2019年の夏、戦艦大和を題材にした映画『アルキメデスの大戦』が話題を呼びました。『永遠の0』を手掛けた山崎貴監督が作るこの作品は、ストーリーとともにVFX(視覚効果)を駆使しているのが注目を浴びています。コンピューターが作り出す映像は、もはや誰も見ることができないと思われていたものを再現できるまでに進化しているのです。

アルキメデスの大戦のリアリティはこれまでの映画よりも一つ抜けているといわれています。今回はアルキメデスの大戦を通じて、VFXで拓く映画の可能性について解説します。

2019年夏注目の映画『アルキメデスの大戦」

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(画像=Fedorovekb/Shutterstock.com)

『ドラゴン桜』『インベスターZ』を描いた三田紀房が原作を手掛けるこの作品は、戦艦大和を巡り、天才数学者が頭脳戦を繰り広げるストーリーは、新しい視点で戦争を描いています。俳優陣も主演の菅田将暉氏をはじめ、舘ひろし氏、國村隼氏などが脇を固めており、映画好きのみならずとも注目を集める作品になりました。

映画が封切りされてから、10日間で興行収入8億6,000万円、観客動員数も70万人を突破するなど、上々の滑り出しを見せました。

「VFX」技術とは?

このアルキメデスの大戦では、ストーリー以上に注目されているものがあります。それは作品で使われたVFX(映像技術)です。本作品を手掛ける山崎貴監督は、もともとアニメーションや映像技術に強い「白組」という映像プロダクション出身。2000年に『ジュブナイル』で初監督を務めました。2005年の『ALWAYS 3丁目の夕日』では、CGを駆使して昭和の街並みを再現したことで評価を集めます。

そのほかにも宇宙戦艦ヤマトの実写版や冒頭で紹介した『永遠の0』でもCG技術をふんだんに使っており、映像技術の高さに定評です。今回の『アルキメデスの大戦』にも、「VFX」と呼ばれる映像技術が使われています。VFXは、正式名称を「Visual Effects」といい、日本語に訳すと視覚効果という意味です。

特撮などでよく使われる手法であり、デジタルカメラやコンピューターを使って現実以上の映像を作り出すもの。VFXに近いものとしてCGやSFXなどがあります。CGはコンピューターグラフィックの略でコンピューターを使って作成される点ではVFXと同じです。VFXと異なるのは、VFXが実際の映像とコンピューターで作成した映像を組み合わせるのに対し、CGはコンピューターのみで作られる映像。

一方、SFXは「Special Effects」の略で、日本語でいうと特殊撮影を意味します。SFXは映像に対し、美術や舞台装置、または撮影技術、デジタル処理などで特殊な加工を施す処理になります。こういった技術が進化することで映画の映像は、リアルを超越したものになってきているのです。

VFXが変える「大作映画」

VFX視点ではどのような点に注目すべきなのでしょうか。一番の見どころは、やはり冒頭の戦艦大和の戦闘シーンでしょう。また沈没のときが迫る大和の姿も繊細に描いています。魚雷の攻撃に耐え切れなくなり、反撃もむなしく大和が横倒しになったシーンでは、搭乗員が甲板の端にぶら下がり、次第に落下していく模様を人工知能で見事に再現しています。

山崎監督はVFXに非常に力を入れており、例えば船が通った後の航跡も完全にVFXを使って表現しています。本人が「表現をするうえでのリミッターがなくなった」と語っており、これまでのどの映画よりも忠実に、戦艦大和が沈没するシーンを表現しているそうです。数学者の戦争というストーリーとともに、VFXを駆使した映像として注目が集まっています。

過去の大作映画といえば、膨大な数のエキストラを交えた壮大な戦闘シーンといった特徴がありました。しかし今後はVFXなど最新のテクノロジーを駆使した想像を超えた迫力映像のようになるかもしれません。VFXが映画の作り方をどう変えていくのかは、映画ファンでなくても楽しみの一つになるでしょう。(提供:JPRIME


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