ロシア企業,クルディスタン,離脱
(画像=ded pixto/Shutterstock.com)

去る17日(アンカラ時間)、トルコのエルドアン大統領はペンス米副大統領と首都アンカラで会談し、シリア北部におけるトルコ軍の行動を120時間停止することに合意した。トルコによるクルド人への攻撃を停止させるべく米国が動いたというわけだ。米国はイスラム系武装集団「イスラム国(IS)」への対抗勢力としてクルド人を(軍事)支援してきた。これで中東が平和になると考えるべきだろうか。

(図表1 シリアに展開する各勢力)

シリアに展開する各勢力
(出典:New York Times)

無論、先月(9月)14日(リヤド時間)にサウジアラビアにある石油関連施設が攻撃を受けたことが象徴するように、中東には火種はいくらでもある。そのために米トルコ間の今回の合意程度で中東が平和になるとは考えづらいと読者は想うかもしれない。とはいえ、今月末には、中東和平プランを主導してきたクシュナー米大統領上級顧問がイスラエルやサウジアラビアを訪問し、同プランを改めて議論することとなっているという。

またそもそもトルコ軍がクルド勢力への攻撃を開始したのは、トランプ米大統領が米軍のシリアからの撤退を指示したからだと言われている。しかしその代わりにロシア軍がシリアへ更に展開しているとの情報もある。中東は和平に向かっているのだろうか?

これに対する筆者の解答は「No」である。なぜならばロシア企業がクルディスタンから撤退するからである。具体的にはロシアの国営石油企業であるロスネフチがシリア国境付近のクルディスタン地域における石油開発事業を停止するのだという。上掲した図表1を見れば明らかなように、クルディスタン地域付近にもロシア軍が展開しているのに、である。不自然であると言わざるを得ない。

またサウジアラムコ社についても突如上場計画の発表を延期する旨“喧伝”されている。その理由として先般の攻撃による収益への影響を改めて盛り込みたいとのことである。しかし、なぜこのタイミングなのか、一言でいえば「解せない」のである。サウジアラムコ社、サウジアラビアにとってみれば原油価格の上昇、それに伴ってアラムコ社のバリュエーション(企業価値)が上昇するのが望ましいことは言うまでもない。

これらから推察できるのは、このシリア北部での騒乱がますます深刻化する可能性があるということだ。そしてその結果、中東広域にまで拡大するリスクをも留意すべきなのだ。米軍の撤退でイスラエルが戦火に巻き込まれる可能性が“喧伝”されている。ネタニヤフ首相による連立依頼に対して政党「青と白」のガンツ代表が拒否を示しており、現在のイスラエルは内政がガタガタになっているのである。他方で、去る9日、東ドイツのハレでシナゴーグが襲撃された。イスラエルをも巻き込む形で戦闘が生じ得る可能性にも留意すべきなのである。原油マーケットと天然ガス・マーケットへのインパクトをぜひ留意すべきである。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。