出品物を手に入れるために他のライバルと価格競争を繰り広げる「オークション」。その歴史は古く、紀元前から行われてきたとされる。特集第1回目は、数十億円単位の落札価格も珍しくない世界的なオークションハウスを紹介するほか、数多くあるオークションの種類を解説。現代のビジネスシーンでも数多く活用されるオークションの世界を掘り下げる。

(取材・文 大西洋平)

1700年代に誕生

高額オークションの世界
(画像=Courtesy Sotheby's,ZUU online)

日本では、オークションと言えば「ヤフオク!」をはじめとしたインターネットオークションが頭に浮かぶだろう。その一方で、絵画などの美術品が高額で落札されるオークションについては、ニュースでは巨額な落札価格などがニュースで取り上げられはするものの、あまり身近とは言えないだろう。

ただ、以前はテレビの人気番組のタイトルにもなっていたことから、ハンマープライス(落札価格)という言葉は耳にしたことがあるかもしれない。これは、落札時に競売人がハンマー(木槌)を叩くことがその由来である。

世界最大の証券取引所があるニューヨーク。世界中から投資資金が集まるこの巨大都市には、サザビーズやクリスティーズ、ヘリテージ・オークションズ、フィリップスといった世界的なオークションハウス(競売会社)が集結しており、高額な落札価格を記録するオークションが1年を通して何度も開かれている。

名だたるオークションハウスの中でも長い歴史と権威を誇っているのが、サザビーズとクリスティーズ。サザビーズは1744年にロンドンで創業して以来、今日に至るまで世界で最も歴史のあるオークションハウスとして知られる。世界40カ国に80の拠点を持ち、ニューヨーク証券取引所にも上場。モネやルノワールといった印象派やそれ以前の作品、近・現代アートを幅広く取り扱っており、美術史に刻まれている多数の名作が落札されてきた。

一方、1766年にロンドンで創業したクリスティーズは、そのサザビーズと肩を並べるオークションハウスである。当初はカメラや玩具、デディベア、人形などが取引されていたが、現在では美術品や宝飾品、時計はもとより、家具や楽器、ワイン、さらには住宅まで、多種多彩な出品物を取り扱っている。

オークションは超高額品だけではない!

サザビーズやクリスティーズはニューヨークだけではなく、ロンドンやパリ、香港といった世界の主要都市にオークション会場を持つ。ほかにも、アンティーク通貨で知られるヘリテージ・オークションズや、現代美術にフォーカスしたフィリップス、自動車の取り扱いで高い実績を残しているボナムスなど、独自の強みを持つ著名なオークションハウスが存在している。

日本でこうしたオークションについて報道されるのは、超高額の落札があった時だけだろう。たとえば、2017年5月にZOZO創業者の前澤友作氏が、サザビーズでジャン=ミシェル・バスキアの「untitled」という作品を1億1050万ドル(当時の為替レートで約123億円)で落札したことが話題となり、日本でも盛んに報道された。

日本ではこうした巨額の取引ばかりにスポットが当たるため、オークションはごく一部の資産家にしか関係のないイベントだと思われがちだろう。しかし、それは大きな誤解である。実際にはもっと広く門戸が開かれたものなのだ。詳しくは同特集の第2回に話を譲るが、実際は数千~数万ドル程度の出品物のほうが取引の主流となっている。そして、自分のパドル(番号札)さえ入手できれば誰でも参加することが可能だ。

そもそも「オークション=競り」は、日本でも巷の経済活動に深く溶け込んでいる行為である。しかも、オークションにおける心理的な駆け引きやストラテジー(戦略)は、資産運用という観点で行っている投資行動や、日常のビジネスにも通ずるものがある。ここからは、オークションの成り立ちや種類などについて紹介しよう。オークションが意外と身近なものであることがわかるはずだ。