不動産の売却時に用意すべき書類は、購入時よりも多い。足りないものがあると手続きが遅れ、買い手側の判断に支障をきたすこともあるので注意が必要だ。不動産売却に必要な書類を改めて確認してみよう。

不動産売却時に用意する書類

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(画像=PIXTA)

売却する不動産についての情報は、多ければ多いほど仲介者や買い手側に判断材料を提供していることになり、購入者が決まりやすくなる。購入時に受け取った資料などは、些細なものでも捨てずに保管しておきたい。

1.売買契約書

まず重要なのが、その不動産を購入したときに交わした契約書だ。物件の住所や面積など基本的な情報のほか、取引条件や特約条項なども記載されている。

2.重要事項説明書

法令上の制限や権利関係、瑕疵担保責任など、その物件を扱ううえで知っておくべき重要な事項について記載されている書類。契約時、この書類をもとに不動産業者から説明を受け、署名・押印をして受け取っているはずだ。

3.登記簿謄本または登記事項証明書

役所に保管されている登記簿の写しが登記簿謄本で、それをインターネットで取得できるようにしたものが登記事項証明書だ。内容は同じで、その物件の所有権や抵当権など権利関係が、時系列でわかるようになっている。

4.登記済権利証または登記識別情報

単に「権利証」と呼ばれることもある。登記済権利証と登記識別情報は、発行される際の名称が違うだけで役割は同じだ。自分がこの物件の所有者であることを証明する非常に重要な書類で、所有権が移転するときに買い主側に渡すことになっている。登記識別情報には12桁の数字と記号が書かれており、これを見えないようにするシールが貼られている。このシールは、できるだけ剥がさないようにしたい。

5.間取り図・測量図・公図

物件に関する図面を持っている場合は、資料として提出する。紛失してしまっていても問題ない書類ではあるが、間取り図を新たに書いてもらったり、測量図を役所でもらってきたりすると、時間も手間もかかってしまう。

6.固定資産税納税通知書

固定資産税や移転登記にかかる登録免許税を確認するための資料だ。固定資産税は買い手と売り手で分担して負担するのが一般的で、その計算にも使われる。

7.実印と印鑑証明書

契約書に押す印鑑は実印と定められているため、実印かどうかを確認するため、印鑑証明書も必要になる。所有者が複数いる共有物件の場合は、全員分が必要だ。共有者が遠方の場合や平日に役所に出向くことが難しい場合は取り寄せることになるが、意外に時間がかかることもあるため早めに用意しておきたい。ただし、印鑑証明書の有効期限は「発行日から3ヵ月以内」だ。

8.本人確認書類

氏名・住所・生年月日を確認するため、運転免許証やパスポート、健康保険証などが必要になる。こちらも所有者全員分だ。登記簿に記載されている住所と現在の住所が異なる場合は、住民票も用意しよう。

9.銀行口座情報を確認できるもの

手付金や売却代金の振込先に指定するため、自分名義の銀行口座を用意する。銀行名・支店名・口座番号などの基本情報がわかるようにしておこう。

10.ローン残高証明書

売却予定の不動産がローン返済中の場合に用意する。返済予定表でも問題ない。不動産の売却代金を受け取ってもまだローンが残ってしまうようだと取引に支障をきたすので、その問題がないかどうかの確認に使われる。

11.購入時の物件パンフレット、仕様書

マンションや戸建てを購入するときに受け取ったパンフレットなどを保管していたら、それも参考資料として提出するといいだろう。その物件の特徴や付帯設備を確認することができるからだ。

12.耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書等

耐震診断とアスベスト(石綿)使用調査も、重要事項として必ず説明しなければならない情報とされている。結果が詳しく書かれた報告書を持っている場合は、買い手側に説明できるよう資料として提出しておこう。

物件種別ごとに必要な書類

【マンション】管理規約(利用規約)

共有部分の利用やペット飼育についてなど、そのマンションで暮らしていくうえで守るべきルールがまとめられている。管理組合やマンション内の集会に関する資料などもあれば、まとめておきたい。

【戸建て】建築確認済証、検査済証

法令に基づいて建築された物件であることを証明する書類だ。建物を建て始める前に管轄の市区町村に建築計画をチェックしてもらい、問題ないとされれば「建築確認済証」が、建物が完成した時点のチェックで問題なければ「検査済証」が交付される。

【戸建て】住宅性能評価書・既存住宅性能評価書

その建物が地震や火災に強いかどうか、光や空気、音、温熱などの環境はどうかなど10項目が確認できる。すべての物件にあるわけではないが、これがあると買い手はその物件で安心して暮らせるかどうかを判断できる。

【戸建て/土地】境界確認書

隣接する土地との境目をはっきりさせ、自分の不動産の範囲を確定させるための書類で、「筆界確認書」「境界承認書」ともいう。のちの近隣トラブルを防ぐ役割がある。

【戸建て/土地】地盤調査報告書

地盤調査報告書では、その土地の地形や地盤の強弱などが確認できる。過去に地盤補強工事などを行っている場合は、そのときの資料も用意できるとなおよい。

各書類の必要なタイミングと入手場所は?

不動産を売却するときは、まず不動産業者を探して物件価格の査定を依頼する。その後、不動産業者と契約を結んで購入希望者を探してもらい、希望者が現れれば、契約に向けてさまざまな交渉や情報開示が行われ、お互いが合意したところで売買契約を締結し、物件を引き渡す。

紹介した書類は、同時に必要になるわけではなく、一連の流れの中で順次必要になっていく。書類の中には、発行してもらうのに時間がかかるものや、有効期限があるものもある。そのため、スムーズに手続きを進めるには、書類が必要になるタイミングや発行してもらえる場所、方法、入手できるまでにかかる期間などを事前に確認しておく必要がある。

必要となるタイミング 必要書類 入手方法
売却を依頼するとき 売買契約書 物件購入時に不動産業者から受け取っている。
重要事項説明書 物件購入時に不動産業者から受け取っている。
登記簿謄本/登記事項証明書 物件購入時に法務局で発行されたものを不動産業者から受け取っている。もし見当たらない場合は法務局に行くかオンラインでも発行してもらえる。
間取り図 物件購入時に不動産業者から受け取っている。
測量図、公図 物件購入時に法務局で発行されたものを不動産業者から受け取っている。もし見当たらない場合は法務局に行くかオンラインでも発行してもらえる。
耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書・地盤調査報告書・住宅性能評価書・既存住宅性能評価書・境界確認書 該当の診断や調査をしていれば、そのときに検査機関等から受け取っているはずだ。ただし、必須ではない。
物件パンフレット、仕様書 物件購入時に不動産業者から受け取っている。見当たらない場合、購入時の不動産業者に頼むと再発行してもらえるケースもあるが、なくても手続きは進められる。
マンションの管理規約(利用規約) 物件購入時にマンション管理組合などから受け取っている。
売却が決定後、引き渡すとき 登記済権利証/登記識別情報 物件を購入して登記が完了したときに法務局から交付されている。紛失しても再発行できないので、法務局や司法書士などに依頼して資料を作成してもらう必要がある。
建築確認済証、検査済証 物件建築時に市区町村で発行される。購入時に不動産業者経由で受け取っているはずだ。
実印と印鑑証明書 最寄りの市役所で実印を登録後、証明書発行を依頼する。遠方の所有者がいる場合は取り寄せが必要。有効期限は「発行日から3ヵ月以内」。印鑑登録済みでマイナンバーカードがある場合はコンビニでも取得できる。
本人確認書類 自分が所有しているものを持参する。
住民票 記載住所が相違する場合のみ準備する。こちらも有効期限は「発行日から3ヵ月以内」なので要注意。 銀行口座情報 自分が所有しているものを持参する。
ローン残高証明書(返済予定表) ローンを借りている金融機関で発行してもらえる。金融機関によっては、発行に1~2週間ほどかかることもあるので要注意。

不動産売買の必要書類は早めの準備を

不動産を売却するときには、多くの書類を用意する必要がある。しかし、購入したときに受け取った書類をきちんとまとめて保管していれば、大半はすぐに用意できるだろう。

紛失していたり、破損していたりすると、再発行の手配が済むまで手続きが止まってしまう可能性もある。「不動産を売ろうかな」と考え始めたら、早めに確認しておきたい。

また、売却完了時に受け取る書類(契約書の写しや所有権移転完了後の登記簿謄本、領収書など)は、確定申告で利用することがあるので、大切に保管しておこう。不安なことやわからないことがあれば、売却を依頼した不動産会社の担当者など、専門知識を持った信頼できる人に相談すれば、しっかりサポートしてもらえるはずだ。

文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所代表)