近年不動産投資が注目されているが、その一つにREITがある。一般的な不動産投資とREITは、何が違うのだろうか。今回はそれぞれの特徴や、メリット・デメリットを解説する。投資先を選ぶ際の参考にしてほしい。

REITと不動産投資の違い

不動産,投資信託
(画像=PIXTA)

そもそも不動産投資とは、建物や土地を購入し、それを貸して家賃収入を得たり、購入時よりも高い金額で売却したりすることで利益を得る投資だ。実際にマンションやアパートを購入するため、不動産が資産として残る。所有物件の管理は管理会社に任せることもできるが、基本的には投資家が責任を持つことになる。

それに対してREITは、不動産投資を行う投資会社が発行する証券(REIT)に投資するものだ。不動産投資会社は、投資家から募った資金に借入金を足して不動産を購入し、その物件で得た家賃収入を投資家に還元する。

REITは不動産投資信託ともいい、投資信託と同じように証券を購入して、運用益と売却益を得る投資だ。投資する不動産の選定や管理運用は投資会社が行うため、投資家は口を出すことができない。また証券であるため、購入する場合は証券会社を通じて取引を行う。

つまりREITと不動産投資の違いは、投資対象ということになる。

  REIT 不動産投資
投資方法 不動産会社が発行する証券を購入する 賃貸物件や土地などの不動産を実際に購入する
必要となる資金 10万円前後から 1,000万円前後から
購入方法 証券会社を通じて購入する 不動産仲介業者を通じて所有者から購入する
流動性 高い 低い
節税効果 なし あり

REITのメリット・デメリット

REITのメリットとデメリットについて解説していこう。

REITのメリット

REITを選ぶメリットは、以下のとおりだ。

・少額から投資できる
・利回りが良い
・不動産投資に比べると安全性が高い
・物件選びや運用をプロに任せられる
・不動産を管理する手間がない
・不動産投資に比べて流動性が高い
・売却益が期待できる

大きなメリットは、資金が少額でも投資できることだ。不動産投資は、株やFXなど他の投資に比べて多額の資金を必要とする。都心であれば、ワンルームでも最低1,000万円は必要だ。アパート一棟となると、築年数が古くても3,000万円以上はかかる。

ローンを利用して資金を借り入れることもできるが、あまりに高額なのでためらいを感じる投資家も多いだろう。物件に借り手がつかないと、ローンの返済が滞ってしまうリスクもある。

それに対して、REITは10万円程度とかなり少額で購入できる。自己資金で賄えるため、不動産投資に比べると気軽に始めることができる。

利回りが良いこともREITの魅力だ。不動産証券協会が発表しているマーケット概況によると、REITの利回りは4%前後。東証一部の株式の利回り(2.5%程度)、長期金利の利回り(0%)と比べるとかなり高い。REITを100万円分所有していれば、利回り4%の場合年間4万円の分配金を受け取れることになる。

物件選びや管理をプロに任せられることもメリットだ。不動産投資では、物件選びが非常に重要なポイントになる。収益を得るには借り手がつく需要のある物件を、なるべく安く購入しなければならない。購入後に借り手がついても、家賃の回収や物件の修繕・維持などの手間がかかる。

一方REITは、不動産投資会社が不動産の選定や管理運用を行う。REITを購入した後、投資家は運用益を受け取るだけだ。

流動性が不動産投資よりも高く、売却益が見込めるのもREITのメリットだ。不動産は資産の中でも特に流動性が低く、売却して現金化するまで時間と手間がかかる。建物は新築時が最も高く、時間の経過とともに価値が下がるため、購入時よりも売却時のほうが価格が低くなることが多い。

REITは証券であり、証券会社を通じて売買できるため、流動性は極めて高い。ネット証券を利用すれば手数料も安く、価格が上がっているときに売却すれば売却益を得られる。

REITのデメリット

REITのデメリットは、以下のとおりだ。

・実物資産が残らない
・手数料がかかる
・上場廃止リスク
・運用会社の倒産リスク
・レバレッジがあまりかけられない
・節税効果がない

不動産投資では土地や建物が実物資産として残るが、REITはあくまで証券であり、不動産を実際に所有しているのは投資会社なので、投資家には実物資産が残らない。また、不動産投資では物件を自分の目で選び、リフォームや管理を行うことで、より多くの収益を得ることができるが、REITではすべてをプロに任せることになるため、自分では何もできない。

REITは証券であり、運用はプロが行うため、運用手数料を不動産投資会社に支払う必要がある。その分、自分で不動産投資をするよりも利回りは低くなりやすい。また上場廃止になると価値が大幅に減ったり、売却できなくなったりする。

同様に運用会社が倒産するとREITの価値が下がり、利益が出ないばかりか損失を被ることもある。不動産投資の場合は、利回りが下がっても家賃を下げたりリフォームをしたりすれば、ある程度の価値は維持できる。

借り手がつかなければ売却することもできるが、REITは運用会社が倒産したり、上場廃止になっても投資家は何もできない。不動産の所有権もないため、REIT証券は紙くず同然になってしまうのだ。

レバレッジがあまりかけられないこともデメリットと言えるだろう。不動産投資ではローンを借り入れ、自己資金にレバレッジをかけた投資ができる。REITでもレバレッジはかけられるが、最大で3倍ほどだ。

不動産投資では、事業計画が優れていれば数千万円から数億円の事業資金を借り入れて投資できるローンの返済ができなくなるリスクはあるものの、大きな利益を生む可能性がある。

節税効果がないこともREITのデメリットと言える。不動産投資では、建物の価格の一部を数年にわたり減価償却費として経費計上できる。損金は他の収入と相殺できるため、給与所得など他の所得から差し引き、節税することができる。しかしREITは証券なので、この節税方法は使えない。

REITが向いている人とは

REITが向いている人はズバリ、若い人だ。

不動産投資は物件選びや管理など、不動産に関する知識が必要になるため、初心者が最初から収益性の高い物件を選ぶのは難しい。また必要となる資金も多く、金融機関からローンを借り入れるにも、事業計画を立てるなどのハードルがある。年齢が若く勤務年数が少ない場合は、審査に落ちることもある。

REITは投資する不動産の選定や運用、管理をすべてプロが行ってくれる。REITの銘柄を選ぶためには不動産に関する知識がある程度必要だが、直接不動産を購入するよりはハードルが低い。

多額の資金を必要とする不動産投資とは違い、10万円程度から購入できるため、ローンを借り入れる必要もない。流動性が高く、すぐに現金化できるため、他の投資に乗り換えやすいのもメリットだ。給与があまり高くない場合は、不動産投資の節税効果が小さいので、REITのほうがメリットが大きいだろう。

不動産投資に興味があるが、まだ年収があまり高くない若年層の個人投資家には、不動産投資よりもREITをおすすめしたい。

REITを始めるための手順

1 証券会社で口座を開設
2 口座に入金にする
3 REITを選ぶ
4 REITを購入する

REITを始めるには、まずREITを取り扱っている証券会社で口座を開設する必要がある。株式の取引ができる証券会社であれば、どこを選んでも問題ない。ただし会社によって手数料や強みが異なるため、あらかじめ調べてから開設するといいだろう。総合証券会社よりもネット証券のほうが手数料が安いため、個人投資家にはおすすめだ。

口座を開設したら口座に入金し、購入するREIT銘柄を探す。どの銘柄いいかは投資スタイルにもよるが、銘柄ごとに安定性や期待できるリターンなどが異なるため、自分に合う銘柄を選んでほしい。

REITと不動産投資の利点を見極めて最適な投資を

不動産投資は利回りが良く、手元に現物資産が残るため人気がある。ローンを利用することで、資金が少ない個人投資家でも参入できる。また節税効果が高いため、ある程度収入が高い個人投資家にとってはメリットが大きい。

しかし、多額の資金をローンで賄うことに不安を感じる投資家も多い。空室が続き想定していた利回りを実現できなければ、ローンの返済が滞る可能性もある。不動産に関する深い知識も必要で、成功へのハードルは高い。

その点、REITは10万円前後で購入できるため、投資を始めたばかりの個人投資家でも気軽にスタートできる。物件選びや運用などはプロが行うため、銘柄さえ選ぶことができれば、不動産に関する知識もそれほど必要ない。利回りが株よりも高いことも魅力だ。

REITと不動産投資、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解して、自分に合う投資を始めてほしい。