土地の購入や活用の際には、都市計画法や建築基準法などのルールに対する配慮が必要です。なぜなら接道義務や用途地域など、違反すると建物が建てられなかったり、資産価値が低下したりしてしまう可能性があるからです。土地を有効に活用するためには、公法上の規制だけではなく地域住民の自主ルールともいうべき「建築協定」についても知っておく必要があります。

建築協定の効果

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(画像=Anson0618/Shutterstock.com)

建築協定は、一定の地域における建物の用途や構造などに関して土地の所有者同士が話し合って契約したルールです。単なる契約者同士の自主規制とは異なり、新たにその地域に土地を購入する第三者も対象となります。行政の認可を受けることによって、このような第三者効※を持つようになるのです。建築協定ではさまざまな規制をかけることができます。
※契約当事者以外の第三者が当該契約の目的となっている土地などを取得した時に、当該第三者も拘束する効力

例えば建築基準法第42条2項では、幅が4メートル未満の道路に接する土地に建物を建てる際に道路の中心部分から2メートル以上の間隔をとらなければいけないと定められているのです。(セットバックといいます)この距離を建築協定によって伸ばすことによって、各建物の風通しや日当たりをよくする効果が期待できます。

ほかにも敷地の面積や、耐火構造、用途、建ぺい率、容積率、建物の色や屋根の形にまで縛りを設けることが可能です。こうすることで防災性や景観などを維持し、街全体で心地よい住環境をつくり、ひいては不動産としての資産価値を向上させることが期待できます。

策定の流れ

建築協定をつくるためには、原則的に区域内の所有者と借地権者の全員が同意しなければなりません。場合によっては勉強会や説明会の開催、アンケート調査などをして合意形成を図る必要があります。そして建築協定に含まれる区域や期間、違反があった場合の措置などを取り決めます。意見が一致したら、各自治体の建築条例にもとづき、申請書を作成します。

必要な書類としてはルールブックである建築協定書、図面、付近の見取り図、合意書兼代表者証明書、土地の所有者の一覧などさまざまです。申請書類の受付が完了したら、自治体はその旨を市報などで発表し、内容を役所などで縦覧(誰にでも閲覧できるようにすること)します。その後、公聴会という意見交換会を開催し、問題がないようであれば建築協定を認可、再び認可された旨を公表し縦覧します。

建築協定の廃止には、土地の所有者や借地権者の過半数が合意したうえ、自治体の認可を受けなければなりません。このように建築協定は所有者同士の自主ルールではありますが、法律の定めによる手続きのもと、自治体が関わりながらつくるものです。なお住宅地を開発するデベロッパーが単独で定めた「1人協定」もあります。この場合は期間が過ぎた後、合意型の建築協定として維持することが多いようです。

建築協定の例

2007年の時点で有効な建築協定数は2,803件です。国土交通省のパンフレット「住民主体のまちづくり-建築協定事例集-」では、13の事例を挙げており、ここではその中から1つ取りあげて紹介します。京都市中京区の姉小路界隈地区は1.4ヘクタール、83区画におよぶ建築協定を結んでおり、1985年ごろに大規模なマンションが建てられ、反対運動が相次ぎました。

そこで江戸時代における町のルール「町式目」を参考にして協定が成立したのです。用途の制限に加え、地上5階建て以下、高さ18メートル以下とする高さ制限を設けて景観の維持に成功しました。協定成立後は、「街なみ環境整備事業」による京町家の再生などが行われ、地域の特色を生かしたまちづくりに役立てられています。

不動産の価値を維持・向上させていくためには、所有する物件だけではなく付近の景観のよさも重要です。建築協定は、街の品質を支える要素の一端をなしているといえます。

建築協定の有無と内容も不動産の将来性を決める要因の1つ

建築協定は住民の合意にもとづき、自治体の認可を得たうえで建築物の基準を設けたものです。街の景観や防災力を高めることに一役かっており、不動産の資産価値を維持・向上させる要因にもなっています。(提供:YANUSY

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