1969年7月、米航空宇宙局(NASA)の宇宙船アポロ11号が月面着陸に成功しました。人類で初めて月面に降り立ったニール・アームストロング船長が残した「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な飛躍だ」という言葉はあまりにも有名です。当時、冷戦を背景に米国とソ連が対立。軍事や経済などさまざまな分野で激しい競争を繰り広げていました。

宇宙開発もその一つでソ連は1957年に人類初となる人工衛星「スプートニク」を打ち上げました。ソ連はさらに「ルナ計画」のもと、1959年に月に探査機を送り込むことに成功。1961年にはユーリイ・ガガーリンが世界で初めて宇宙を飛行しました。宇宙開発の分野でソ連に水をあけられた米国が挽回を狙って打ち出したのが人類を月に着陸させる「アポロ計画」でした。

ジョン・F・ケネディ大統領は1961年、議会で演説を行い、10年以内に人類を月に送り届ける方針を発表。これ以降、莫大な予算と人員がつぎ込まれ、宇宙船やロケットの開発が進められます。そして1969年7月、アポロ11号が月面着陸を成功させるのです。アポロ計画は、宇宙開発そのものだけではなく関連技術の発展も促しました。

小型で軽量のコンピュータの開発は、高密度集積回路(LSI)といった半導体技術の発展に寄与します。また月への長旅に際し宇宙食の開発が進められ、長期保存可能な「フリーズドライ製法」が生み出されました。現在は眼鏡のフレームなどさまざまなものに使われる形状記憶合金も着陸船のアンテナの素材として開発されました。

そのほか文化的な遺産としては「月の石」が挙げられるかもしれません。1970年に開催された大阪万博のアメリカ館にはアポロ11号が持ち帰った月の石が展示され、人気を博しました。その後、アポロ計画は終了しますが、各国による宇宙開発や月探査の取り組みは続きます。日本は1990年に月探査機「ひてん」の打ち上げを成功させました。

これにより、日本は米ソに続いて月面到達を果たした3番目の国となりました。欧州宇宙機関や中国、インドも探査機や衛星を打ち上げています。

月にたくさんの水が存在

月面,火星,アポロ11号
(画像=Alones/Shutterstock.com)

2019年、驚くような発見が報告されました。科学誌『ネイチャー・ジオサイエンス』で発表された報告によれば、NASAの探査機が、月面に隕石が衝突した際、地表から水が吹き出す様子を観測しました。月に水が存在することを示唆するデータは以前にもありましたが、今回の報告により、従来考えられていたよりも多くの水が月に存在する可能性も出てきました。

仮にたくさんの水が存在するなら月を訪れた宇宙飛行士にとって飲料水になるかもしれません。また水を酸素と水素に分解することでロケットの燃料を生み出すことができるようにもなるでしょう。NASAは現在、2024年までに月面に宇宙飛行士を送り込む「アルテミス計画」を進めています。アルテミスはギリシャ神話に登場する狩猟や貞節の女神でアポロの双子とされます。

アルテミス計画が実現し人類が再び月面に到達すれば、月の資源開発が進むでしょう。NASAのブライデンスタイン長官は月面に長期間利用できる拠点を構築する考えを明らかにしています。その月の拠点から次に目指す先は火星でNASAは2033年までに火星に宇宙飛行士を送り込む計画も進めているのです。NASAによれば、宇宙飛行士を火星に送り込むための新技術の開発には、アルテミス計画によって得られた知見が活用されるという話。

地球と月との距離は約38万キロメートルです。数日で到達することが可能ですが、火星ははるかに遠く最接近時でも約5,700万キロメートルの距離があり、往復には少なくとも2年はかかるとみられています。そのため月面を目指すよりも厳しい旅路となるでしょう。アポロ計画がさまざまな技術革新を促したように、アルテミス計画によって生み出された新たな技術や知見が人類を火星に送り届ける際の礎となるかもしれません。(提供:JPRIME


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