「メタ思考」はトレーニングで鍛えられる!
メタという言葉には、あまり馴染みがないかもしれない。文字通りの意味は、あるものを一つ上の視点から客観的に見てみるということだ。例えば、「もう一人の自分の視点で自分を客観視してみる」ことが重要だと言われることがある。このように自分自身を「幽体離脱して上から見る」ことは「メタ認知」と呼ばれ、視野を広げて自分を客観視するために必須の姿勢であると言われている。ビジネスコンサルタントの細谷功氏は、自分自身に限らず、様々な物事を「一つ上の視点から」考えてみることが重要だと指摘する。なぜ「一つ上のレベルから考える」という「メタ思考」が必要なのか?
※本稿は、細谷功著『メタ思考トレーニング』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
「自分が気づいていない領域」があることに気づこう
メタ思考には、大きく三つの意味があります。
一つ目は、私たちが成長するための「気づき」を得られることです。
特に知的な成長において、「気づき」の重要性はいくら強調しても強調しすぎることはありません。まずは自分がいかに知らないか、自分がいかに気づいていないかを認識することが、知的な成長のための第一歩です。逆に言えば、気づいていない人にはいくら教育しようが何百回言って聞かせようが、それらはすべて「時間の無駄」です。
また、「気づく」というのはあくまでも「自動詞」であって、他人から強制される「他動詞」ではありません。「メタ」の視点を持つことではじめてその気づきのスイッチが入ります。
子供の世界でも、「何がわからないかわかっている」子供たちは学習の成長が早いと言われています。まさに「気づき」=メタの視点を持つことが、成長していくための重要な鍵なのです。
続いて二つ目は、「思い込みや思考の癖から脱する」ことにあります。
まず「思い込み」とは、「自分(の考え方)が正しくて当たり前だ」と、露ほども疑っていない状態のことです。一つ目の気づきにもつながることですが、自らの視野を広げ、成長するためには、「自分は違っているかもしれない」と常に自分自身の価値観を疑ってみることは重要です。
一方、「思考の癖」というのは、私たちが無意識に持っている「視野の狭さ」、あるいは思考の盲点と言ってもよいかと思います。高みから自分を客観的に眺めることによって、その視野の狭さを自覚することができます。「視野の狭さ」の最大の落とし穴は、視野の狭さに気づいていないことだからです。
そして最後の三つ目は、上記二つで得られた気づきや発想の広がりを基にした創造的な発想ができるということです。