シンカー: 世界経済の成長見通しは引続き悪化しており、弊社の2019年GDP予測も前回GEO(世界経済見通し)に比べて下方修正した。しかし、下方修正幅は2019年予測が0.1pp、2020年予測に変更は無く、全体としては今回も小さかった。これは、他社・機関の大半の予測(過去1年半程度、小幅にしか下方修正していない)と完全に一致している。こうした背景から、世界の債券市場が激変していることは行き過ぎとみられ、今回のGEOのタイトルも「行き過ぎた悲観論( “Pessimism overdone”)」とした。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

グローバル・レポートの要約

●SG世界経済見通し(9/17):行き過ぎた悲観論

SGアンカーテーマ

世界経済の成長見通しは引続き悪化しており、弊社の2019年GDP予測も前回GEO(世界経済見通し)に比べて下方修正した。しかし、下方修正幅は2019年予測が0.1pp、2020年予測に変更は無く、全体としては今回も小さかった。これは、他社・機関の大半の予測(過去1年半程度、小幅にしか下方修正していない)と完全に一致している。こうした背景から、世界の債券市場が激変していることは行き過ぎとみられ、今回のGEOのタイトルも「行き過ぎた悲観論( “Pessimism overdone”)」とした。

グローバル経済の実態、今の所はセンチメントよりも良好

世界の債券市場から判断すると、経済アルマゲドン(またはそれに近い恐ろしいシナリオ)が近いとみられる。しかし、これまでのグローバルGDP成長率予測の下方修正は、2019年、2020年とも依然として非常に小幅である(国、地域別に大きな差は生じているが)。

FRBの取組みにもかかわらず、米国リセッションが近づいている

弊社は米国経済のリセッション入りを判断するデータとして、企業収益率を重視しているが、これが劇的に変化(低下)している。このため「米国が2020年中頃に比較的緩やかで短いリセッションを迎える」という弊社の見方が固まっている。ドイツも、リセッションはほぼ不可避とみられる。ただ弊社は、ユーロ圏は(特に2020年は経済成長が減速するが)リセッションを回避できると強く考えている。アジア太平洋地域でも、景気減速が続くとみられる。

世界のほぼ全ての国で、財政政策が重荷を負う必要がある

いまのところ大半の国では、主に金融政策が、弱まりつつある景気を刺激する役割を果たしてきた。だがその大部分で、策を凝らす余地が(少なくとも金利という意味では)非常に小さくなっている。このため、需要の刺激が必要になれば、財政政策を推し進めることが必要になるだろう。また先進国、新興国の多くで財政政策当局は、(ドイツでさえも)多少の(財政を通じた)景気刺激策が必要だと受入れている(または受入れているようにみえる)。だが現時点では、そうした(財政を通じた)刺激策は控えめとみられる。

インフレはGDP成長率に比べて底固くなる

弊社のインフレ予測はグローバルレベルでは過去3カ月変わっておらず、予測対象期間でほとんど変化しないと見込んでいる。インフレ率は先進国では依然として抑制されており、2%よりも1.5%に近くなっている。原油価格上昇が弱くなると予測されており、こうした場合通常はインフレ率が低下する。ただし他に想定の変化があり下方圧力を相殺してきた。それは、米国と中国の輸入関税引上げ、米国のインフレファンダメンタルズが驚くほど変化していることだ。

中央銀行は限られた弾薬を早く発射する

先進国の中央銀行は総じて同じ問題を抱えている。現在の政策金利水準が絶対的に低く、さきの世界金融危機よりも前に「正常」と考えられていた水準からは遠いことだ。金融政策の余地が限られる中で、中央銀行にとって長期的に「弾薬を残す」と「予防的に動く」のどちらが良いのか(あるいはいつ実行するのか)議論されているが、全体的にみると後者のアプローチに明らかに傾いている。今までのところ、利下げはアジア太平洋地域に集中しているが、他地域の中央銀行(特に欧州、米国)も追随すると弊社は見込んでいる。

米国と中国の貿易戦争が本格化、世界貿易は低調に 最近の数週間(または数カ月)、米国と中国の貿易紛争がさらにエスカレートしており、そのペースも加速している。今後数カ月での紛争解決は非常に難しいとみられる。一方、世界貿易はリセッションの域に入った。また米国の通商政策で目標が設定された証拠も見当たらない。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司