日本株の堅調な値動きが続いています。日経平均株価は9月下旬から10月初頭にかけて下げた後、中旬以降は上昇基調に転じ、昨年10月以来約1年ぶりの高値水準を回復しました。世界的な金融緩和基調の中、米中通商摩擦に対する懸念が後退し、米国株等が堅調に推移していることに加え、外為市場で円高が一服したことが背景とみられます。

なお、米国市場では2019年7~9月期の決算発表が佳境を迎えつつありますが、純利益について事前の市場予想を上回る銘柄がほとんどで、決算発表後の株価が堅調を維持する銘柄が多くなっています。同様の傾向は日本でも堅調になりつつあり、10月下旬以降に本格的に始まる決算発表シーズンにおける株式市場への展望も明るさを増しているように思われます。

そうした中、「日本株投資戦略」では、2019年7~9月期の決算発表シーズンを控え、株価上昇も期待できる意外な好業績銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

決算発表本格化で期待したい意外な好業績銘柄とは!?

日本株投資戦略,好決算期待銘柄
(画像=PIXTA)

冒頭でも触れましたように、今回の「日本株投資戦略」では、2019年7~9月期の決算発表シーズンを控え、株価上昇も期待できる意外な好業績銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみたいと思います。

この時期、株式市場の関心は圧倒的多数派とみられる3月決算銘柄に集まるとみられます。東証上場企業の6割弱が3月決算企業で占められているため、企業業績に関する集計や様々なランキング、スクリーニング等についても、はじめから3月決算に絞られることが多いためです。「日本株投資戦略」でも、スクリーニング条件に「3月決算銘柄であること」という条件を入れることが多くなっていますし、事実、10/11(金)付の当レポートでは3月決算銘柄を対象に、好業績銘柄のスクリーニングを行っています。

改めて、今回のスクリーニング条件を箇条書きにすると以下のようになります。

(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額が1千億円以上の銘柄であること。
(3)9月、または12月決算銘柄であること。
(4)広義の金融や、投資法人等を除く業種の銘柄であること。
(5)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いる銘柄であること。
(6)市場コンセンサスで来期営業損益が黒字で増益が予想される銘柄であること。
(7)四半期累計の営業増益率(前年同期比)が通期の会社予想営業増益率を上回っていること。

上記のすべての条件を満たした銘柄について、(7)の四半期累計営業増益率が通期会社予想営業増益率を何%上回っているのか、その差を計算し、その数字の大きい順に10銘柄を並べたものが表1となります。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄を、株価上昇も期待できる意外な好業績銘柄であると評価しています。なお、増益率の差については、表1で(A)-(B)として計算されています。

一般的に上場企業の決算発表では、企業が発表した売上・利益等の決算数字(実績・予想)が、事前の会社予想や市場予想(市場コンセンサス)を上回ると、市場にとって「ポジティブ・サプライズ」となり、株価上昇につながることが多いと考えられます。ただ、アナリストや機関投資家と異なり、一般の個人投資家が上場企業の業績の良し悪しを予想することは「至難の業」と言えるでしょう。

ただ、四半期決算等で年間の業績の一部が明らかになれば「ヒント」が生じることになります。年度単位の業績や業績予想は「四季報」等もあり、チェックがしやすいのですが、四半期単位の業績は比較的チェックしにくく、多くの投資家は意外に「頭の中に入っていない」のが現実だと思います。

一般的に、途中の四半期まで大幅増益で通過してきた銘柄は、通期の業績について、期初の会社予想等を上回って着地できる可能性が大きいと考えられます。例えば、表1のナブテスコ(6268)は、2019年12月期(通期)に営業利益300億円(前期比37.1%増)の予想(会社計画)ですが、第2四半期累計の営業利益は約120億円弱で、前年同期比88.1%増であり、通期の予想増益率37.1%増を上回るペースで第2四半期を通過したと考える訳です。

無論、第3四半期以降に業績の方向感が急変している可能性もあり、正確な業績は「不明」というのが、素直な所です。ナブテスコの場合、前年同期が大幅減益だったこともあり、第2四半期累計の増益率が大きく見えているという面があります。進捗率でみれば40%に過ぎず、年度の50%を通過したことを勘案するならば、もう少し慎重にみるべきかもしれません。なお、同社に関して言えばSBI証券・企業調査部からもレポートが発行されており、それをご参考にして、より総合的な判断ができると考えています。

正確な業績は「不明」という点はどんな企業にも同じことが言える訳です。ただ、第2四半期を高い増益率で通過したことで、不調な銘柄に比べると、業績が会社予想や市場予想を上回る可能性は相対的に高いと考えることができます。

日本株投資戦略,好決算期待銘柄
(画像=SBI証券)

表1 決算発表本格化で期待したい意外な好業績銘柄とは!?
コード / 銘柄(10/25) / 株価 / 営業増益率(前年比) / 増益率の差(A)-(B)四半期(A) / 通期予想(B)
<6268> / ナブテスコ / 3,530 / 88.1% / 37.1% / 51.0%
<8060> / キヤノンマーケティングジャパン / 2,371 / 38.8% / 3.7% / 35.1%
<4812> / ISID / 3,645 / 36.9% / 3.2% / 33.7%
<6235> / オプトラン / 3,200 / 36.3% / 5.7% / 30.6%
<2492> / インフォマート / 1,574 / 32.6% / 2.8% / 29.8%
<4004> / 昭和電工 / 3,045 / 9.8% / -19.4% / 29.2%
<9749> / 富士ソフト / 4,690 / 26.7% / 2.6% / 24.1%
<3197> / すかいらーく / 1,956 / 7.5% / -3.8% / 11.3%
<4768> / 大塚商会 / 4,175 / 24.7% / 16.1% / 8.6%
<6080> / M&Aキャピタルパートナーズ(9) / 6,960 / 72.1% / 63.7% / 8.4%

※Bloomberg、会社公表データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。銘柄名の右に(9)と表記されている銘柄は9月決算で、その他は12月決算銘柄。四半期増益率は12月決算銘柄の場合、第2四半期累計(2019年1月~6月期)営業増益率で、9月決算銘柄の場合、第3四半期累計(2018年10月~2019年6月期)営業増益率。なお、表1は10/24(木)までの情報をもとに作成されており、その後に報道や業績修正があった場合、反映できない場合がありますので、注意が必要です

掲載銘柄の投資ポイントを吟味

ここでは、表1に掲載した銘柄の一部について、業績やチャート等の投資ポイントをご紹介したいと思います。

ナブテスコ(6268)は産業用ロボット向け精密減速機で約6割のトップシェアを有している会社です。ロボットを動かしたり止めたりする技術が中核となっている企業といえそうです。

2019年12月期に営業利益300億円(前期比37.1%増)を見込む中、同年度の第2四半期累計営業利益は120億円(前年同期比88%増)で、計画達成が見通せる状況になっています。ただ、前項で触れたように、前年同期が大幅減益だったこともあり、第2四半期累計の増益率が大きく見えているという面があります。進捗率でみれば40%に過ぎず、もう少し慎重にみるべきかもしれません。なお、米中通商摩擦やボーイング737MAX問題の影響はそれ程大きくないと考えられています。

ただ、株式市場では工作機械受注の底入れから、工作機械関連株に注目する向きも増えつつあります。チャート的には、4月に付けた3,615円を超えてくると「底入れ完了」とみられ、上昇が加速しやすい形になると見受けられます。

図1 ナブテスコ(6268)・週足
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

キヤノンマーケティングジャパン(8060)

キヤノン(7751)の国内販売部門が独立して誕生した会社です。ただ、キヤノン製品以外の商材も扱っており、キヤノンの成長率を超えた成長率を目指すことも可能です。自社でセキュリティ要員にリソースをさけない中小企業と連携する戦略をとっているようです。 なお、2019年6月末のネットキャッシュは838億円あり、キャッシュリッチ企業としての注目も可能とみられます。PBRも1倍を少し切った程度であり、下値は限定的かもしれません。

2018年9月に2,448円、2019年4月に2,465円という高値があり、現在はそれらの水準に接近する展開になっています。

ISID(4812)

GEと電通の合弁会社が起源となっているシステム・インテグレーターです。事業規模に比べ案件が大きく、先端技術の活用に前向きな企業とみられ、収益の振れ幅が大きくなりやすい面があるようです。SBI証券・企業調査部では8/6(火)付でレポートを発行し、2019年12月期103億円、2020年12月期110億円の営業利益を見込んでいます。目標株価はその時点で4,800円でした。

オプトラン(6235)

東証1部上場企業ですが、設立は1999年8月の若い企業です。光学部品向けの成膜装置を提供しています。光学薄膜技術をナノレベルの超微細スケールで発揮する技術力が強みとみられます。

5Gなど携帯電話の高機能化や監視カメラの普及、IoTの発達などが成長要因になっています。高い成長期待にもかかわらず予想PERが16倍前後と低めなのは、2017年12月期207%増益、2008年12月期45%増益と、高い営業増益率をあげてきたにもかかわらず、今期は5.7%増益予想で、成長鈍化が懸念されたためと考えられます。ただ、増益ペースの維持が確認されれば、株価の評価も変わってくるかもしれません。

図2 オプトラン(6235)・週足
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

インフォマート(2492)

食材の企業間電子商取引をスムーズに行うためのプラットフォームを運営しています。流通金額は8兆円を誇り、国内有数の存在になっています。収益のほとんどが月額使用料金で、典型的なストックビジネスで、安定した利益成長が可能です。

SBI証券・企業調査部では8/1(木)に目標株価1,250円でレポートを発行しています。予想PERは110倍に達しており、株式市場ではすでに高い評価が与えられており、その点は注意が必要そうです。

図3 インフォマート(2492)・週足
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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