生命保険会社は個人の資産形成ニーズを捉えるため、外貨建て保険に注力している。円建て保険より魅力的に映りやすいが、トラブルも増加傾向だ。外貨建て保険は基本を押さえるとともに、リスクや契約内容もきちんと確認しておきたい。
生命保険会社は円建て保険から外貨建て保険の販売にシフト
日本では株や投資信託での資産形成を行う傾向が他国と比べて低い。一方、将来不安に対する具体的な取り組みとして保険加入を選択する人が多いようだ。生命保険会社は資産形成ニーズに応えるため貯蓄性保険を販売してきたが、円建て保険による運用提案は減少してきている。代わりに増えているのが外貨建て保険の提案だ。
2019年3月期決算における日本生命保険、第一生命保険、明治安田生命保険、住友生命保険の大手4グループの外貨建て保険の合計販売額は前期比6割増になった。背景の1つにあるのが低金利環境による円建て保険の魅力低下だ。外貨建て保険は相対的に利回りが高く、保険会社の主力商品になりつつある。
ただし商品内容をよく把握しないまま契約して苦情に発展することも増えているため、外貨建て保険の基本を理解してから契約することが大切だ。
生命保険会社が注力する外貨建て保険とは
外貨建て保険に対して誤った認識を持っている人もいる。外貨建て保険とはどのような仕組みなのか。
外貨建て保険は投資性の高い商品
外貨建て保険は、払い込んだ保険料が米ドルや豪ドルといった外貨で運用される保険商品だ。満期金や解約返戻金は外貨で受け取る仕組みになっており、日本円に換金したときに為替の水準によって元本を下回ることもあれば上回ることもある。
たとえば1ドル=100円のとき、手数料を考慮しなければ100万円をドルと交換すると1万ドルになる。その後、換金するときに1ドル=90円の円高になっていれば90万円に目減りし、1ドル=110円の円安になっていれば110万円に増える。加入中は外国債券の他に株式で運用されるものもあり、単純に為替の円高・円安だけが結果に直結するわけではないが、影響は大きいと言える。
外貨建て保険の種類としては、終身保険、養老保険、個人年金保険などがある。いずれも投資性の高い商品であり、保険ではあるものの資産運用を主な目的として加入する商品であることは理解しておきたい。
一時払いの外貨建て保険は為替リスクに要注意
外貨建て保険のなかでも一時払いで運用する商品は、特に為替水準に気をつけたい。一時払いの場合、加入のタイミングが相対的に円安だと、その後に円高になれば損失が膨らんでしまうからだ。過去10年間のレートでは1ドル=120円台の水準だったこともあるが、直近では108円程度と10円以上円高になっている(2019年7月現在)。1ドル=120円のときに外貨建て保険に加入していた場合、現在のタイミングで受け取る額は10%近く目減りしてしまうのだ。
満期金などの受取時までに為替レートが戻らなければ、その分は運用対象からの金利収入などで増やさなければいけない。外貨建て保険の利回りが高いとは言っても、それだけの下落をカバーするには数年か長くて10年以上かかる可能性もある。
外貨建てでも毎月定額を積み立てていくタイプなら為替変動の平準化が図れ、ある程度はリスクを抑えられる。一時払いの外貨建て保険はタイミングが悪ければ為替の影響をもろに受けてしまうため、利回りだけを見て安易に契約するのは避けたほうがいいだろう。
生命保険会社や銀行窓口の説明ではリスクや契約内容をしっかり確認する
外貨建て保険は生命保険会社が直接販売することもあるが、顧客と接点を持ちやすい銀行窓口で販売されることも多い。同じ外貨建て保険ならどこで契約しても商品内容は変わらないが、リスクや契約内容はしっかり確認しておきたい。たとえば、確認したいのは以下のようなポイントだ。
・最終的な受取時にどの程度まで円高になっていれば損失になるのか。
・手数料などを差し引いた実質の利回りはいくらか。
・途中解約にはどのような制限があるのか。
このような注意点はしっかり確認し、契約は慎重に検討したい。また、保険だけで資産運用を検討せず、投資信託など他の金融商品も提案してもらいよく比較することが大切だ。
文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES
【関連記事 MONEY TIMES】
40代で「がん保険」は必要か?
保険の代理店が外貨建て保険を勧める本当の理由とは?
がん保険の基礎知識 「特約」や「一時金」とは何か?
医療保険の「掛け捨て」と「積立」、 40代はどっちを選ぶべき?
40代が知っておきたい保険の知識まとめ