NISA(少額投資非課税制度)は発生した利益が非課税となる投資枠が年間で決められている。では、NISAでの投資額や保有している資産評価額が非課税枠上限を超えるとどうなるのだろうか。一般NISAとつみたてNISAについて、ケースに分けて解説する。

NISA非課税枠の年間上限金額と最長保有年数は決まっている

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(画像=Victor FlowerFly/Shutterstock.com)

NISAには、「通常のNISA」(以下「一般NISA」という)や「つみたてNISA」、「ジュニアNISA」があり、それぞれ非課税で年間に投資できる枠(金額)が決まっている。

一般NISAの非課税枠の年間上限金額は120万円だ。投資対象は、株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、投資信託である。投資で得た譲渡益や配当・分配金の税金20.315%は最長5年間、非課税になる。

年間120万円を5年間保有できるので、一般NISAの非課税投資枠は合計600万円になる。

投資額が一般NISA非課税枠の年間上限120万円を超えた分は課税される

一般NISAによる投資で年間120万円を超えた分は課税口座(特定口座や一般口座)での取扱いになるため、NISAの税制優遇を受けられない。

例えば、購入手数料を除いて200万円分の金融商品を購入する場合には、NISA口座に120万円分を、課税口座に80万円分を購入することになる。

一般NISA非課税枠の120万円を超える注文を出すとどうなる

ネット取引で一般NISAの非課税枠を超える買い注文を出した場合の処理は金融機関によって異なる。買い注文の全てをNISA口座で買えたと思っても、場合によってはNISA口座と課税口座で自動的に分割して購入されることがあるため気をつけたい。

例えば野村證券では、ネットでNISA口座に120万円を超える「現物株」の買い注文を出すとエラーメッセージが表示されて先に進めなくなる。しかし、120万円を超える「投資信託」の買い注文を出すと、警告メッセージが表示されるものの買い注文が行われる。その場合は、120万円まではNISA口座で、120万円を超える分は自動的に課税口座で購入される。

SBI証券では、一般NISA非課税枠を超える買い注文は、投資信託であっても発注できないようになっている。

NISA口座の保有資産が値上がりして評価額が非課税枠を超えても問題ない

一般NISAに投資した資産が値上がりして評価額が120万円を超えても、投資額が年間120万円以内であれば5年間は非課税で保有できる。

例えば、2019年に100万円で株式と投資信託を購入し、しばらくして評価額が150万円になったとする。この時点で含み益は50万円であり、換金した場合でも手数料を引いた利益約50万円は非課税になる。この年の投資額はまだ100万円なので、非課税枠まで残り20万円分の追加投資がNISA口座で可能である。

一般NISA非課税枠を使い切っている場合、投資信託の分配金再投資はできない

投資信託を保有していると分配金をもらえることがある。分配金とは投資信託の収益から投資家へ還元されるお金である。NISA口座に保有している投資信託の分配金は、「受け取り」か「課税口座で再投資」または「NISA口座で再投資」を選ぶことが可能だ。ただし、一部の金融機関ではNISA口座での再投資に対応していないので注意したい。

投資信託の分配金を一般NISAで再投資する場合は非課税枠を使うことになる。例えば、既に一般NISAで年間100万円投資していて、投資信託の分配金として得た2万円を一般NISAに再投資すると、残りの非課税枠は18万円(=残っていた非課税枠20万円-再投資した分配金2万円)となる。その年の非課税枠を使い切っている場合には、NISA口座への分配金再投資はできない。

投資信託の中には分配金なしの商品もある。分配金なしの投資信託は運用による収益を投資信託内部で再投資することになり、分配金再投資によりNISA枠を使わなくてもよい。NISAで投資信託の分配金再投資を前提としているなら、分配金なしの商品を検討してもいいだろう。

一般NISA非課税枠の年間上限120万円を使い切る方法

一般NISAの年間投資額が120万円に満たない場合でも、残りの非課税枠を翌年に持ち越すことはできない。よって一般NISAを最大限有効活用するなら、非課税枠120万円を使い切ったほうがよいという考えもある。

資金に余裕があれば120万円分の商品を新規購入すればいいが、必ずしもその必要はない。例えば、年間30万円を一般NISAへ投資できる人は、4半期ごとに30万円分の購入と換金を繰り返すことで年間120万円の枠を使い切ることができるのだ。

一般NISAへの投資で株式のみを選ぶ場合、多くの取引が100株単位のため非課税枠ちょうどの投資が難しいことがある。投資信託は買付金額を指定して購入できるため、非課税枠が残っている場合には投資信託を購入することで非課税枠を使い切ることができる。

つみたてNISAの非課税枠を超えた場合はどうなる

つみたてNISAは、その名の通り積み立てで投資信託へ投資する制度である。年間の非課税枠は40万円であり、非課税期間は最長20年と長い。

つみたてNISAで非課税枠いっぱいに投資する場合、1円単位で設定できる金融機関なら積立金額は月3万3,333円で年間投資額は39万9,996円になる。つまり、毎月の積立金額の設定を3万3,333円以下にしておけば(分配金の再投資を除くと)年間の投資枠を超えることはない。SBI証券や楽天証券などは、つみたてNISAの毎月の積立金額は3万3,333円が上限であり、それを超える金額を設定できない。

つみたてNISAでの投資信託の分配金再投資について、非課税枠を使い切っている場合には、一般NISAと同様にNISA口座での再投資がされない。楽天証券などでは、その年のつみたてNISAの投資額と12月までの積立予定金額に分配金再投資額を加えた金額が40万円を超える場合には、分配金の再投資は課税口座で行われることになる。

文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)/MONEY TIMES

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