親から農地を継いだけど使い道が分からない…農家のご子息の方は自分では農地活用を行わないことから農地をもてあましている方も多いのではないだろうか。農地は通常の土地よりも固定資産税が安くすむとはいえ、農地を放置していたら税金だけかかってしまう。

そんな農地をどう活用したら良いかを今回は解説していくのだが、農地は通常の土地とは違う性質を持っているため「そもそも農地とは何か?」という基礎から農地活用の種類や増税対策といったところを紹介していく。

農地とは

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(画像=Aaron Amat / Shutterstock.com)

そもそも「農地」がどのような基準で定められているのかご存知な方は何人いるのだろうか。農地とは農地法第2条一項によって定義されており耕作に用いる土地を農地と呼ぶので耕作に用いていない場合は農地とみなされない。しかも最初に登記した際に耕作に用いるとしても現状耕作に用いていなければそれは農地とは認められないのだ。これを「現況主義」といい、農地の規定は厳しい。

では耕作とは一体どのような状況を指すのだろうか?耕作とは「田」や「畑」、「果樹園」といった形で管理されていれば耕作を行っているとみなされる。また上記のような何か作物を生産する目的でなくても家畜の放牧やえさのための採草放牧地というのも耕作をしていると認められる土地だ。

では現状余っている農地をどのように農地活用したらよいのだろうか?土地であれば簡単に土地活用を行う段階に入れるのだが農地の場合は農地を転用していいかどうかの規定が存在する。この農地転用の規定に引っかかる土地は農地活用がおこなえないため予め農地転用が可能な農地か確認をしておこう。

転用できる農地とできない農地の区分を知る

転用できる農地は転用できない農地以外、農地と同義だ。従って転用できない農地がどのようなものか確認していこう。

まず農地は5つの種類に分かれ、「農用地区域内農地」、「甲種農地」、「第一種農地」、「第二種農地」、「第三種農地」に分類される。この中でも農地転用できないのは「農用地区域内農地」と「甲種農地」、「第一種農地」だ。

「農用地区域内農地」とは農業振興地域整備計画とよばれるものにそって市町村内で農用地区域に定められている農地のことをいう。どのような農地が農用地区域に定められるのかというと、土壌がよく生産性が高い農地が市町村から指定されることが多い。せっかく作物をつくるのに最適な土地なので駐車場やアパートへ農地活用してはいけないといった形だ。

次に「甲種農地」を解説していく。「甲種農地」には「農業公共投資後8年以内の農地」と「集団農地かつ高性能農業機械を使用して営業できる農地」の二つの農地が含まれる。どちらも生産性が高いことから農地転用をしてはいけないという点では「農用地区域内農地」と同じだ。

農地転用できない最後の区分は「第一種農地」だ。「第一種農地」は「10㌶以上の集団農地」、「農業公共年対応農地」、「高い生産性を持つ農地」のことを指す。つまり公共の農地と生産性が高い農地は農地活用してはいけないという形だ。

通常は上記三つの「農用地区域内農地」と、「甲種農地」、「第一種農地」が農地転用禁止農地なのだが、「甲種農地」と「第一種農地」では例外的に農地転用を認める場合もある。ではどのような場合か端的にいうと「農業関連施設あるいは農業に関わっているなら農地転用を認める」といったものだ。

細かくみると「農業用施設」や「農業用加工施設」、「農業用販売施設」、「土地収用事業認定許可施設」、「地域農業振興施設」、「地方公共団体が計画した施設」といった具合だ。もう一つの農地転用不可能な農地でも転用してよいケースは「甲種農地」や「第一種農地」だったとしてもも立地が困難であると認められた場合において集落接続の住宅を建てることが可能だ。

以上の例外を除けば農地転用できない農地となっているのでまずは自分の保有している農地が農地転用禁止の部類に入っていないかどうかたしかめよう。では逆に農地転用が認められる農地はどのようなものなのだろうか?

農地転用が可能な農地は大きく分けて二つ。「第二種農地」と「第三種農地」だ。第二種農地は「農業公共投資の対象とはならない土地」もしくは「市街地としって発展するポテンシャルを秘めた土地」のことをいう。第三種農地は都市計画のもとに発展している土地だ。分類が複雑になるが農地転用ができるかどうかを知らないとそもそも農地活用ができないためしっかり確認をしよう。

放置している増税の対象になるかも!

通常の農地でも固定資産税がかかってしまうのだが耕作放棄地だと通常の固定資産税に更に加算されて税金がかかってしまう。平成29年度から適用となっているのだが、通常よりも税金がかかることを考慮したら農地活用を早めに検討した方が賢明だ。

遊休農地を農地中間管理機構(農地集積バンク)へ貸し出した場合は固定資産税が減額に

農地集積バンクは後述するが農地が余っている人と農地を活用したい人のマッチングサービスだ。通常の農地では固定資産税がかかってしまうのですが農地集積バンクを利用すると税金が減税を行うことができる。もし農地活用を行っていないのであれば農地集積バンクにだしてとりあえず減税を受ける手もありだ。

農地活用1.農地を貸す

どの様な農地を転用していいのか分かったところで今度は具体的に農地活用をどうおこなっていくのか事例をみていく。農地転用を行う際の事例としておおまかに区分を行うと「農地を貸す」、「農地を売る」、「農地をそのまま活用する」に分類が可能だ。

マンションやアパートなどの賃貸経営

マンションやアパートは土地活用の中でも一番オーソドックスなタイプだ。しかし農地活用の中でも難しい部類の一つになり「空室リスク」に悩まされる可能性が非常に高い。

運よく部屋が満室になってくれれば良いのだが空室リスクは誰にでもある問題なので他人事と考えるのではなく最初に対策を打っておくことが必要だ。また「空室リスク」のほかにも「初期投資が高い」という問題があるのでマンションやアパートの賃貸経営をやるのであれば必ず確認しなければいけない。

事業用地に

使用していない土地を自分が使用する事業に使うというのも一つの手だ。農地転用できないのであれば農業を、農地転用ができるのであれば自身が考える事業を手掛けよう。

太陽光発電

太陽光発電は農地活用を行うには「広大な土地を使用できる」という面では有用性が高い。しかし太陽光発電は日照の問題や初期費用が高いという問題点があるため安易に手をだしてしまうと大損となってしまったというケースもある。

駐車場

駐車場経営は農地がどのような形でも農地活用を行うことができるのが特徴だ。初期費用もアパートやマンションに比べて安く初心者向けといえる。しかしデメリットとしては節税効果を受けることが出来ないという点だ。従ってとりあえず駐車場にしてからアパートやマンションにという考えも良いが、収益性があまり見込めない場所に建ててしまうと苦労することになる。

農家や公共の貸農園にする

最後に紹介するのが農家や公共の貸農園にするという方法だ。公共の農園にするということもあり、他に農地や土地活用と比べると大きな収益を見込むことはできない。しかし地域間の交流や人と人とのつながりを再認識できるという面から「収益よりも人と関わりたい」という方にはおすすめの方法だ。

農地活用2.農地を売る

これまでは農地を他の収益性の高いものへ作り変えて貸す方向であったが、今度は農地を売る場合を考えていく。

農家に売却する

農家に売却する場合、売却相手が農業をしっかり行うことを確認しないといけない。もし売却相手が「農業をやっていない」となった際には農業委員会より罰則をもらう可能性があるのでしっかり確認してから土地や農地の売買を行おう。

農地活用3.農地をそのまま活用する

上述したが農地転用が不可能な農地も存在するため農地活用もしくは売却ができない場合もある。また事業への農地活用や農地の売買よりも農地のまま使いたいという方もいるだろう。ここでは農地のまま農地活用する方法を解説していく。

市民農園として活用

市民農園をご存知だろうか。市民農園とは都心の方やサラリーマンの方が休日を使って農業を体験できる場だ。子供の農業体験の場としても活用され、レジャー農園やふれあい農園といった形でも親しまれている。うまく経営することができれば大きな収益を見込めることはもちろん、様々な人脈を形成していくことができるだろう。

農地集積バンクの活用

農地集積バンクとは農地を活用したいけどうまく活用できないといった方に農地中間管理機構が農地活用が出来る人とマッチングをするサービスだ。公的機関が間に入るという安心感と農地活用を意欲的に行える人に貸出ができるというメリットがある。

農地の有効活用の検討を

今回は農地の活用方法にはどのようなものがあるのか?そもそも農地とは何か?といった部分を解説してきた。農地は他の土地とは違い公共性が高い農地や生産性が高い農地は農地活用が不可能なことが分かったと思う。

そのため農地活用をおこないたいと考えたらまずしなければいけないのが「農地転用」できるかどうか確認することだ。農地転用できるのであればあとは土地活用と同じように不動産会社に相談を行うか、自分が改修をおこないたい方法の専門家に相談するのがベストだ。

一方農地転用が出来ない場合は農地として活用していく他ない。手段は限られるものの固定資産税を減額する農地集積バンクといったものもあるので放置するのであればしっかり農地活用をおこなったほうがお得だ。

通常の土地よりも農地は性質上面倒かもしれないが農地は通常の土地以上の価値を秘めている場合もあるので、農地活用をおこなうことで土地を有効活用してみてはいかがだろうか。