個人年金保険は、主に60歳以降に使う資金を確保するため資産運用に重点を置いた生命保険だ。利回りが確定している商品では安心感も得られやすいが、デメリットもある。個人年金保険の種類ごとの特徴をおさえつつ、気をつけるべき点を確認していきたい。

個人年金保険の種類は3つ

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(画像=Khongtham/Shutterstock.com)

個人年金保険を運用方法で分類すると3つに分けられる。

・定額個人年金保険
・変額個人年金保険
・外貨建て個人年金保険

定額個人年金保険は契約時に利回りが固定され、将来の年金額があらかじめ確定している商品だ。預けたお金は日本の国債などで運用されるため為替リスクもない。一方、変額個人年金保険は国内外の株や債券が運用対象の商品だ。年金額は運用実績により変動し、元本割れリスクはあるものの長期運用によって大きく増えることも期待できる。

その中間的な特性を持っているのが外貨建て個人年金保険である。払い込んだ保険料は米ドルや豪ドルといった日本円より高い金利のつく外貨で運用されるのがメリットだ。年金の受け取りも外貨であり、日本円に戻したときの金額は為替レートによって変動する。

それぞれの個人年金保険はメリットもあるが、一般的にどのようなデメリットがあるのかも知っておきたい。

個人年金保険の3つのデメリット

個人年金保険で押さえておきたい主なデメリットは5つある。

途中解約は元本割れのリスクが高い

個人年金保険は20年や30年といった長期間にわたって保険料を払い込むことが多い。長い年月の中では何があるかわからないため、途中で保険料の払込が厳しくなることもあるかもしれない。保険料の減額をしたり払済保険に変更したりして毎月の負担を抑えることもできるが、どうしても資金が必要で途中解約を選ぶ可能性もあるだろう。

しかし、個人年金は解約返戻金の金額が保証されているわけではない。特に払い込み期間が短いと高い確率で元本割れしてしまう。途中解約すると保険料を払い込んでいた意味も乏しくなってしまうため、契約時には無理のない保険料を設定することが大切だ。

低金利環境下の円建て運用ではほとんど増えない

個人年金保険は将来のために年金を積み立てていく商品だが、円建て運用ではほとんど増えないといっていい。たとえば、ある定額個人年金保険に40歳から65歳までの25年間、月3万円の保険料を払い込んでも最終的に約3%しか増加しない(2019年7月現在)。複利で運用されるため実際の数値とは異なるが、単純に25年間で割ると1年あたり0.12%しか増えないことになる。

これは日本の金利水準が低く、十分な利回りを確保できないためだ。将来的に金利が上昇する可能性もあるが、定額個人年金保険の場合は契約時に利回りが固定され、そのまま低い金利で運用し続けなければいけない。変額や外貨建ては海外を含めた株式・債券などで運用されるため大きく増えることも期待できるが、為替リスクや価格変動リスクがあることは覚えておきたい。

インフレに対応できない可能性がある

低金利で運用する商品の弱点として、インフレに弱いことが挙げられる。インフレとは物価上昇が継続的に起こることだ。インフレが進むと今日1万円で買えるモノが来年には1万1,000円、再来年には1万2,000円と高騰していく。そこまで急激なインフレは現実的に考えにくいが、モノやサービスの値段が上がる中で、お金を低金利で預けることは実質的な元本割れになる可能性がある。

仮に現在100万円で売っている車が翌年に1%物価上昇すると価格は101万円になる。このときに銀行預金している100万円に金利が0.1%しかついていなければ、その100万円で翌年に車を買おうと思ってもお金が足りなくなるのだ。

物価上昇に対応するためには、物価の上昇率以上の利回りでお金を増やしていかなければならない。日本はデフレ(物価下落)や低インフレの国と言われるが、20年後、30年後にどうなっているのかは誰にもわからない。インフレリスクに備えるには、個人年金保険以外の選択肢も検討する必要があるといえるだろう。

個人年金保険のメリットだけでなくデメリットも理解して検討する

個人年金保険には上述したデメリットもあるが、金融機関の営業担当者などは商品の良さをわかってもらおうとメリットを強調することがある。メリットがなければ加入することもないため当然ではあるが、時間のかかる資産形成だからこそデメリットをしっかり把握することが大切だ。メリットとデメリットを天秤にかけ、複数の選択肢から自分に合ったものを検討するようにしたい。

文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES

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