東南アジア諸国連合(ASEAN)が、2034年のサッカーW杯(ワールドカップ)の共同開催に向けて誘致活動に乗り出すとの話が持ち上がっています。2019年6月にタイの首都バンコクで開催されたASEAN首脳会議の場で提案されたもので、ブルネイやインドネシア、マレーシア、シンガポール、タイが関心を示している傾向です。東南アジアでのW杯開催となれば史上初となります。

インフラ整備が課題に

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(画像=fifg / Shutterstock.com)

W杯での共同開催といえば、2002年の日韓大会が思い起こされます。それ以前の大会は欧州かアメリカ大陸での大会が続いていましたが、2002年大会は初のアジアでの開催となりました。また、2ヵ国による共同開催も史上初めての出来事でした。4年に1度開催されるW杯はその後、2006年にドイツ、2010年に南アフリカ、2014年にブラジル、2018年にロシアで開催。

2022年は中東カタールでの開催が決まっています。2026年は史上初の米国とカナダ、メキシコによる3カ国での共同開催が予定。実は2026年大会から出場国が現行の32ヵ国から48ヵ国へと拡大されるのです。出場する国の数が増えるということは、試合数が増えるということなので必要となる競技場などインフラ整備の負担も大きくなります。

このため近年は複数国による誘致活動が主流です。2030年大会はまだ開催地が決まっていませんが、南米の複数の国が共同開催を提案する動きなどをみせています。2002年の日韓大会以降、欧州やアフリカ大陸、南米と開催地域が移っており、こうした中でASEANが「アジア枠」での開催を目指してW杯の誘致に向けて動き出した格好です。

中国の参加が切り札になり得るか

ASEAN加盟10ヵ国による共同開催が実現すれば、東南アジア各国の結束を示す上での素晴らしい見本となるでしょう。実際、2018年6月にW杯の3ヵ国共同開催が決まった際、米国のトランプ大統領はメキシコやカナダとの政治的関係が良好とはいえなかった時期でしたが、Twitterを通じて共同開催について祝意を表明しました。

もちろん手を上げたからといって開催が決まるほど甘い世界でもありません。特にASEAN各国にとっては、競技場や宿泊施設、公共交通網といったインフラの整備が欠かせないでしょう。こうした開発に必要な投資も複数国開催であれば、1国あたりの財政負担は軽減できます。また1国あたりで整備する競技場の数が減れば、競技場を造り過ぎてしまい大会が終了した後に維持管理ができなくなる「負の遺産」となるといった事態を避けることも期待できるでしょう。

こうした動きを注視しているのは、中国かもしれません。中国は習近平国家主席のもと「一帯一路」と名付けた開発構想を掲げ、アジアや欧州の各国を巻き込んだ開発プロジェクトを進行中です。中国が進める投資では投資額が巨額になりすぎて途上国が返済不能に陥るといった件もあり懸念の声も出始めています。

しかしW杯の共同開催に向けたインフラ投資なら大規模になることが予測されるため、中国も大手を振って巨額融資を行えるかもしれません。一方で中国がW杯の自国開催に向けた取り組みを長年にわたって続けているのも事実です。そういった意味でも中国はASEANの動向に注目している可能性もあります。

ただASEAN各国による共催の実現は厳しいというのが正直なところでしょう。サッカーの実力面でみてもASEAN加盟国の中で国際サッカー連盟(FIFA)ランキング上位の国は、ベトナムやタイが100位前後に位置するだけです。その両国にしてもW杯の出場経験はありません。ASEANでの共同開催となれば出場国枠により実力的に劣る複数のチームが本大会に参加することになるため、試合の質の低下は否めず、そうした状況がどこまで許されるのか不透明です。

ASEANが目指す共同開催はまだまだ未知数

選手や観客の移動の面でみても、複数国をまたいでの長距離移動が入管手続きなども含めてどこまでスムーズに実現できるのか未知数です。当然、言語の壁もあります。ASEANが目指すW杯共同開催。実現までの道のりは険しそうですが、東南アジア初のW杯開催に向けた動きに注目です。(提供:JPRIME


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