状維持のための設備投資」がいくらかを計算することになりますが、これは簡単には把握できそうにありません。
そこで、簡便的に「営業キャッシュフローに投資キャッシュフローを加えた金額」をフリー・キャッシュフローとすることが主流になっています。(投資キャッシュフローはマイナスとなることが多いので、実際には営業キャッシュフローから投資金額を差し引いた金額のイメージになります)。
成長企業ではずっとマイナスが続くことも
ただ、フリー・キャッシュフローが多いか少ないかが企業評価の基準になるといっても、1期間だけの状況で判断できるものではありません。
ある年度には思い切って投資する必要があることもあります。営業キャッシュフローはいつも通りの成績を上げたとしても、その年度に大きな投資をすれば、フリー・キャッシュフローがマイナスになることは十分考えられます。
特に、成長期の企業では、投資金額がかさみ、数年間にわたってフリー・キャッシュフローがマイナスになることがあるのです。
その好例が、超積極的投資の日本企業の代表であるソフトバンクグループのフリー・キャッシュフローです。
●平成29年3月期
営業キャッシュフロー 15,008億円
投資キャッシュフロー ▲42,136億円
フリー・キャッシュフロー ▲27,128億円
●平成30年3月期
営業キャッシュフロー 10,886億円
投資キャッシュフロー ▲44,848億円
フリー・キャッシュフロー ▲33,962億円
●平成31年3月期
営業キャッシュフロー 11,719億円
投資キャッシュフロー ▲29,080億円
フリー・キャッシュフロー ▲17,361億円
孫正義氏の積極的な投資姿勢が、フリー・キャッシュフローからも見えてくるのです。
つまり、ある年度でフリー・キャッシュフローがマイナスだとしても、それでは絶対ダメだというわけではありません。しかし、成長期でない企業のフリー・キャッシュフローが長期間マイナスが続くのであれば、それはよいキャッシュフローとはいえないでしょう。
それにしてもソフトバンクのキャッシュフローの数字は、ビックリするようなマイナス数値です。孫氏流の投資がどうなっていくのか、興味深いところです。
(『ざっくりわかる「決算書」分析』より抜粋・編集)
ざっくりわかる「決算書」分析
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難解な決算書から、その企業の強みや弱点、そして将来性を知るための「たったこれだけのポイント」とは? 経営分析入門の決定版。(『THE21オンライン』2019年07月12日 公開)
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