「最後のフロンティア」とも呼ばれるアフリカ大陸を日本企業がビジネス機会としてとらえて取り組みを強化しています。アフリカ開発は中国や米国が先行していますが、巨大経済圏誕生の機運が高まるなか、日本企業も着々と地歩を固めつつあるようです。
アフリカ大陸――増える生産年齢人口、堅調な経済成長
アフリカ開発銀行による2019年の経済見通しによれば、アフリカの域内総生産(GDP)の成長率は2018年が推計3.5%と前年と同水準でした。これが2019年には4.0%、2020年には4.1%とさらなる伸びを見せると予測されています。中国やインドの成長率には及びませんが、日米などと比べると高い成長率といえるでしょう。また、生産年齢人口は2018年の7億500万人から2030年には約10億人へと拡大するとみられているそうです。
国連が発表した推計によれば、世界の人口は現在77億人。全体の17%に当たる13億人がアフリカに住んでいます。世界の人口は2030年に85億人となり、さらに2050年には97億人、2100年には約110億人に達するとみられています。
世界の多くの国々で過去数十年の間に合計特殊出生率は大きく減少しました。国や社会の維持には出生率2.1を維持する必要があるとされていますが、現在の世界人口の半数近くは出生率が2.1未満の国または地域で暮らしています。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の出生率は平均で4.6と高い値を示しています。
国連の推計で今後、人口が最も急速に増えるとみられているのがアフリカ諸国です。特にサハラ砂漠以南では2050年までに人口が倍増する見通しだといいます。アフリカ大陸の人口構成は現在、若年層が多くを占めており、こうした層が今後成人して、さらに家庭を持つことになるとみられています。
アフリカが一つの市場にAfCFTAが発効
生産年齢人口の増加など経済成長の潜在力が高まっているアフリカですが、域内の関税の撤廃や投資の促進などを目指す自由貿易協定(AfCFTA)が2019年に発効しました。ジェトロ(日本貿易振興機構)によれば、全55ヵ国・地域が参加すれば世界最大規模の市場となり、GDPも2兆2,000億ドルに上るとみられています。
AfCFTA創設を望む声が大きい背景には、域内貿易の少なさがあるそうです。欧州連合(EU)やアジア地域と比べると、全輸出額に占める域内輸出額の割合は、EUが約63%、アジアが約55%なのに比べ、アフリカは約16%にとどまるといいます。今回のAfCFTA発足によって物品貿易では関税の約9割を撤廃する方針だとされています。関税引き下げの対象となる物品がどのようなものか、その実施のスケジュールなどについては明らかになってはいませんが、運用が始まればアフリカでのビジネス戦略は大きく変化するでしょう。
アフリカにはこれまでも南部アフリカ開発共同体(SADA)のような枠組みはありましたが、参加国は一部に限られており、加盟国内で生産した製品も関税撤廃の恩恵を受けられるのは域内への輸出に限られていました。しかし、AfCFTAの運用が始まればアフリカ大陸全体を「一つの市場」としてとらえることが可能になります。
直接投資は欧米や中国が先行
国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した2019年の世界投資報告によると、2018年のアフリカへの直接投資(FDI)は460億米ドルと前年比で11%増加しました。2017年までの数字をもとに算出すると、投資が多かった国は上からフランス、オランダ、米国、英国、中国。日本は上位10ヵ国にも入っていませんでした。
アフリカ進出へ日本政府も後押し
3年に1度開催されるアフリカ開発会議(TICAD)が2019年8月に横浜市で開催されました。同会議では「横浜宣言」が採択され、日本企業のアフリカ進出や民間による投資の促進などが打ち出されました。
もちろん既にアフリカでのビジネスチャンスを探る日本企業は何社もあります。デンソーは自動車部品の販売や修理などのサービスを提供する合弁会社を南アフリカに設立しました。また、三井物産はモザンビークでの液化天然ガス(LNG)の開発プロジェクトに投資する方針を明らかにしています。
トラック輸送のためのデジタルプラットフォームを提供するナイジェリアの新興企業が先ごろ3,000万ドルの資金調達を行いましたが、この中には日系のAAIC(Asia Africa Investment and Consulting)が運営するアフリカヘルスケアファンドも名を連ねました。ヤマハ発動機もバイクタクシーの配車アプリを開発するナイジェリアの企業に出資しています。
巨大な経済圏の誕生が見込まれるアフリカ大陸で日本勢は商機をつかめるのでしょうか。(提供:JPRIME)
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