先週上旬(21日)、我が国において長期金利が上昇する可能性が“喧伝”された。
今月初頭(10月1日)に長期金利が上昇して以来、21日にもそのときと同水準にまで金利が上昇した。また欧州においてはマーケットで流通する国債が不足しているために欧州中央銀行(ECB)による緩和がこれ以上効力を発揮しない可能性が“喧伝”されている。
他方で、グローバル規模でさまざまな主体が“デフォルト(国家債務不履行)”の可能性を取り沙汰されている。その筆頭がアルゼンチンである。週末(27日(ブエノスアイレス時間))に大統領選挙を迎えるが、それに先立って既に金融的な不安定化が “喧伝”されている。また意外な主体も債務不履行の危機に至っている。たとえば国連(UN)である。国連が今月(10月)末にも運転資金がショートし、11月にも職員の給与が支払えない可能性をグテレス国連事務総長が警告しているのだ。
それだけではない。自身は否定しているものの、カトリックの総本山であるヴァチカンもまた、一連のスキャンダルを受けて寄付金の減額が進んで運転資金が枯渇しつつあるという内部文書がリークされているのだという。
これらをいずれも個別事象として理解すべきなのか。アルゼンチンは元来より信用リスクの低い国家であり、マクリ政権が経済拡大を行った反動としてこうなったのだと解釈し終わりにすべきなのか。また国連(UN)が資金不足なのは分担金を諸国が支払わないのが原因であると言われているが、では分担金の強制徴収にでも至るというのか。
筆者はそうは思わない。まずヴァチカンについてだが、リークを行った筆者が明らかにしたように、イタリアから得た教皇領に対する賠償金を元手に欧州中に投資してきた。今は減ったとはいえこれまで寄付金による収入もあったのであり、グローバル・マーケットでも巨大な投資ファンドであったのだ。無論、有価証券といった形で所有している資産が流動性を持つとは必ずしも言えないため、本当に運転資金が無い可能性も否定はできないものの、確率から言えばむしろ資金はあると考えた方が自然である。
国連(UN)についても、企業や国家の常識で言えば、デフォルトに至る前には様々な措置を取る可能性を考えるべきで、その内の一つとして資産売却による資金確保を考慮すべきである。
これらから推察できるのは、もはや残り少なくなってきた2019年において金融マーケットの下落が生じる可能性を考慮すべきであるということだ。しかも今回は財政調整とでも言うべきフェイズであるため、それ以後に本格的な“凋落”があり得るということすら頭の片隅に留めておくべきである。
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。