予想以上の減少幅。台風の影響もあって基調が見極め難く、評価は持ち越し

増税後の消費動向を測る上で、10月の消費関連統計はいつにも増して注目されている。ここでは、公表の早い自動車販売と百貨店販売の結果を紹介する。

結果は大幅な減少となっており、特に自動車の落ち込み幅は大きい。駆け込み需要の反動減に加え、台風の影響で下押された部分も大きかった模様だ。駆け込み需要とその反動、増税による実質所得の下押し、各種消費税対策等、それでなくても撹乱要因が多いところに、台風までもがデータに影響しており、消費の基調が非常に読みにくくなっている。消費税率引き上げの影響度合いを確認するには、もうしばらく時間がかかりそうだ。

デパート,百貨店
(画像=PIXTA)

自動車は予想以上の急落。台風の影響も

19年10月の乗用車販売台数(普通・小型乗用車販売台数と軽乗用車販売台数の合計)は前年比▲25.1%と大幅な減少となった(9月:+13.6%)。季節調整値(筆者試算)でも前月比▲30.3%もの急減である。

前回14年の増税時と比較すると、引き上げ直後の14年4月が前年比▲5.1%、季調済み前月比▲13.6%だった。今回19年10月(前年比▲25.1%、前月比▲30.3%)の落ち込み幅は、前回をはるかに上回る。

10月は台風19号の影響で店舗休業等も多くあったことに加え、一部メーカーで生産・出荷を停止したことも影響したものと思われる。この天候要因による押し下げもかなりの程度あった模様である。また、一部車種の不具合による生産停止が影響した可能性もあるだろう。落ち込み幅については割り引いて見る必要があり、10月の結果だけをもって判断すべきではない。ただ、現実問題として、今月の落ち込みのうちどれだけが増税の影響で、どれだけが台風の影響なのかは全く分からない。

その意味で、11月分の結果の注目度が高まった。仮に台風要因が大きいのであれば、11月は水準を大きく戻すはずであり、その可能性も十分ある。だが、もし戻りが弱いようであれば、増税による悪影響が予想以上に大きいとの評価も出てくるだろう。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

百貨店でも反動減が顕著。台風による店舗休業も下押しに

自動車ほどではないにせよ、百貨店売上も落ち込んだ。11月1日に、主要百貨店5社が10月の売上高(速報)を公表した。これを元に10月の全国百貨店売上高(全店ベース)を試算すると前年比▲18%程度となり、9月の同+22.8%から大きく落ち込む。これに季節調整をかけたところ、10月の前月比は▲33.7%と急減している。ちなみに前回14年の消費税率引き上げ時は、14年4月の百貨店売上高(全店ベース)は前年比▲12.5%、前月比▲29.2%だった。落ち込み幅は前回よりもやや大きめということになる。

駆け込み需要の反動が大きいことに加え、こちらも台風の影響が出ているようだ。台風襲来に備えて営業時間の短縮や臨時休業を行った店舗もあり、その分の売上が押し下げられているとみられる。単に10月の結果をもって、前回対比で落ち込みが大きいという評価はできない。やはり11月分の結果を待つしかなさそうだ。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)

11月以降のデータが重要に

今回の10月の業界統計で分かったことは、消費税率引き上げの悪影響度合いは、10月の結果を見ただけでは分からないということである。ただでさえ判断が難しいところに、台風による撹乱までもが加わっているため、現段階で影響度合いの大小をはっきりと語ることは困難だ。本稿で述べた自動車や百貨店のほかにも、レジャー等では台風による下押しは非常に大きかったと思われるが、スーパーやホームセンター等では買いだめが発生するなど、業態によっても影響は異なる。見極めは非常に難しい。その意味において、11月以降の消費動向への注目度が一段と高まった。10月の落ち込みが、台風によるところが大きかったのかどうかが、その結果によってある程度見えてくるだろう。

台風云々を抜きにしても、もともと9、10月分の結果だけで消費税率引き上げの影響度合いを語ることには無理があった。消費増税においては駆け込みと反動ばかりが注目されるが、これらは均してしまえばニュートラルであり、本質的なものとは言い難い。本当に重要なのは、消費増税に伴う実質所得の抑制や消費者の節約志向の強まりによってどれだけ個人消費が基調として下押しされるかである。この実質所得減の影響を見るには、単に増税月の消費を見れば良いというものではなく、その先の動向も確認する必要がある。

前回増税時でも、14年4月の消費が大幅に落ち込んだ際には、反動減が出るのは想定内として深刻に受け取る向きは少なかった。だがその後、5月以降の消費の戻りが極端に弱いことが確認されていくにつれ、事態の深刻さが徐々に認識されていったという経緯がある。今回についても、10月分の結果だけでなく、その後の数ヶ月の動きも確認していく必要があるため、影響の見極めにはしばらく時間がかかるだろう。増税後の家計の消費行動については不透明感が非常に強く、予想は極めて難しい。予断を持たずに、今後公表される経済指標を確認していきたい。(提供:第一生命経済研究所

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
主席エコノミスト 新家 義貴