日本政府観光局(JINTO)が2019年7月に発表したところによると、2019年上半期(1~6月)の訪日外国人旅行者数が、対前年比4.6%増の1,663万3,600人と、上半期としては過去最高を記録しました。通年では、長年目指していた1,000万人を2013年に突破してから急増しており、2018年は3,119万1,856人に達しました。

一方で国内の人口減少はこちらも過去最大の43万人(総務省発表、2019年1月1日現在)に達しています。こうした背景の中で地方の生き残りを見据えた際に、日本は今後、訪日外国人旅行者、いわゆるインバウンドとどのように向き合えばいいのかを考察していきます。上半期の訪日外国人の増減を国と地域別に見てみると、中国が11.7%増の453万2,500人、韓国は3.8%減の386万2,700人でした。

また、台湾が1%減の248万800人、香港が1.1%減の109万7,900人と続き、東アジアを中心に減少傾向にあることが分かりました。特に韓国は地政学的な問題が発生しており、先行きの不透明な状況が予想されています。逆にいえば、東アジアの減少を後述するタイなど他の国や地域が補う形になっており、訪日外国人の多様化が進んでいるという面で良い傾向ともいえるでしょう。

上記を踏まえると、さらに訪日外国人を増やすためには、さまざまな国や地域の人が「日本に行きたい」と思うような魅力をいかにアピールできるがカギになってきます。つまり各自治体におけるコンテンツやインフラ作りが重要なのです。

佐賀、青森などが5年で観光客増加に至った理由

インバウンド,佐賀,青森
(画像=lydiarei/Shutterstock.com)

JINTO のデータから、2013年と2018年の外国人宿泊者の増加割合を見てみましょう。増加割合で、1位は6.75倍に増えた佐賀県。5万5,550人からなんと37万4,840人に増やしています。タイの映画ロケを誘致するなど、東アジアに近いという地の利を生かした施策が功を奏しました。タイについては、2019年4~6月の1人当たり旅行支出が前年比18.7%増、消費額全体でも22.4%増と大幅に伸びています。今後の経済成長を鑑みると日本にとって非常に重要な国と位置づけられます。

2位は6.07倍の青森です。リンゴの輸出先として青森が広く認知されている台湾からの観光客が多く、特に奧入瀬渓流の紅葉が美しい10、11月の増加が目立っています。3位は5.5倍の香川でした。2010年から開催している瀬戸内国際芸術祭で数字を伸ばしたようです。また美術館が点在する瀬戸内海の直島の人気は年々高くなっています。

4位は5.41倍の岡山です。岡山空港に格安航空会社の旅客機が就航したことにより、台湾から中国・四国地方に向かう旅行者の玄関口になりました。白桃狩りなどの体験型ツアーに人気が集まっているそうです。

一方で5年間の訪日外国人の増加数を見ると、圧倒的に多いのが1,193万人増の2,176万人を達成した東京。新宿・新大久保、銀座、浅草が人気です。2位は食事や買い物を楽しめる大阪、3位は福岡でした。

興味深いのは、お金の使い道が国によって異なることです。米国の旅行者は宿泊費に43%使うのに対して、飲食費は26%、購買は12%であるのに対して、中国は同21.3%、17.8%、49.9%という順です。欧米人が宿泊費にお金をかけるのに対して、中国や台湾人は購買を重視していることが明確に分かります。

インバウンドは人口減少の日本を支えるファクター

勢い良く伸び続けるインバウンド市場とは対照的に、経済市場でいうと日本人の消費は今後、頭打ちになることが予想されています。2004年をピークに10年連続で日本の総人口が減少していることが背景にあるとされ、都道府県別では42道府県で人口が減り、特に北海道、四国、中国エリアの順に減少傾向にあります。

出生者から死亡者を引いた自然増減数は44万人減となっており、今のところ打つ手立てがない状況の中、期待を集めるのがインバウンド消費の取り込みです。佐賀や青森、香川の大幅な増加率は、1つの手がかりになるといって良いでしょう。日本は、中国や台湾を中心とした東アジアや、タイ、シンガポールなどの東南アジアを含めて、成長率が著しい国に取り囲まれています。

この環境を生かし、インバウンドの拡大を進めていくことは、日本にとって経済的にも政治、社会としても重要な取り組みであることは間違いありません。(提供:JPRIME


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