シンカー: 10月FOMCでは3会合連続で利下げが実施されたが、今後は小休止すると示唆された。経済見通しに鑑み金融政策が適切だと示し、予防的な利下げの効果を見極めるスタンスに入ったようだ。FEDの見通しでは実質GDP成長率が2.0%前後、インフレ率は目標の2.0%に戻るというものだ。米国の景気拡大サイクルが長期化して貿易を巡る緊張が和らぐことがあれば、ユーロ圏景気は潜在成長率近辺で留まるとみられる。政局でもEU離脱協定案が議会で可決され、12月には総選挙が実施される予定であり、議会の硬直状態は解消され始めている。景気後退懸念に対して政策対応が実施され、その効果を見極める局面に入ってきていると考える。今後、不透明感が落ち着き、政策効果が波及していくと、年末に向けてリスク資産の上昇圧力となるだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

グローバル・レポートの要約

●米国経済(10/31): FOMC: 3会合連続で利下げを実施、以降は小休止を示唆

10月FOMCでは3会合連続で利下げが実施されたが、今後は小休止すると示唆された。FRBは、経済見通しに鑑み金融政策が適切だと示している。FRB見通しは、実質GDP成長率が2.0%前後、インフレ率は目標の2.0%に戻るというものだ。複数回の追加利下げを促すには、大幅な再評価(経済見通しの見直し)が必要になる。弊社の見方は「2020年春には、FRBが経済見通しを大幅に見直す可能性が非常に高く、利下げが再開される」である。

●欧州経済(11/05):不確実性の緩和とともに、景気は底固くなる

ユーロ圏経済は、低調なPMI、弱いグローバル貿易、鉱工業の不調(特にドイツで深刻)にもかかわらず、力強い内需のおかげで、潜在成長率(1.2-1.3%)をわずかに下回るだけのペースで拡大している。第3四半期(Q3)のGDP成長率(一次速報値)は前期比0.2%と発表された。弊社はQ4を同0.3%と見込んでいる。短期的には、(ブレグジット関連の不確実性は和らいでいるが)在庫が重石となり鉱工業生産に少し影響するとみられる。その後、内需は減速するが堅調(といえる範囲)が続くとみられる。この見方は、民間セクターのファンダメンタルズが健全なこと、控えめな財政緩和が多少見込まれることに基づく。これに助けられて、ユーロ圏景気は次のリセッションでも比較的底固く推移するとみられる。弊社は、米国が来年リセッション入りする(GDP成長率はわずか0.7%に留まる)という自身の見方から、2020年のユーロ圏GDP成長率が潜在成長率を下回る(0.9%)と見込んでいる。この場合、相対的には、ユーロ圏の景気減速は米国よりも目立たなくなる。なおドイツは、貿易に左右される度合いが高く競争力も弱まっていることから、引続きユーロ圏の他国(特にフランス)をアンダーパフォームすると見込まれる。米国の景気拡大サイクルが長期化して貿易を巡る緊張が和らぐことがあれば、ユーロ圏景気は潜在成長率近辺で留まるとみられる。その他に、短期的には影響ないとみられるが否定できないリスクとして、マイナス金利政策の副作用が挙げられる。

●英国経済(10/30): 年内総選挙が、首相への早いXマスプレゼントに

ジョンソン英国首相は本日(29日)、早期総選挙を目指す4回目の企てを行う。今回は単独の法案提出だが、総選挙実施が12月12日であることは変わらない。労働党は本日、この案に原則的には合意したが、正確な投票日(12月9-12日のいずれか)や、16-17歳のEU市民と英国民を投票に参加させるという修正案に関して、同党内や他党で論争が発生する可能性はある。後者は(専門家たちがすぐに指摘するとみられるが)非現実的かも知れない。法案が不成立となる可能性は残るが、労働党、自由民主党とスコットランド国民党(SNP)が支持しており、それ(法案不成立)は実際には考えづらい。

●債券市場(11/05):ノー・トリック・オア・トリート

米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文の小さな修正は、利下げの一時休止を示唆するトリック(TRICK)をかけ、少なくとも年末まではリスク資産にこれ以上の褒美(TREAT)が与えられないことを意味した。世界の債券利回りは最近のレンジの上限付近で推移しており、今後1年間は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げがほとんど織り込まれていないことから、金利変動リスクは上下に非対称だと考えられる。このため、アウトライトまたは条件付きポジションによるデュレーション・ロングのエクスポージャーを推奨する。弱いマクロ経済統計が市場を揺るがすことになろう。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司