不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

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(画像=liza54500/Shutterstock)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

賃料を増額したいけど、借主の合意が得られなかった…

ヴェリタス・インベストメント
(画像=ヴェリタス・インベストメント)

東京都在住 井上さん(49歳、女性)からのご相談

10年前に父親から相続して、東京都内に土地と、その土地に建つ賃貸用のアパートを所有しています。アパートの管理は父の代から賃貸管理業者は入れず、今は私自身でやっています。また、アパートの入居者は長年住んでいる方が多く、父親の代から借り続けてくれている人もいます。

最近、オリンピックがあるせいか固定資産税や地価が上がっているようで、先日、近所の不動産屋さんと雑談したときに、私の所有物件の周辺の家賃相場も上昇傾向にあると聞きました。考えてみると、父親からも家賃を上げたという話を聞いたことがありませんし、私が父親から相続して約10年が経ちますが、一度も家賃の値上げをしたことはありません。

そこで、賃料の増額についてアパートの借主と話し合いをしたのですが、増額に応じてくれない借主の方がいます。どうしたらいいでしょうか?

よくあるトラブル(16)「賃料の増額」

これで解決!

賃料の値上げについては、あくまでも契約の内容なので貸主だからといって一方的に変更はできず、借主との合意が必要です。そのため、家賃を上げたい場合には値上げの理由を示すなどして、借主の方とよく話をして納得してもらい、合意を目指すことが第一です。

しかし、借主との協議が不調に終わった場合、賃料を増額する手段としてはまず裁判所に調停の申立てをして、調停で話がつかなかったときは裁判(訴訟)をせざるを得ません。もっとも、調停はまだしも訴訟になったときには、弁護士に依頼をしなければならないでしょうし、増額の理由を裏付ける資料として不動産鑑定士の鑑定書を提出しなければなりません。そうすると、最終的には弁護士費用や鑑定費用で100万円近い費用がかかります。そのため、上がる金額にもよりますが、賃料が上がったとしても手続にかかる費用を踏まえると、費用対効果が合わないこともあります。そこで、話し合いがうまくいかなかったときにどこまでの手続で進めるかは、慎重に判断しなければならないと思います。

今回の相談のように、賃料の増額は借主との協議もなかなかの困難が予想されますし、そもそも面倒で話し合いがうまくいかないとコスト的にも見合わないことになります。特に、ご相談者の場合は賃貸管理もご自身でされているということで、大家さん自ら借主と話をしなければならないので、より精神的にも時間的にも負担が大きいでしょう。

これらを解決する方法として、賃貸管理業務を不動産業者に委託して、増額の協議などを管理会社に任せるというのも1つだと思います。また、もしかすると、建物が古くなり家賃の減額を借主から要求されることがあるかもしれません。そこまで考えると、賃料を上げたり下げたりという面倒から解放されると思います。