「最後の未開拓地」として宇宙が注目を集めています。米金融大手バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが発表したレポートによれば、宇宙に関連した産業の市場規模は2045年には2兆7,000億ドルと2016年の6倍に達するとみられています。この20年の間に欧米では宇宙船などを手掛ける民間企業が次々に創業しています。そうした中、米航空宇宙局(NASA)も月面探査などの目標達成に向けて民間企業の活用を進める考えを明らかにしています。

ZOZO創業の前澤氏がスペースXのロケットで月周回旅行へ

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(画像=iurii/Shutterstock.com)

電気自動車(EV)メーカー「テスラ」の最高経営責任者(CEO)を務めるイーロン・マスク氏が率いる米宇宙企業「スペースX」の名前を聞いたことがあるかもしれません。スペースXは2018年、同社が2023年に予定している月周回旅行について、ZOZOの前社長、前澤友作氏が初の個人客に選ばれたと発表しました。スペースXは宇宙ビジネスで先頭を走る企業の一つです。

2019年4月には大型ロケット「ファルコンヘビー」の商業打ち上げを成功させました。ファルコンヘビーは現在運用されているロケット(打ち上げ機)のなかでも最大級の推進力を誇ります。また、その力強さだけではなく、打ち上げに使ったブースターの再利用を進めることでコストの削減も狙っています。4月の打ち上げでも、切り離されたブースター3基のうち、2基が陸上に、残りの1基は海上のプラットフォームに無事に着陸しました。

もちろん、ロケット打ち上げを進めている民間企業はスペースXだけではありません。アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏の「ブルーオリジン」もロケットや月着陸船の開発を進めています。ベゾス氏は2019年5月、月着陸船「ブルームーン」を発表した際、「今こそ、月に戻るとき」と宣言しました。ベゾス氏によれば、数年以内に月着陸船によって月面に物資を運ぶことができるようになる見通しで、最終的には人類を月に送り込むことを目指しています。

ライバル企業も宇宙を目指す

ロケットは地上から打ち上げるだけとは限りません。米マイクロソフトの共同創業者だった故ポール・アレン氏が創業した「ストラトローンチ・システムズ」は、人工衛星を搭載したロケットを空中から発射することを目指しています。同社はこの目標に向かって、世界最大級の航空機の開発を進めています。

英国の実業家リチャード・ブランソン氏の「ヴァージン・オービット」も空中からロケットを打ち上げるための航空機の開発に取り組んでいます。

また、英国の「リアクション・エンジンズ」は航空機にも宇宙船にも利用できるエンジン「SABRE」の開発を進めています。このエンジンを搭載した機体は大気中でマッハ5.4に加速し、さらに宇宙空間を飛行するための「ロケットモード」ではマッハ25を出せるといいます。離着陸を通常の飛行機のように行うことでコストの大幅な削減を目指しています。

米政権の有人月面着陸実現が商機か

こうした宇宙船や人工衛星の打ち上げは、以前はNASAなど国の機関が一手に引き受けていました。しかし、そのNASAも最近は国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送などを民間企業に委託するようになっています。

トランプ米政権は2019年3月、5年以内に有人での月面着陸を行うとの方針を明らかにしました。これまでのNASAの計画では有人による月面着陸は2028年を予定していましたが、それを前倒ししたのです。スケジュールが前倒しされた背景には、中国が2019年1月に無人探査機「嫦娥4号(じょうが4号)」を月の裏側に着陸させ、月の裏側の画像を送信することに成功したことが影響しているとの見方も出ています。

宇宙開発で中国との競争が激しくなるなか、米政府は当然民間企業の力を借りることも視野に入れているでしょう。そうなればますます宇宙関連市場への投資が進み、経済規模の拡大にもつながるはずです。(提供:JPRIME


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