結果の概要:失業率は予想外に前月から低下も、雇用者数は前月、市場予想を下回る

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10月4日、米国労働省(BLS)は9月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+13.6万人の増加(1)(前月改定値:+16.8万人)と、+13.0万人から上方修正された前月を下回り、市場予想の+14.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(後掲図表2参照)。

失業率は3.5%(前月:3.7%、市場予想:3.7%)とこちらは前月から横這いとの市場予想に反し、前月から▲0.2%ポイントの低下となった(後継図表6参照)。これは1969年12月(3.5%)以来の水準である。労働参加率(2)は63.2%(前月:63.2%、市場予想:63.2%)と前月、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。

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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
(2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

結果の評価:失業率は低下も、雇用者数、賃金の伸びが鈍化するなどまちまちの結果

9月の雇用増加数は13万人台に留まったものの、過去2ヵ月分が+4.5万人上方修正されたこともあって、過去3ヵ月の月間平均雇用増加数では15.7万人増と19年通年の16.1万人増からの低下は小幅となった。また、19年通年の雇用増加ペースは、概ね当研究所の予想(10万人台半ばから後半)に沿った水準を維持している。なお、9月は国勢調査に絡む臨時政府職員が+0.1万人と8月(+2.5万人)から大幅に減少しており、特殊要因による底上げはないようだ。

家計調査は、失業者数の減少もあって失業率が4ヵ月ぶりに低下し、50年ぶりの水準となるなど、引き続き労働需給がタイトな状況を示した。

一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が横這い(前月:+0.4%、市場予想:+0.2%)、前年同月比が+2.9%(前月:+3.1%、市場予想:+3.2%)と、前月比、前年同月比ともに前月、市場予想を下回った。とくに、前年同月比では18年7月(同+2.8%)以来となる2%台に低下した。(図表1)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

このようにみると、9月は失業率が50年ぶりの水準に低下したものの、雇用者数や賃金の伸びが鈍化するなど、まちまちの結果であったと言える。

一方、10月下旬にFOMC会合が予定されているが、9月の結果はまちまちであったため、追加利下げにも、政策金利据え置き判断にも影響を与えるものではないとみられる。

事業所調査の詳細:民間サービス部門が3ヵ月連続で伸びが鈍化

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+10.9万人(前月:+12.1万人)と前月から伸びが鈍化した(図表2)。前月対比で雇用の伸びが鈍化するのはこれで3ヵ月連続となった。

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民間サービス部門の中では、娯楽・宿泊が前月比+2.1万人(前月:+0.9万人)となったほか、医療サービスも+3.9万人(+3.7万人)と小幅ながら前月から伸びが加速した。一方、専門・サービスが+3.4万人(前月:+4.3万人)と前月から伸びが鈍化したほか、小売業が▲1.1万人(前月:▲0.6万人)と5ヵ月連続の減少となった。

財生産部門は前月比+0.5万人(前月:+0.1万人)と、こちらは前月から小幅ながら伸びが加速した。製造業が▲0.2万人(前月:+0.2万人)と19年3月(▲0.3万人)以来、6ヵ月ぶりの減少となったものの、建設業が+0.7万人(前月:+0.4万人)と前月から伸びが加速して全体を押上げた。

政府部門は、前月比+2.2万人(前月:+4.6万人)と前月から伸びが鈍化した。内訳をみると、州・地方政府が+2.4万人(前月:+1.8万人)と前月から伸びが加速したものの、連邦政府が▲0.2万人(前月:+2.8万人)と前月からマイナスに転じ、足を引っ張った。 前月(8月)と前々月(7月)の雇用増加数(改定値)は、前月が+16.8万人(改定前:+13.0万人)と+3.8万人上方修正されたほか、前々月が+16.6万人(改定前:+15.9万人)と、こちらも+0.7万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+4.5万人の上方修正となった(図表3)。

なお、BLSの公表に先立って10月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+13.5万人(前月改定値:+15.7万人、市場予想:+14.0万人)と、+19.5万人から大幅に下方修正された前月改定値を下回ったほか、市場予想も下回った。前月から伸びが鈍化した動きは雇用統計と整合的である。一方、過去3ヵ月の月間雇用増加ペースは14.5万人増と19年通年の16.5万人増に比べて、雇用統計よりも低下幅が大きくなっている。

9月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が28.09ドル(前月:28.10ドル)となり、前月から▲1セント減少した。前月比で減少するのは17年10月(▲4セント)以来である。週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は966.30ドル(前月:966.64ドル)と、2ヵ月ぶりに前月から減少した(図表4)。

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家計調査の詳細:労働力人口は5ヵ月連続増加も労働参加率は前月から横這い

家計調査のうち、9月の労働力人口は前月対比で+11.7万人(前月:+57.1万人)と5ヵ月連続の増加となった。内訳を見ると、失業者数が▲27.5万人(前月:▲1.9万人)と2ヵ月連続の減少となったものの、就業者数が+39.1万人(前月:+59.0万人)増加し、全体を押上げた。非労働力人口は+8.9万人(前月:▲36.4万人)と、こちらは5ヵ月ぶりの増加となり、職探しのために労働市場に再参入する人数が減少したことを示した。

これらの結果、労働参加率は63.2%と前月から横這いとなった(図表5)。また、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率も9月は82.6%(前月:82.6%)と前月から横這いとなった。男女の内訳は男性が89.1%(前月:89.0%)と前月から+0.1%ポイント上昇した一方、女性が76.2%(前月:76.3%)と、こちらは▲0.1%ポイントの低下となった。

失業率は、前月から▲0.2%ポイント低下したが、9月は労働参加率こそ横這いとなったものの、労働力人口が増加しているほか、失業者数の減少が大きくなっていることから、素直に労働需給がタイトであることを示す結果と言えよう。

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9月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は131.4万人(前月:124.3万人)と前月から+7.1万人増加した。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも22.7%(前月:20.6%)と、前月から+2.1%ポイント上昇した(図表7)。一方、平均失業期間は22.0週(前月:22.1週)とこちらは前月から▲0.1週の短期化となった。

最後に、周辺労働力人口(129.9万人)(3)や、経済的理由によるパートタイマー(435.0万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(4)をみると、9月は6.9%(前月:7.2%)と前月から▲0.3%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.4%ポイント(前月:3.5%ポイント)と、前月から▲0.1%ポイント縮小した。

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(3)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
(4)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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