シンカー: 今四半期に弊社が提案するアロケーション変更の狙いは、来年の(マイルド)リセッションというシナリオを維持しつつ、債券市場における過度にアグレッシブなプライシング(弊社はそう考える)からポートフォリオを守ることである。弊社は債券へのエクスポージャー低減を推奨し、FRBによる珍しい予防的措置から既に恩恵を受けている米国債に対して取っていた大幅なロングポジションを縮小し(組入比率を5ポイント引き下げて15%に)、スプレッドと利回りが大幅に低下している米国/欧州の社債のウェイトも引き下げる(-7ポイントの5%)。 米国債と社債から引き揚げた資金を、現在の価格での投資価値がより高い資産に再配分する。それには、より利回りが高い一部の新興市場債(当面はハードカレンシー債のみ2ポイント引き上げて5%に)と、直近の中銀の政策を受けたリプライシングに乗り遅れている(米国)、またはディープバリューの状態にありトリガーが見込める(日本)一部の株式(株式全体で+5ポイントの40%)が含まれる。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

グローバル・レポートの要約

●アセット・アロケーション(9/12):債券へのエクスポージャーを低減し、機会を求めて東方に目を向ける

今四半期に弊社が提案するアロケーション変更の狙いは、来年の(マイルド)リセッションというシナリオを維持しつつ、債券市場における過度にアグレッシブなプライシング(弊社はそう考える)からポートフォリオを守ることである。弊社は債券へのエクスポージャー低減を推奨し、FRBによる珍しい予防的措置から既に恩恵を受けている米国債に対して取っていた大幅なロングポジションを縮小し(組入比率を5ポイント引き下げて15%に)、スプレッドと利回りが大幅に低下している米国/欧州の社債のウェイトも引き下げる(-7ポイントの5%)。米国債と社債から引き揚げた資金を、現在の価格での投資価値がより高い資産に再配分する。それには、より利回りが高い一部の新興市場債(当面はハードカレンシー債のみ2ポイント引き上げて5%に)と、直近の中銀の政策を受けたリプライシングに乗り遅れている(米国)、またはディープバリューの状態にありトリガーが見込める(日本)一部の株式(株式全体で+5ポイントの40%)が含まれる。

これらの修正は、債券に対する弊社の構造的オーバーウェイトや株式に対するアンダーウェイトを変えるものではない。引き締めから緩和への金融政策の180度転換を消化する間に債券のボラティリティは急騰している。今後はそれがやや落ち着く可能性があるが、米金利には多少の不透明感が残る。株式に関しては、ネガティブな心理とリセッション懸念がボラティリティを押し上げ、欧州よりも米国の方が大きく影響を受けると弊社は予想している。

また、株式市場の下落に対するポートフォリオプロテクションを自然に提供する資産の組入比率を高くすることを提案したい(これはポートフォリオのボラティリティを自然に低く保つという目標に沿っている)。それらは円(ヘッジなしの日本株投資を通じてエクスポージャーを確保)、金(5%)、および米国債(ただし弊社はエクスポージャーを低減)である。弊社はアロケーションの中で米ドルへのエクスポージャーを最大限(全体の約3分の1)に保ちたいが、FRBはG4で唯一アグレッシブな利下げを行う(ドル相場を抑制する)ことが可能な中銀であることから、円(+5ポイントの12%)とユーロ(+6ポイントの37%)へのエクスポージャーを引き上げる一方、コモディティ関連通貨(ロシアルーブル、ノルウェークローネ)へのエクスポージャーを高水準(10%)に維持する。

今は米国債と米クレジットのデュレーションを短期化: 年初以降、市場の期待はFRBの追加引き締めから緩和へと移り、急速に十分な利下げが想定されるようになっている。現在では2020年末までに4回の利下げが織り込まれており(弊社のFRBウォッチャーは5回を予想)、弊社が米国債に最大限のウェイトを付与する根拠となっていたFRBに関する期待の非対称性はもはや見られない。弊社は保有米国債のデュレーションを短期化するよう勧める。これは米国の選挙を前に米中貿易戦争をめぐるニュースフローが改善する可能性に対するプロテクションとなるためである。社債は年初来の大々的なリプライシングを経て投資妙味がほとんど残っていない一方、企業の負債にのしかかるシクリカルリスクは非常に高い水準に達している。弊社は米国と欧州の社債の組入比率を7ポイント引き下げて5%とする。

株式にある程度資金を再配分: 第一に日本:期待外れな経済成長、多少の円高進行、そして何より10月1日の消費税増税という形での新たな政策ミスへの懸念から、日本株は今年、外国人投資家からアグレッシブに売られている。弊社は、(2014年4月とは異なり)今回は経済への実質的ダメージは限定的なものにとどまり、株価は2014年と同じ動き(増税前に下落、増税後に上昇)を示すと考えているため、日本株(ヘッジなし)の組入比率を引き上げるよう勧める。営業マージンの上昇、配当の増加、そしてコーポレートガバナンスの急速な改善は、ドル円とTOPIXの相関性が低下し続けることを確実にしよう。安定した政治環境の中で、これは外国人投資家を日本株に呼び戻す後押しとなろう。

弊社は米国株に対する大幅アンダーウェイトを緩和する。今年の企業利益は最終的に横ばいになると予想されるなか、米国株は債券利回りの急低下に比べて出遅れており、株式リスクプレミアムが5%に急上昇していることは、投資家が来年の利益成長率10%との予想が下方修正を余儀なくされることを受け入れる用意があることを示している。自社株買いは今年も約7,000億ドルと高水準を維持している。トランプ大統領が米中貿易戦争に伴う米消費者の不安を多少緩和するような措置を講じた場合は、株式への一時的なリアロケーション(再配分)を促すトリガーになると思われる。

「チャイナ・プット」と「欧州の日本化」をアクティブ状態に維持 :中国は3つの主要政策ツールの同時緩和(財政・金融政策緩和と、米関税の影響を相殺する効果的な手段としてのコントロールされた通貨下落。弊社は1ドル=7.5元までの下落を予想)を容認することで非常にディフェンシブな特性を持つようになっている。中国と米国のリスクプレミアムの構造的収斂(中国株にとって強気材料)と指数組入係数(BENCHMARK INCLUSION FACTOR)の上昇に加え、上記のツールは中国本土市場(CSI300指数)が長期的なアウトパフォーマンスを維持することを確実にしよう。

ユーロ圏では、日本化(JAPANIFICATION)シナリオは中期的にみて依然有効であり、銀行と株式全体に大きな下押し圧力がかかっている一方、予想されるECBの政策措置を考慮すると、周辺国市場に大きなウェイトを維持しないことは難しい。財政政策措置という形でのゲームチェンジャーはいつでも浮上し得るが、今からリフレに照準を合わせ始めるには、そうした措置は今のところまだ遠すぎると弊社は考える。英国の複雑な政治により、ポンドが不安定な値動きを続けることは確実であろう。同通貨は2つのメインシナリオ(BREXITと総選挙)によって人質に取られているためである。

当面はその他新興市場よりも中国本土市場を選好: 新興市場諸国は引き続き成長見通し下方修正のプレッシャーに晒され、それが通貨から債券、株式まで全ての資産でリスクプレミアムの上昇を誘発しよう。新興アジア諸国の対中エクスポージャーにより、それらの国々は人民元相場(1ドル=7.50元に向かっている)に非常に影響を受けやすくなっている。なぜなら人民元はそれらの国々の貿易加重エクスポージャーの中で最も重要な通貨だからである。ゲームチェンジャーとしては米ドルの大幅下落や成長見通しの安定化が考えられるが、現時点ではそうしたシナリオが浮上するには早過ぎると思われる。その他新興市場よりも中国本土資産へのエクスポージャーを選好したい(上のセクションを参照)。

過去の翻訳レポートを弊社のリサーチサイト( https://insight.sgmarkets.com/#/page/japanese )に掲載しています。
また、原文の英語レポートもご覧いただけます。
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ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司