人生100年時代、定年後も仕事を続けたいという人も多いのではないだろうか。人によって仕事を続ける理由はさまざまだが、「お金」も大きな要因になりうる。老後にどれくらいの資金が不足するのか、また老後でもできる仕事とはどのようなものがあるのだろうか。
老後に必要な資金は2,000万円ではない
老後資金が2,000万円不足するという金融庁の報告書が2019年6月に発表され話題となった。しかし、公的年金だけでは老後に生活できないという問題は今に始まったものではない。
2,000万円という数字は、老後に1,300万円〜2,000万円不足するという報告書の内容を一部切り取ったものだ。この不足額は無職高齢夫婦世帯の家計収支が平均約5万円の赤字という現状をもとに、貯蓄を切り崩しながら20〜30年生きると仮定して計算したものである。
家計の収支は個人差が大きく、いつまで生きるかもわからない。また、老後に必要な蓄えを2,895万円とする経済産業省の試算もある。2,000万円という数字自体に意味はないが、年金以外の収入や貯蓄の確保がより重要であることは間違いない。2014年の財政検証によれば公的年金給付水準は、2043年には、2014年比で約2割減少すると見込まれている。
老後も男性の約7割、女性の約5割は仕事を続けている
電通総研が2015年に定年退職経験者を対象に実施した調査では、男性の約72%、女性の約55%が定年後も仕事を続けているという結果がある。そのうちの半数以上にあたる56.6%の人は同じ会社やグループ会社へ再雇用され働いている。もはや60歳の定年で退職する人のほうが少数派だといえるだろう。
老後も仕事をするための3つの選択肢 再雇用・再就職・独立
老後も仕事をする形態としては大きく3つ。自分にあった働き方や仕事を選ぶことが大切だ。
再雇用・勤務延長制度により同じ会社で仕事を続ける
2013年、高年齢雇用安定法が改正され、企業は従業員が希望すれば65歳まで雇用を継続することが義務付けられた。雇用継続の形態としては、一旦退職として新たに雇用契約を結び直す「再雇用制度」や定年を延長する「勤務延長(定年延長)制度」がある。
勤務延長制度であれば原則仕事内容や賃金水準に変更はないが、再雇用制度では雇用条件や雇用形態が変更され賃金水準が低下するケースが多い。
65歳以降も働ける企業は3割を下回っており、65歳以降も働ける会社はまだ限られている現状もある。(※厚生労働省による2018年「高年齢者の雇用状況調査」より)
別の会社に再就職する
定年を機に別の会社へ再就職する人も多い。スキルや経験が活かせる業種や職種への再就職では待遇や収入アップも期待できる。一方、それまでの仕事とまったく関係のない業種や職種への再就職では収入は下がるケースが多い。
独立して自営業・フリーランスとして働く
独立という選択もある。独立すれば自分のペースで仕事ができ、生涯現役で働くことも難しくない。そのためには経験やスキルを積み重ねておくことが大切だ。
たとえばカーネル・サンダース氏がケンタッキー・フライド・チキンを創業したのは65歳のとき。それから90歳で亡くなるまでに世界48カ国6,000店の巨大チェーンに成長させた。彼もまったくのゼロから成功したわけではない。成功の鍵となったオリジナル・チキンの製法は、カーネル氏が49歳のときに、営んでいたガソリンスタンドに併設するレストランで提供するために生み出された。
老後でもできる仕事3選 管理人やライター、コンサルタント・アドバイザー
年齢の問題もあり選択肢は限られるが、これまでのキャリアなどを有効に活かせる仕事もある。ここでは老後でもできる仕事を3つ紹介しよう。
マンションや寮の管理業
住み込みのマンション管理人などは高齢者に向いている。家賃はもちろん光熱費もかからないことが多く、老後も賃貸住宅に住み続ける予定の人にとってはメリットが大きい。仕事内容は共用部の管理や清掃など。業務のない時間は基本的に自室で自由に過ごせるが拘束時間は長く、職場と住居が同じになることにストレスを感じるかもしれない。長期の旅行など趣味を楽しみながら働きたい人にはあまり向かない。
ウェブメディアのライター
ウェブメディアのライターも高齢でもできる仕事の一つだ。在宅で仕事ができ、自分のキャリアや専門性があれば、比較的高い報酬も期待できる。文章を書くのが好きな人や資格を持っている人にはおすすめしたい。一方、人との直接的な交流が楽しみたいという人には向かないだろう。現在はクラウドソーシングサイトなどもあり、登録すればすぐに仕事を始めることができる。
コンサルタント・アドバイザー
これまでの経験や知識、技術などを活かしてコンサルタントやアドバイザーとして活躍する道もある。コンサルタントやアドバイザーとして収入を得るには、それまでのキャリアや専門性、人脈などが重要になる。退職してから始めるのでは厳しいといえ、将来を見据えて現役のうちにキャリアの棚卸しを行い、人脈を築いておくことが大切だ。金融や不動産などに携わってきた人であれば、お金に関する顧客からの相談に幅広く応じるファイナンシャルプランナーなどの選択肢もある。
老後も働くことで社会とのつながりや生きがいを見いだせる
老後も働くことで家計の収支は大きく改善する。社会とのつながりや生きがいを感じられる仕事であれば、老後の生活はより充実したものとなるだろう。
長い老後、働くならお金のためだけではなく自分らしく楽しんで働くほうがいい。そのためには将来を見据えてなるべく早いうちから行動していくことが大切だ。
文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
【関連記事 MONEY TIMES】
iDeCo(イデコ)を40代から始めるのは遅いのか
iDeCo(イデコ)をSBI証券で始める場合の手数料は?他の証券会社と比較
楽天証券でiDeCo(イデコ)を始めるメリット
クレジットカード「VISA」はどんなブランドなのか?
ポイント還元率の高いクレジットカード11選