税金は全ての利益に対してかかるが、不動産を売却した際にも税金は発生する。

不動産の売却益ばかりに目がいってしまい、税金を考えず節税をしなかった為に大きく税金をとられてしまった方もいるだろう。

そんな方の為に今回は不動産の売却益にかかる税金を詳しく解説する。

これからは税金面で不安になるのではなく、賢く節税していこう。

不動産の売却でかかる税金とは

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(画像=Natee Meepian / Shutterstock.com)

自身が支払っている税金について考えたことはあるだろうか。

不動産に限らず、自分が所得(収入)を得た際には「所得税」と「住民税」を支払わなければいけない。

経営者や事業者であれば税金は自分で納めにいかなければならない為、知っている方が多いと考えられるが、サラリーマンだと知らない方も多いのではないだろうか。

所得税 個人が得た1年間の所得にかかる税金。自分が得た収入から控除や経費を差し引いたものを所得という。
住民税 地方自治体の公共サービス向上のために徴収される税金。翌年に徴収される。

サラリーマンの場合は上記の所得税を「源泉徴収」という形で大まかな税金を毎月会社に天引きされ、「年末調整」によって正確な税金を納める。

一方住民税は翌年に支払う税金となっている為、その年には支払わない。社会人二年目から支払う税金が増える所以だ。

では不動産の売却益ではどのような税金を支払わなければいけないのか。

不動産の売却益は、先ほど説明した所得の中の一つである「譲渡所得」というものに当たる。

サラリーマンの場合は「給与所得」という形になり、「譲渡所得」はまた別の項目だ。

この「譲渡所得」から経費や控除を差し引いたものに、所得税率や住民税率を掛けてそれぞれ所得税と住民税を算出、他には印紙税や復興特別所得税をたしたものが「不動産売却の際に支払う税金」となる。

一方不動産の家賃収入においては、上記の「譲渡所得」ではなく「不動産所得」に分類されることが多いため、注意が必要だ。

ここまで「譲渡所得」という言葉がでてきたが、「譲渡所得」とは、自分が不動産を売却した際に発生した利益から、「自分が不動産売買に使用した経費」や「控除」を差し引いたものをいう。

したがって5千万円の利益があがったからといって、5千万円に課税されるわけではないのだ。

次からは不動産売却時に発生する税金の中でも一番ややこしい「譲渡所得にかかる住民税や所得税」について詳しく解説する。

譲渡所得へかかる所得税・住民税の計算方法

譲渡所得へかかる所得税・住民税を計算する前には、まず「譲渡所得」を計算しなければならない。

「譲渡所得の計算の仕方」並びに「譲渡所得へかかる所得税・住民税」の計算方法について解説する。

譲渡所得の税金を計算する方法

控除については後に解説するのだが、一番大切な控除だけ記すと、「居住用財産を譲渡した場合の3千万円の特別控除の特例」(国税庁)という部分に、控除として3千万円引くことができるのだ。

居住用財産を譲渡した場合の3千万円の特別控除の特例を使用した場合の計算式
(譲渡所得-3千万円)×所得税率or住民税率=支払う税額

上記の計算になるため、自分の譲渡所得が3千万円を超えない場合は税金がかからないのだ。

そのため、3千万円を超える譲渡所得がない場合は、税金面で特に考える必要性はない。

では3千万円を超える譲渡所得が見込まれる方へ向けて、「譲渡所得」や「譲渡所得へかかる所得税や住民税」について解説する。

まずは「譲渡所得」の計算方法を詳しくみてみよう。

譲渡所得の計算方法
譲渡所得=不動産の売却益-不動産売買の際に発生する経費

不動産売買の際に発生する経費は、不動産を購入した際のものを「取得費」、不動産を売却した際のものを「譲渡費用」という。

取得費 ・売却した不動産を購入した際の代金
・仲介手数料
・改良費
・設備費
・譲渡した際の金額の5%を概算取得費として、大まかな取得費として経費にすることも可能
譲渡費用 ・仲介手数料
・登記費用
・測量費
・印紙代
・立退料
・取壊し費用

取得費や譲渡費に関しては「取得日」や「譲渡日」といった形で明確に「いつまでが誰の所有なのか」が決められていますので確認しておこう。

取得日 ・譲渡予定の不動産をが引き渡された日が原則。契約にて異なる日を取得日にすることも可能。
・譲渡ではなく自身での建設の場合は建設完了日が取得日になる。
・相続の場合は被相続人が取得した日が取得日となる。
・「居住用財産の置換」や「特定事業用資産の置換」、「等価交換の立体置換」に関しては取得時間を引き継がない。
譲渡日 ・不動産を引き渡した日が譲渡日になるのが原則。契約にて異なる日を取得日にすることも可能。

あくまでも取得日や譲渡日までに発生した経費が「取得費」や「譲渡費」となるため注意が必要だ。

渡所得が計算できたら、譲渡所得から「控除」を差し引くことによって「課税譲渡所得」を算出する。

課税譲渡所得=譲渡所得-控除

次は譲渡所得に関する「控除」について解説する。

控除とは、「税率が加えられる前の金額から差し引く金額」なので、控除をうまく利用することで税金を安く済ませることが出来る。

それでは、どのような控除があるのか見ていこう。

控除名 控除額 控除要件
収用交換等の場合 5千万円 ・売却した不動産が固定資産税
・売却した年に公共事業売却資産に収用交換等の控除を使用していない
・買取申出から6か月以内に不動産を売却している
居住用財産を譲渡した場合 3千万円 ・元々自分がすんでいた場所(居住しなくなってから3年経過する前に売却していること)
・収用交換等の場合の特別控除をうけていないこと
・売却、購入相手が血縁関係にないこと
・前年または前々年に「居住用財産を譲渡した場合」、「特定の居住用財産の買い替え」、「居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除」、「特定居住用財産の譲渡損失の通損益通算・繰越控除」を適用していないこと
特定の居住用財産の買換特例 譲渡額の繰り延べ ・平成31年12月31日までに個人が居住用財産を売却した場合に翌年12月31日までに居住用の財産を取得した場合、譲渡所得の課税額が繰り延べることが出来る
居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除 損失が発生した分 ・居住用財産の買い替えもしくは、譲渡の際に赤字が発生した場合の損失を控除として使用できる。
・前年または前々年に「居住用財産を譲渡した場合」、「特定の居住用財産の買い替え」、「居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除」、「特定居住用財産の譲渡損失の通損益通算・繰越控除」を適用していないこと
特定住居済住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除 発生した場合 ・不動産を売却する際になっても住宅ローンが完済していない場合
・ローン残高-譲渡価格=譲渡損失という形で差し引ける
・翌年から3年間は控除が可能

表の控除を自身が使用できるパターン使用して、譲渡所得から差し引いたものを「課税譲渡所得」として以下の税率をかけていきます。

短期(5年以下) 長期(5年越) 長期(10年超)
居住用 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315% ・課税譲渡所得6千万円以下の部分
所得税10.21%+住民税4%=合計14.21%
・課税譲渡所得6千万円以下の部分
所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
非居住用 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%

たとえば、課税譲渡所得額が3千万円だったとして、短期(5年以下)の場合は、

3千万円×所得税(0.3063)+3千万円×住民税(0.9)=11,889,000(所得税+住民税)

以上が所得税と住民税の金額の合計となる。

不動産の売却で利益を獲得する方法を紹介

不動産売却時の税金について解説してきたが、税金に関しての知識は必要であると感じたのではないだろうか。

不動産投資で利益をあげる為には様々な要因が絡み合う。

その中でも「税金」の割合は多く、不動産で多くの利益をあげる為には節税と売却額UP着目しなければならない。

不動産の売却で取り組むべき節税の施策やしくみ

上述で解説したが、「居住用財産を譲渡した場合の3千万円の特別控除の特例」から3千万円以下の譲渡所得の場合は税金が発生しない。

従って、まず考えなければいけないのが「いかにして譲渡所得を3千万円以下に抑えるか」といいうことだ。

しかし、「居住用財産を譲渡した場合の3千万円の特別控除の特例」は自身が住んでいる家や土地を売却した際にしか使用できないため、注意が必要だ。

また、不動産を何年間使用したかによって税率が変わることも大きい。

短期(5年以下) 長期(5年越) 長期(10年超)
居住用 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315% ・課税譲渡所得6千万円以下の部分
所得税10.21%+住民税4%=合計14.21%
・課税譲渡所得6千万円以下の部分
所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
非居住用 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%

短期では、居住用・非居住用39.63%と非常に高い税率だが、長期(10年超)の場合は6千以下の部分が14.21%と半分以下の税金で済む。

もし9年目や4年といった場合など、あと少しで税率が変わる場合には、軽減税率が適用される年数まで待って売却するといった施策をとろう。

やむを得ない事情があるのであれば別だが、10%以上税率が変わってきてしまうことから手残りが大きく変わってくるので、軽減税率を採用する方が賢明だ。

最後に物件の取得費用を正しく計算する意義について解説する。

不動産はその性質上、長期間居住や運用を行う為、取得費が曖昧になっている可能性が高い。

しかし、上述したように取得費は譲渡所得から経費として差し引くことができるため、取得費は出来る限り正確に算出した方が課税譲渡所得が低くなる。

3千万円超えるかどうかのラインであれば、一気に税金が0になるかどうかといった話になるためバカには出来ない。

上述した「控除」の部分も使用できる部分は使用してうまく課税譲渡所得額を減らしていくことが重要だ。

不動産の買取金額を好条件にするために

不動産の売却金額はどの不動産会社も同じ金額を提示してくるわけではない。

従って、複数の不動産会社へ査定にだしたり物件そのもの価値を高めたりして、買取条件を好条件にするよう心がけよう。

また、注意する部分としては、税率が変わってくる付近の売却金額だった場合だ。

3千万円の特別控除を使用する場合は、税率が0になるか、発生するかといった相当大きな違いとなる。

このような場合は、一番高いところで売却するよりも税金0を選択した方が、最終的な手残りが大きい場合もある。

どの選択をしたら一番手残りが大きい慎重に選んで、臨機応変に対応していこう。

不動産の売却を慎重に進めて、利益を最大化させる

今回は不動産の売却益にかかる税金に関して説明してきた。

不動産売却益には様々な税金がかかっている為、理解しておけば賢く節税できるが知らないと大きく損をしてしまうことを感じたのではないだろうか。

譲渡所得 譲渡所得=不動産売却に関する収益-取得費-譲渡費
課税譲渡所得 譲渡所得-控除
課税方式 分離課税方式
所有期間における課税額の違い
5年以下 短期譲渡所得
5年を超え 長期譲渡所得
短期譲渡所得
居住用 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63%
非居住用 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63%
長期譲渡所得(5年超)
居住用 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
非居住用 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
長期譲渡所得(10年超)
居住用 ・課税譲渡所得6千万円以下の部分
所得税10.21%+住民税4%=合計14.21%
・課税譲渡所得6千万円以下の部分
所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
非居住用 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
不動産売却における代表的な控除
居住用売却時の3千万円特別控除
10年超所有している物件における軽減税率
特定居住用財産買替え

不動産売却益に関する税金の全てを理解するのは非常に難しいが、最低限表にまとめたものだけは覚えておこう。

不動産売却益は非常に大きな金額になる。

だからこそ、売却する際は慎重になって、節税や売却益UPの施策を使い倒して手残りを増やすのが賢明だ。