不動産投資のためには、投資先となる不動産物件の売買が必要である。不動産に限らず物を売買するうえで、必ず支払わなくてはならないのが消費税だ。2019年10月の消費増税に備え、気になりだした投資家も増えていることだろう。そこでこの記事では、不動産売買時にかかる消費税について詳しく解説する。増税を前に、投資先としての不動産だけでなく自宅を購入するタイミングもこれで理解できるはずだ。

不動産売買時にかかる消費税とは?

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(画像=PIXTA)

不動産売買の際、事業者でない個人間同士の取引であれば消費税はかからない。そもそも消費税とは以下の4つの要件を満たす取引にかかる税金だ。

・日本国内で行われた取引である
・事業活動である
・対価を得ている
・モノを売る、貸す、サービスを提供している、のいずれかにあてはまる

消費税は基本的に商品やサービスの消費について課税される。さらに社会的に課税が望ましくない場合は発生しない。例えば健康保険を利用した医療費、学校の授業料などは課税の対象外だ。その中に賃貸住宅の家賃も含まれている。また事業活動であるかどうかも重要なポイントだ。

消費税はどこにかかるの? 

不動産売買の場合、消費税はどこにかかるのだろうか。実は土地と建物はそれぞれ消費税の考え方が異なる。詳しく見ていこう。

建物は課税対象

建物は基本的には課税対象だ。新築戸建て、新築マンションは売主が不動産会社である場合がほとんどのため、ほぼ消費税が課税される。ただし中古の場合は売主が個人か法人かによって課税されるかされないかが変わる。

売主が個人の場合は建物が非課税になることも

建物が消費税非課税となる場合もある。それは売主が個人である時だ。消費税の課税要件に「事業活動である」というものがある。例えば会社員が自宅を売却する場合は事業活動にはあてはまらないため、消費税は非課税だ。しかし同じ中古住宅であっても、個人から不動産会社が買取り、その後売却される場合は事業活動にあてはまるため、消費税がかかる。

不動産投資では特に中古住宅、中古マンションを購入する場合が多い。個人間の売買のほうが消費税を支払わなくていい分、安くなる可能性がある。売主が事業者なのか個人なのかでかかる経費が変わるため、あらかじめ確認しておくと良いだろう。

土地は非課税

土地は消費されるものではなく、所有者が変わるだけだと考えられるため、土地取引には消費税は課税されない。土地に付属する庭木、石垣なども土地と一体で、譲渡する場合は同じく非課税となる。

ただし土地に埋まっている地下型の車庫は別だ。これは土地ではなく「設備」の譲渡としてみなされるため、課税対象となる。中古一戸建てを業者から購入する場合、これらの設備を確認しておくとよいだろう。

建物や土地以外にも課税されるものとされないものがある

不動産売買に係る費用で、建物や土地以外にも課税されるものとされないものがある。それぞれを紹介しておこう。

課税されるものは以下のような費用だ
・仲介手数料
・司法書士や土地家屋調査士に支払う報酬
・銀行事務手数料
・リフォーム費用
・解体費用

これらの費用は事業活動に対して発生した費用となり、消費税の支払い対象となる。消費増税によって大きく変わるほどではないが、金額が増額することは間違いない。

課税されないものは以下のような費用だ。
・印紙代
・火災保険料
・地震保険料
・団体信用生命保険料
・銀行保証料
・借地の地代
・管理費
・修繕積立金
・そのほか各種税金

印紙代はそもそも税金の一種であるため、消費税の課税対象外だ。火災保険や地震保険、団体信用生命保険料などの保険料は、社会的政策配慮の非課税取引に該当するため、非課税となる。管理費、修繕積立金も対象外で、あたりまえだが各種税金も課税対象外となる。

2019年の消費税10%の引き上げで起こる2つのこと

2019年10月に、消費税は8%から10%へと引き上げられる。その際に起こる2つのことについて解説していこう。

売買価格が変わる

まず変わるのが売買価格だ。建物の販売価格として表示されている価格は税込表示であるため、現在の販売価格とは変更となる。「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」によれば、不動産価格においては消費税も含めて表示することが義務付けられているからだ。

例えば税抜きで土地1500万円、建物1500万円の合計3000万円の一戸建ての場合は、建物のみに消費税がかかるため、8%の場合は3120万円という価格が表示されている。消費税が10%になった場合、建物の消費税のみ上がり、3150万円となる。差額は30万円だ。

ただしこれは新築マンションや新築戸建ての建物部分、中古でも不動産会社から購入する場合に限る。中古マンションを個人から購入する場合は、もともと消費税を支払う必要がないため、価格も変わらない。もし個人から中古物件を購入する場合で、「消費増税で価格が変わる」と言われたら注意してほしい。

仲介手数料が変わる

消費増税で支払い額が変わるものには仲介手数料も含まれる。仲介手数料は不動産会社に支払う費用であり、事業活動にあてはまるため、消費税が必ず必要だ。

ここで押さえておきたいのが仲介手数料の計算方法になる。仲介手数料は消費税を除いた税抜き価格を元に計算することとなっている。つまり消費税が10%になり、売買価格が変更になったとしても、計算の元となる金額は変わらない。算出された仲介手数料に対して8%の消費税を課税するか、10%の消費税を課税するかの違いとなる。

万が一、10%に変わった税込価格を元に仲介手数料を算出している場合は、不動産会社に指摘し、修正してもらうこと。

増税の影響を少なくする「住宅ローン控除」は事前に税務署に確認

消費増税による消費の落ち込み対策として、政府はさまざまな施策を行っている。そのひとつが住宅ローン控除の改正だ。前回の消費増税対策では、所得税からの控除額の上限が20万円から40万円に拡大された。これは消費税が8%に増税された際に起こった景気変動を繰り返さないためだ。不動産取得は価格が高く、増税による負担の変化も大きく影響する。そのため増税前には需要が集中し、増税後には新設住宅着工数は減少し、景気が大きく変動した。政府はこれを防ぐため、2019年10月の消費増税に対して負担の軽減に努めている。その一環として行われるのが住宅ローン減税の改正だ。

改正のポイントは大きく2つあり、ひとつは控除期間が現行の10年から13年に3年間延長されること。ふたつめが計算方法の改正だ。現行の10年から13年に改正されれば、減税される額も大きく増えるため、消費増税による負担が軽くなる。

計算方法の変更はこれまで「各年の住宅ローンの年末残高×1%」で計算していた控除額の金額を、11年目から13年は以下のどちらか少ない金額とするというものだ。

① 住宅ローンの年末残高(4000万円上限)×1%
② 建物取得価格(4000万円を上限)×2%÷3

所得税から控除しきれない場合は個人住民税から控除されることとなる。

この3年間の延長は、消費税率10%が適用された住宅を取得した人のみ受けられる。増税前の駆け込みで、8%で購入した場合は受けられない。また消費税が非課税となる個人から中古住宅を購入した場合も適用外だ。

さらに建物面積や築年数によって利用できない場合もある。最大金額が還付されるケースの方が少ないため、住宅ローン控除が拡大されるからといって必ずしも得になるとも限らない。購入時期に迷う場合は、事前に税務署に相談しておくと安心だ。

増税するからといって焦って家を購入する必要はない

消費税が増税するからといって、焦って家を購入するのは間違いであるといえる。消費税が8%から10%に増税されたとしても、そこまで支払い額に大きな差は出ないことが多いからだ。

一戸建ての場合で考えてみよう。土地1500万円、建物1500万円、合計3000万円の新築一戸建ての場合では、土地は非課税のため1500万円であることは変わらない。建物は8%の場合は1620万円、10%の場合は1650万円で差額は30万円だ。

新築マンションの場合は建物の金額が大きいため、差額が一戸建てよりも多くなる傾向にある。マンション価格だけを見ると建物と土地の割合がわかりにくいが、価格に含まれる消費税額を見ると計算することができる。例えば販売価格3000万円のマンションで、うち消費税額が150万円と記載されている場合は、「消費税額÷8%」で計算し、建物代は1875万円であることを算出できる。この場合、土地975万円、建物1875万円、消費税150万円の合計3000万円だ。

このマンションを消費増税後に購入した場合、建物の10%で消費税額は187万5000円となる。合計で価格は3037万5000円で、差額は37万5000円だ。

同じ物件を購入するのであれば、この差額はなるべく支払いたくないと思うのは当然であろう。すでに物件を決めており、引き渡しの時期を変更するだけで済むのであれば、10月1日以前に引き渡しできるよう交渉してみるのも良いかもしれない。しかし焦って物件を決めるほどの差額ではないともいえる。前回の消費増税時には、駆け込み需要の影響により、増税後は新設住宅着工数が減少した。今回は住宅ローン控除の拡充により、前回ほどの冷え込みはなくとも、ある程度の需要の落ち込みは予想される。それにあわせて物件の値下げなどが行われることもあるため、増税後の方が掘り出し物に出会える可能性もあるのだ。増税で増える支払い分は値下げ交渉できるほどの額でもあり、慌てて物件を購入するよりは流れを見ながら物件を探すことをおすすめする。

わからなければ不動産のプロに相談しよう

今回は不動産売買に関する消費税について解説した。消費増税は特に新築物件を購入する際に影響を及ぼす。しかし増税で変わる金額は値引きの交渉内の額でもあり、焦って増税前に駆け込み購入するほどではない。ただしすでに物件を決めており、引き渡しの期間を1週間早めるだけで済むのであれば、増税前に引き渡しを済ませておくのもよいだろう。

住宅ローン控除の拡充、支払い金額の変化などさまざまな影響があるが、物件によって変わる金額は異なる。わからない点があれば不動産のプロに相談し、確認したうえで物件を選んでほしい。