不動産投資には株などとは違うさまざまな費用や手続きがあるものだ。初心者には初めての手続きなども多いだろう。そこで今回は不動産投資を行うために必要な基礎知識として、物件を購入してから売却するまでの流れを解説する。参考にしてみてほしい。

購入までの一連の流れ

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(画像=PIXTA)

不動産投資を行うには、投資対象となる物件を購入するのが第一歩だ。まずは以下のような、物件を購入するまでの一連の流れについて、詳しく解説していこう。

物件を購入するまでの流れ
資産形成の目的を決める
    ↓
物件を探す
    ↓
物件購入と金融機関との融資契約
    ↓
物件の引き渡しと決済

資産形成の目標を設定する

まずは資産形成の目的を決めよう。家賃収入でインカムゲインを狙うのか、それとも安く買って高く売るキャピタルゲインを狙うのか――。どちらの利益を狙うのかによって物件選びが変わってくるため、きちんと決めておくことが大切だ。

安定した収益を長期間得る投資スタイルを選ぶなら、インカムゲインをおすすめする。一気に大きな利益をうむことはないが、借り手がつき家賃収入がある間は、毎月安定した収益をあげることができるからだ。ローンを借り、家賃収入の一部でローンを返済することで減価償却費を利用した節税効果もある。また定年前にローンを返済できるように利回りを組んでおけば、ローン返済後の家賃収入を老後資金にあてることができるため、老後資産の形成にも役立つ。

キャピタルゲインは大きな利益を生み出す投資だ。不動産は再開発などのタイミングをうまく利用できれば大きく値上がりし、大きな差益を生み出す。安い価格で手に入れた不動産を家賃収益で運用しつつ、値上がりしたタイミングで売却することができれば大きな利益となる。ただし「本当に値上がりする」物件を見つけるのは難しく、値上がりしたとしても売却のタイミングを見極めるのも至難の業だ。また短期で購入と売却を行うのは税制面でのデメリットがある。

上記2つの投資方法のメリットとデメリットをそれぞれ考慮したうえで、自分に合った投資スタイルを決めておこう。

購入できる物件を探そう

次に不動産投資の対象となる物件を探す。キャピタルゲインとインカムゲインのどちらを狙うのかによって物件選びのポイントが異なるため注意すること。

キャピタルゲインを狙うなら、今後の値上がりが予想できる物件を選ぶことが重要だ。物件周辺で再開発がある、エリアの人口が増加傾向にあるなどで、値上がりしそうな物件を選ぶこと。

インカムゲインを狙うなら、安定した収益が見込める物件を選ぶことが大切だ。インカムゲインを得るには、借り手がつき、安定した家賃収入を得られることが最も重要となる。立地や物件の間取り、設備などの点で借り手がつきそうな物件を選ぶことで、より安定したインカムゲインを得ることができる。

物件は不動産会社のサイトなどで見つけると良い。利益が出やすい物件は、多くの投資家が欲しいと思うものであるから、こまめに情報をチェックするようにしておくこと。

購入後のキャッシュフローの計算

投資したいと思う物件を見つけたら、購入後のキャッシュフローを計算する。不動産会社が提示する想定利回りは、経費などが織り込まれていないため、購入にかかる経費、維持管理に必要な経費を含めた実質利回りを自分で計算し、利益が出るかを確認しておきたい。

キャッシュフローは空室が出た場合などに備えて、ある程度の余裕を持っておくことも大切だ。空室が3カ月続いたらローン支払いが出来なくなるようではすぐに破綻してしまう。なるべく高い利回りを実現できるような物件を選ぶことが大切だ。

買い付け証明書の提出と金融機関との金銭消費賃借契約を結ぶ

物件を購入するまでの申し込み方法と、金融機関でローンを組むための流れについて解説していこう。

・購入の申し込み
気に入った物件が見つかったら「買付申込書」を提出する。買付申込書とは、この物件をこの金額で購入したいという意思を示すものだ。

買付申込書には、購入希望金額、支払い方法、有効期限などを記載する。販売価格よりも低い価格を提示して値引き交渉を行うことや、高い金額を提示し、他の購入希望者よりも優先されて買い付けできるようにすることも可能だ。

注意したいのは、買付申込書を提出したからといって必ず購入できるというわけではないという点である。複数人から買い付けがあった場合は、売主がそのなかから一人を選んで売却を行う。販売価格よりも高い金額を提示した場合は、優先して売却してもらえる場合もあるが、価格が上がる分利回りは下がる。どのように選ぶかは売主が決めるため、買付の順番が早い人が選ばれることもあれば、現金で購入する人が優先されることもある。

また買付申込書を提出したからといって、必ず購入しなければならないわけでもない。買付申込書はあくまで買付の意思を提示するものであり、法的な拘束力はないからだ。しかし安易に申し込みをしてキャンセルしていると、不動産会社からの信用を失うこともある。どうしてもやむを得ない場合以外は、キャンセルはしないほうがよい。

・金融機関への融資審査を受ける
利益が出ると予想できる物件を見つけたら、物件を購入する。物件購入する際に必要なのが金融機関との融資契約だ。ローンの決済を受けるには、事業計画書や物件の詳細な資料などが必要となる。ある程度は不動産会社が用意してくれるが、事業計画書や収益予想などは自分で用意することになるだろう。住宅ローンとは違い、不動産投資のための融資は、自分の収入よりも物件の利回りや事業計画の確実性などが大きく関わってくる。利益を出すためにも、ここでしっかりとした事業計画を立てておこう。

金融機関の審査時に必要なものは以下の通り。

—源泉徴収書のコピー 3期分
—確定申告書のコピー 3期分 ※確定申告している人のみ
—資産や負債、家族構成、経歴などの自己申告書
—購入物件の資料
—事業計画書

物件購入時の税金や司法書士への支払いなど、諸経費はローンに含むことはできない。そのため物件購入額の10%程度は自己資金が必要となるため、あらかじめ用意しておこう。

・不動産の売買契約に必要は費用はどれくらい?
不動産の売買契約時に必要となる費用は以下のようなものがある。

—手付金…100万円から物件価格の10%程度
—仲介手数料半金…売買価格の3%+6万円と消費税の50%(400万円以下の場合は別途計算)
—印紙代…1000万円以上5000万円以下の場合は1万円、5000万円以上1億円以下の場合は3万円

・金融機関との融資契約に必要な費用はどれくらい?
金融機関との融資契約には以下のような費用が必要だ。

—ローン事務手数料…3万円から10万円 金融機関によって異なる
—印紙代…1000万円以上5000万円以下の場合は2万円、5000万円以上1億円以下の場合は6万円
—保証料…金融機関によって異なる
—団体信用生命保険料…金融機関によって異なる
—火災保険料…金融機関によって異なる

物件の引き渡しから決済へ

ローンの決済がおりたら物件の引き渡しを受けて支払いを行い、不動産の運用を開始する。購入申込書の提出から約1カ月程度の期間が必要だ。

売却までの一連の流れ

同じく物件を売却する流れは次の通り。

物件を売却するまでの流れ
物件を売却するための計画

仲介会社の選定

売買(売却)の契約を結ぶ

決済と引き渡しを行う

以下、この流れのなかでポイントとなる項目を詳しく解説していこう。

物件売却の前に計画を立てる

物件を売却する前にまず行いたいのが計画を立てることだ。計画がないまま売却しようとすると、想定外の価格交渉に応じてしまったり、タイミングを見誤ってしまうことにつながる。いつまでに売却するのか、想定通りの価格で売却できない場合は値下げするのか、売却を中止するのか、仲介会社を変更するのかなどを決めておこう。

次に必要な書類を準備する。家賃表、登記簿謄本、修繕履歴などの物件資料は必ず必要になるため、整理し準備しておくとスムーズだ。

仲介会社に不動産の査定依頼を

売却計画が立てられたら、不動産仲介業者に不動産の査定を依頼する。不動産会社は築年数や立地などを元に、物件を査定し価格を提示してくるだろう。それに加えて、積算価格や収益価格、周辺の取引価格なども参考にし、売り出し価格を決定すること。価格が決まれば仲介業者を通じて買い手を募集する。

物件の売買(売却)の契約を結ぶ

条件が合う購入希望者が出たら、売買契約を締結する。購入希望者が複数いる場合は、提示価格や支払い条件などをもとに一人を選ぶこと。

物件の売却と決済へ

売却する相手が決まれば、支払いを受けて取引が完了だ。物件の引き渡しは売買代金の決済と同時に行い、鍵の受け渡しをもって完了する。引き渡し後は所有権移転登記を行うことも必要だ。

売却物件が融資を受けている場合、金融機関に今後の返済について売却前に相談しておくこと。管理会社に管理業務を委託している場合、契約を引き継がない場合は引継ぎの準備も必要となる。清掃業者やエレベーター管理会社など、物件に関係する取引先にも所有者が変わることを連絡しておこう。

不動産物件の購入と売却には事前に計画を立てよう

不動産投資のためには不動産を購入することや売却することは欠かせない。しかし不動産の購入や売却は他の投資対象と比較しても多くの費用と手間が必要だ。不動産登記変更など、自分ではなかなか難しく司法書士などのプロに依頼しなくてはならない手続きもある。

これらの手間をスムーズに行うには、事前の計画が重要だ。購入前と売却前に利回りや必要となる経費の計上をきちんと行い、事業計画やキャッシュフローを立てておくことで、手続きがスムーズにいくだけでなく利益をあげることにもつながる。

まずは不動産の購入と売却の流れと必要な書類などを確認し、きちんとした計画をたててみてほしい。