睡眠時間は削らない! 朝1時間の勉強が効果的
計画というものは、立てても、その通りに進まないものです。ですから、計画通りに進んでいないからといって、焦ったり、「もうダメだ!」と思ったりする必要はありません。全体の50%進んでいなくてはならないのに30%しか進んでいないとしても、これから残りの70%をどう進めていけばいいのか、計画を立て直せばいいだけです。
私の場合、追い込み期に余裕を持たせるため、キツめに計画を立てていたので、計画より早く勉強が進んだことはありませんでした。
そして、遅れを取り戻すため、繁忙期以外はなるべく残業をしませんでした。仕事の手を抜いていたのではなく、効率を上げたということです。周りの人にも、「効率を上げて仕事をするので、残業はしません」と伝えていました。
平日は、終業時刻の17時15分に会社を出て電車に乗り、自宅の近所にある公民館で2~3時間ほど勉強してから帰宅していました。帰宅してからは、勉強はしません。早寝早起きをし、「朝1時間」勉強するほうが、効率が良かったからです。
朝は、前日にインプットしたことをアウトプットする勉強をしていました。脳には、寝ることで、得た情報を整理する働きがあるからです。
睡眠時間を削って勉強する人がいますが、それでは仕事も勉強も効率的に進めることができません。私の場合、繁忙期を除き、睡眠時間を削って勉強することはありませんでした。通勤に電車で片道1時間ちょっとかかったのですが、幸い、座ることができたので、そこでも勉強していました。眠たいときは通勤時間の半分くらいは眠って、仕事も勉強も常にすっきりした状態で取り組めるようにしていました。
また、基本的に、日曜日は勉強をしませんでした。したとしても午前中だけ。家族との時間を持ちたかったからです。
「合格しなかったら」と考えるのは時間のムダ
「仕事が忙しいから勉強できない」と言い訳をしていると、合格することはできません。先ほども述べたように、仕事の効率を上げて、時間を作るしかないのです。
「今年は勉強する時間がなかったから、来年の練習のために受ける」と言う人もいますが、意味のないことです。試験を受けるのなら、時間がなくても、合格することを考えて勉強すべき。「今年は時間がない」と言っていると、来年も同じことを繰り返してしまうものです。
「落ちたけど惜しかったから、来年は大丈夫だろう」と思うのも危険です。模試でA判定を取り続けても、5年間、落ち続けた人を私は知っています。安心せず、試験日前日まで、勉強に集中すべきです。
途中で諦めてしまっているのに試験だけは受ける人も多いですし、試験中に諦める人も結構います。特に「上位○割が合格」という相対評価の試験の場合、問題が難しければ他の受験者も苦しんでいるはずですから、諦めてしまうのはもったいない。できる限りのことをすべきです。
時間がなくなりそうなら、「この問題は解けそうにないから」と、早々に捨ててもかまいません。ムダな時間を排し、他のところに時間をかけて、点数を稼げばいいのです。
合格率が10%しかない試験といっても、これは最後まで頑張れなかった人も含めた数字です。できる限りのことをした人だけの合格率は、もっと高いはずです。
「こんなに時間も労力もかけているのに、合格しなかったらどうしよう」などと考えたことはありません。働きながらの勉強ですから、合格するまで時間がかかるかもしれないとは思いましたが、「合格しなかったら」と考えるのは意味がないことです。そんなことを考える暇があるのなら、計画を立て直したり、もっと勉強したりするほうがいいのは、言うまでもありません。とにかく、諦めないことが大事なのです。
《取材・構成:桃山 透》
《『THE21』2019年8月号より》
山本憲明(やまもと・のりあき)
山本憲明税理士事務所代表/税理士
1970年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。大学卒業後、横河電機〔株〕に入社。社会人6年目から知識ゼロの状態で、働きながら税理士試験の勉強を始める。社会人の合格平均年数が6~7年と言われる難関試験にわずか4年で合格(税理士登録に必要な5科目すべてに合格)。気象予報士、中小企業診断士にも、1年という短期間で合格。著書に『試験に「合格する人」と「落ちる人」の習慣』(明日香出版社)などがある。(『THE21オンライン』2019年09月05日 公開)
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