最近では会社に勤めながら不動産投資をする、いわゆる「サラリーマン大家」が人気だ。ただ、そもそも投資未経験者からすると、他の投資と比べて何が良いのか、また悪いのかが分からず、判断に困っているケースもよく聞く。投資にはどうしてもリスクがつきもので、おいそれと気軽に始めるわけにはいかない気持ちもよく分かる。そこで今回は、サラリーマンが不動産投資をするメリット・デメリットを詳しく伝えることにする。ぜひ参考にしてほしい。

サラリーマンが不動産投資に取り組むべき理由

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(画像=beeboys / Shutterstock.com)

先般、国が「老後資金として2,000万円必要」などと語ったことは、ご存じだろうか? 実際に2,000万円なのかどうかは別にして、少なくとも相応の大金を準備する必要がある点は変わらない。あなたは、このまま働いて貯金を続けるだけで、老後の資金として2,000万円を貯められるだろうか?

おそらく「ムリ、厳しい」と感じる人が多いだろう。老後資金どころか、その手前の「教育費」すら満足に準備できない人もいるかもしれない。もし必要な額を貯められなかったら……なんて考えたくもないはずだ。しかし「何か」をしなければ、その悪夢は現実のものになるだろう。

その「何か」の代表例として、国も推奨しているのが「投資」だ。株式投資や投資信託、最近ではFXをする人も多い。そのような投資手法の一つとして「不動産投資」が存在する。実際にどれをすべきかは当人次第となるが、不動産投資も十分に選択肢の範囲に入れられる手法だ。

残念ながら不動産投資を含め、ノーリスクで簡単に大金が稼げるような絶対的な投資はない。ただ、それぞれのリスクや利益率、内容等は違っている。一つひとつしっかり調べ、自分に合うものを考えて投資しよう。

次の章から、不動産投資のメリットについて詳しく説明していこう。

手間がかからないので本業に集中できる

不動産投資には、全てのサポートをしてくれる「不動産投資会社」という存在がある。この不動産投資会社を使うことで、銀行の融資から不動産の購入、賃借人の集客、物件や家賃の管理まで、ほぼ全ての不動産投資に必要な業務を代行してくれるわけだ。何と便利な時代であろうか。

簡単にいえば、あなたがすべきことは「不動産投資をする意思表示」と「どの不動産に投資するか選ぶ」、あとは「お金を出す」だけである。例外的に大家として「判断・決断」を求められることもあるが、それすら不動産投資会社がサポートしてくれるから安心である。

日常的に何かをしなければならないわけではない。もちろん精力的に勉強や情報収集をする人もいるが、基本的に投資したあとは「ほぼほったらかし」にできるのだ。手間も時間もかからないため、本業が忙しい会社員に好まれやすいのも理解できる。

他の投資では、なかなかこうはいかない。特に株式投資やFXは、投資したあとはめまぐるしく変動する値動きを毎日のようにチェックしなければ落ち着かない人も多い。少しの時間であっても、投資に気を取られた分だけ本業がおろそかになるということも事実だ。それを避けたい人は、不動産投資を選ぶといいだろう。

節税効果が高い

サラリーマンが不動産投資をすると、給料と賃貸収入という2つの収入源を持つことになる。給料はほぼ確実にプラス収入だが、賃貸収入は不動産投資全体で計算すると赤字になることもある。そんな場合、給料を不動産投資の赤字分だけ減らして税金計算できるのだ(これを「損益通算」という)。

以下、一例をあげる。

・投資前
年収600万円、課税所得金額303万4,000円、所得税21万200円、住民税31万800円

・投資後(投資して計算上50万円の赤字となった)
年収600万円、課税所得金額253万4,000円、所得税15万9,100円、住民税26万800円

・比較
所得税:-5万1,100円 住民税:-5万円 合計:-10万1,100円

例えば株式投資なら、このように給料との損益通算はできない。利益が出れば税金がかかる点は同じだが、赤字なら赤字で税金対策になるというのは大きいのではないだろうか。しかも不動産投資では、表面上は利益が出ていても、税務計算において赤字で計上できることもある。

あくまで投資は「収益を得るため」にするのであって、節税するためのものではない。しかし収益を得るという目的に付随するかたちで節税になるというメリットがあるなら、投資家としては喜ばしいのではないだろうか。投資と税金は切っても切り離せないからこそ、今後は税金の勉強にも励むことをおすすめする。

生命保険がわりに利用でき、住むこともできる

生命保険(死亡保険)は、万一自分が死亡したとき、遺族に「お金」を残せるというものだ。いっぽう、不動産投資をすると、お金のかわりに「賃貸物件」を残せることになる。ローンで不動産を購入するときに「団体信用生命保険」に加入しておけば、死亡時にはローンがチャラになるからだ。

実際に残された遺族が、どの程度のお金を必要とするかは分からない。しかし、ローンの完済された物件がそのまま手に入るというのは、十分な資産になるのではないだろうか。生命保険も不動産(賃貸物件)も、どちらも現金で残すより「相続税への対策にもなる」点も共通している。このあたりも、実にうれしいメリットだろう。

生命保険は、いざというときには、解約返戻金の範囲内ではあるが「お金を借りる」こともできる。不動産投資も、返済具合等にもよるが、既存の不動産を担保に「お金を借りる」用途にも使えるわけだ。この2つ、想像以上に似た部分が多いと感じるのではないだろうか。

さらに、不動産投資は、場合によっては物件に自分で住むことも可能だ。一般的に、生命保険を上回るお金が動く不動産投資だが、考えようによっては十分にその価値はあるといえそうだ。

他の投資に比べて資産の安全性が高い

全ての投資には「値動き」がある。それにより、損をする可能性がある反面、利益を得られる可能性もあるわけだ。不動産投資なら、建物や土地の値段が変わる可能性があり、家賃も状況によって上げられることもあれば、下げざるをえないことも起こる。

ただ、不動産の値動きは比較的「緩やか」だ。明日または1年後の値段が、突然に倍や半額になるようなことはまずないし、どう転んでもゼロになったりはしない。あなた自身、賃貸物件に住んだことがあるなら、容易に想像できるのではないだろうか。

それがもし株式投資なら、1年後に倍になっていることもあれば半額になっていることはザラにある。それどころか対象となる会社が倒産して、株式の価値がゼロになるリスクもある。あくまで投資は「利益」を追求するものだが、初心者は「お金が減る、ゼロになる」というリスクのほうが気になるものではないだろうか。

しかし不動産投資なら、お金は減りにくく、ゼロにはならない。そういう意味で、不動産投資は初心者にうってつけの投資手法といえるだろう。

サラリーマンが不動産投資で知っておくべきこと

あなたに少しでも株式投資の知識があれば分かると思うが、株式投資は買ったときより値上がりしたら利益になる。実にシンプルだが、値動きは上がるか下がるか分からないからこそ、将来を予測するためのさまざまな手法や指標が存在する。

不動産投資も、根本的な理屈は似ている。極端にいえば、不動産投資は「不動産を買って安定的に賃借人がつけば利益」だ。しかし、安定的に賃借人がつくかは未知数のうえ、不動産自体の値動きもある。だからこそ、安定的に借り手のある物件を、指標などを元に探すわけだ。

不動産投資は、「実際の不動産と個別の顧客が存在する」という点で他の投資手法とは違う。「ローンを組んで投資をする」ことが多いのも他の投資と異なる。いかに初心者とはいえ、投資の基本とともに最低限の不動産投資特有の基礎知識は知っておいてほしい。

もちろん最初から全てを知っておく必要はない。知ろうにも、分からなかったり、覚えられなかったりするのが普通だ。始めは不動産投資の基本的なポイントのみをおさえ、あとは実際に投資をしながら必要に応じて少しずつ勉強していくといいだろう。

次の章から、そんな不動産投資の基本的かつ大切なポイントを一つずつ伝える。

税金・法務関連の知識

投資をする以上、やはり税金に関する知識は欠かせない。税金の基本は「収入-経費=利益」で、利益に対して税率をかける。ただ、どの収入が税金上の収入になり、どの経費が税金上の経費になるかを理解しておかないと、思わぬ増税を招くかもしれないので、かなり注意が必要だ。

特に不動産投資をするなら、「減価償却費」は、最初に知っておきたい。減価償却費とは、不動産投資でいえば「不動産購入費用」のことだ。購入は初年度だけだが、以後何年にもわたって経費として計算できる。節税効果を高めるためにも、しっかり税金のことは勉強しよう。

そして不動産というのは、とりわけ法律改正などによる変更が多い。会社員をするだけなら法律など気にもしなかっただろうが、不動産投資をする以上、「大家・自営業者・経営者」となるわけだ。法律という社会ルールを破ると、手痛い責任を負わされることもあるので、ニュースもしっかりチェックしておこう。

税金も法律も、世の中にはそれぞれ「税理士・弁護士」という専門家がいる。どうしても不安なら専門家に依頼することもできるが、その分の「経費」がかさむ。投資効果を少しでも高めるためにも、少しずつでも自分で勉強を重ねることが必要だ。

ローンの組み方

不動産投資は「ローンを組んで投資をする」わけだが、ローンとは誰もが必要なだけ組めるものではない。実際、投資を始めようと思ったのに、必要なだけのローンが組めなかった……という話は往々にしてある。このため、ローンに関する知識も必須だろう。

ざっくりいえば、お金を貸す銀行が気にするのは「貸したお金を返せるのかどうか」だ。返せると判断すれば貸してもらえ、返せないと判断すれば断られることになる。銀行はそれを、「物件の収益性」と「当人の経済力や信用力」で判断する点を知っておこう。

「物件の収益性」が判断根拠になるのはイメージしやすいだろう。その不動産が高い収益性を持つほど、その収益で返済してもらいやすいと考えるためだ。ただし、銀行は後述する表面利回りではなく、実質利回りで収益性を考える点に注意しよう。

「当人の経済力や信用力」は、さまざまな情報から総合的に判断される。勤め先や年収、勤続年数、家族構成、過去のローン返済の結果など、実に多岐にわたる。それぞれ明確に「~ならOK」などという線引きがあるわけではないが、少しでも良くみられる努力はしたほうがいい。

少しでも融資を受けやすくしたい場合は、経済力と信用力、両方の改善を図ろう。前者は、できるだけ収益性の高い物件を探してくればいい。後者は「勤続年数を延ばす(短いのであれば、しばし待つ)」が簡単だろう。2件目の不動産投資をするときは、銀行にとって1件目が参考事例になる点をお忘れなく。

実質利回りと表面利回り

利回りとは、簡単にいえば「(予想)利益率」のことだ。他の投資手法でも一般的に使われている単語なので、目にしたこともあるだろう。ただし、不動産投資では利回りが2種類あり、しかもどちらも重要な投資指標になる。初心者であっても、しっかり理解しておこう。

表面利回りは、「年間賃料÷物件価格×100」で計算する。購入した不動産価格に対して、1年あたりどの程度の賃料が見込めるのかという計算だ。計算が簡単かつ分かりやすいという利点はあるが、実質利回りと比べて正確性に乏しい。しかし、一般的なチラシなどの広告では、表面利回りが掲載されていることが多い。

実質利回りは、「(年間賃料-諸経費)÷(物件価格+購入諸経費)×100」で計算する。諸経費を含めて計算するため、計算が複雑になるうえに状況によって金額も変動しやすい。しかし、表面利回りよりもこちらのほうが正確であるため、実際に投資するときは、こちらの計算結果が大切だ。

一般的な不動産投資家は、まず表面利回りをみて投資対象をざっくり絞り込み、その後に一つひとつの実質利回りを計算して、最終的にどの不動産に投資するかを決める。表面利回りでは投資額を上回るとされた物件が、実質利回りでは下回ることもあるので、慎重に計算しよう。

不動産投資で生じるリスク

投資の一種である以上、不動産投資にもリスクはつきものだ。努力や物件を見極める能力、対処法にも限界はあるが、ひとまず「こういうリスクもある」と知っておくことは大切だろう。以下、特に大切な「不動産投資を取り巻くリスク」について伝える。

・空室・家賃滞納
借り手が見つからない、見つかったが家賃を滞納する……。これは不動産投資をする以上、避けては通れないリスクだ。空室には不動産管理会社を通すサブリース契約などの対処法もあるが、サブリース契約自体がトラブルの元になることも多い。利用には慎重になったほうがいいだろう。

初心者の想像以上に、家賃滞納も問題だ。会社をクビになった、年収が下がった、だから支払えなくなったというケースは実に多い。引っ越そうにも貯金がないことも多く、実際に引っ越されたら空室だ。空室の期間もローン返済は止まらないからこそ、しっかり覚悟しておこう。

・地価下落・家賃下落
緩やかだが地価にも上がり下がりはある。地価が下がるというのは、簡単にいえば「対象地域の人気が下がった」わけだ。それでも住んでほしいのなら、家賃を値下げせざるをえなくなるだろう。

リフォームなどで、地価が下がっても不動産自体の人気を保つことも可能だ。しかし、やはり限界もあるのが実情といえる。地価も家賃も、絶対に下がらない地域など存在しないし、下がりにくい、人気が高い地域ほど不動産価格も高い。冷静に折り合いを考えよう。

・自然災害・金利上昇
東日本大震災を筆頭に、最近の日本はさまざまかつ大規模な自然災害が多発しているが、これらは予測不能なうえに対処のしようがない。地震保険や火災保険で備えられるが、備えるほどに保険料がかさんでしまう。初心者でも、ハザードマップくらいは目を通したほうが無難であろう。

ローンを組むからには、金利上昇も怖いところだ。不動産投資は借りる金額も大きいので、わずかな上昇でも格段に負担が増す。固定金利も選べるが、それはそれでコスト増になりやすい。不動産投資をするからには、政治や経済の情勢にも敏感になっておいたほうがいいだろう。

あとは、先術した「税務・法律」もリスクだ。リスクを考えると怖くなるだろうが、リスクを受け入れるから利益も受けられるのが「投資の基本」となる。利益を受けながらリスクを管理・警戒し、一流の不動産投資家へと成長していこう。

不動産投資の収支をシミュレーションしてみる

不動産は一つとして同じ物件が存在しない。収入も支出も、実際にいくらになるかはケースバイケースだ。ただ、おおまかな収支計算をイメージするために、実際に物件を購入したと仮定しての収支シミュレーションをしてみた。

前提:物件価格2,000万円、購入諸経費200万円、家賃収入96万円、管理費12万円、
修繕積立金6万円、固定資産税・都市計画税9万円

直接的な表面利回り、実質利回り(現金で購入した場合)は、以下の計算になる。(経費は全て年額)

表面利回り:96万円÷2,000万円×100=4.8%
実質利回り:69万円÷2,200万円×100≒3.14%

実質利回り収支の内訳 金額
家賃収入 96万円
管理費 12万円
修繕積立金 6万円
固定資産税等 9万円
差引 69万円

さらに前提に「広告費10万円、水道光熱費12万円」を加えると、以下の計算になる。

表面利回り:96万円÷2,000万円×100=4.8%
実質利回り:47万円÷2,200万円×100≒2.14%

実質利回り収支の内訳 金額
家賃収入 96万円
管理費 12万円
修繕積立金 6万円
固定資産税等 9万円
広告費 10万円
水道光熱費 12万円
差引 47万円

この物件をフルローン(35年、金利2%、年84万円返済)で買うと、以下の計算になる。

実質利回り:-15万円÷2,200万円×100≒-0.68%

実質利回り収支の内訳 金額
家賃収入 96万円
管理費 12万円
修繕積立金 6万円
固定資産税等 9万円
ローン返済 84万円
差引 -15万円

不動産投資では想定外の支出が発生することもあり、特にローン返済中は赤字になることも多い。ただ、想定外の支出は毎年必ず発生するものではないし、ローン返済はいずれ終わる。この例なら、ローンが終わったあとは安定的に年69万円、月6万円近くのお金が入るわけだ。このような不動産を3つも持っていれば、老後は大いに助かるだろう。

頭金を多めに用意してローン比率を下げたり、より収益性の高い物件を見つけたりできれば、投資効率は高められる。本業に精を出し、早期にローンを完済するのも手だ。将来のために、ぜひこの不動産投資も選択肢の一つとして考えよう。

不動産投資はなるべく早めに始めよう

不動産投資は「長期投資」だ。利益を出すにも時間がかかり、ローンを返すのにも時間がかかる。だからこそ、早く始めたほうがローンも早く返し終わり、その分だけ利益を得られる期間も長くなるわけだ。投資をより長く経験でき、2件目への着手も早くできるメリットもある。初心者は不安も尽きないだろうが、なるべく早く決断することをおすすめする。