近年、投資家は運用コストに敏感になっている。それに応えるべく運用会社によるインデックスファンドの信託報酬の引き下げ合戦が行われている。確かにインデックスファンド選びにおいて、低コストであること、――特に信託報酬の安さ――も重視すべきだが、他の要素も見過ごしてはいけない。インデックスファンドを選ぶうえで、「信託報酬」以外にしっかり確認しておきたい3つの視点を取り上げる。

視点1 購入時のコストはかかるか

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(画像=zimmytws/Shutterstock.com)

運用コストが低く抑えられるインデックスファンドだが、購入時の手数料が重くなっては本末転倒だ。多くのインデックスファンドは購入時手数料がゼロ(ノーロード)で販売されているが、なかには購入時手数料がかかるインデックスファンドもあるので注意したい。

購入時手数料が1.08%(税込み)で販売されているインデックスファンドを例にとって考えてみよう。このファンドを100万円分購入すると、購入時手数料として1万800円を支払わなければならない。これはつまり、購入した時点で1万円以上の資産を減らすということだ。

まったく同じインデックスファンドを同じ金融機関で購入する場合でも、販売チャネルが違えば、販売時手数料がゼロ(ノーロード)となることもある。一般に、金融機関の店舗窓口よりもオンラインで取引するほうが購入時手数料は低い傾向にある。オンライン取引では多くのインデックスファンドがノーロードで販売されている。インデックスファンドを選ぶ際は可能な限りノーロードの商品を選びたい。

視点2 事実上の解約時コスト「信託財産留保額」はどうか

購入時だけでなく、インデックスファンドを選ぶ際には解約時のコストも忘れてはいけない。ここで注目したいのは解約手数料ではない。解約手数料がかかる投資信託はほとんど見かけない。しかし、信託財産留保額が設定されたものは少なくない。この信託財産留保額が設定されているインデックスファンドには注意しておきたい。

信託財産留保額の意味と有用性について詳しい説明はここでは割愛するが、運用会社や販売会社の収益になるわけではない。そのため、厳密に言うと信託財産留保額は手数料ではない。しかし、一般的に投資信託の換金時に徴収され、事実上の解約コストとして説明されることが多い。投資家からすれば、ある意味で解約手数料と考えられる。

例えば、あるインデックスファンドにおいて、信託財産留保額が「基準価額に0.3%をかけた額」と定められているとする。このファンドを解約するときには、実際の基準価額から0.3%が差し引かれた基準価額が適用される。基準価額が1万円の場合、9970円が解約価額となる。評価額100万円のインデックスファンドを解約した際は、99万7000円しか受け取れない。3000円の信託財産留保額を負担することになるのだ。

9970円(解約価額)=1万円(基準価額)×99.7%(100%−0.3%)
99万7000円(受け取り金額)=100万円(評価額)×9970円(解約価額)÷10000
※基準価額は1万口当たり

信託財産留保額は、インデックスファンドを売却する投資家からある種のペナルティ料として徴収されるものだ。そのため、短期間で売却を繰り返す場合は不利になる可能性が高い。特に短期間での売買や頻繁なリバランスを予定しているなら、信託財産留保額が設定されたインデックスファンドは避けたい。

視点3 運用を続けてくれるかどうか

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