宇宙ビジネスの市場規模がグローバルで拡大しています。日本は2016年時点で、ロケット・補給機などの分野でグローバルシェア20%以上を保持していますが、他分野では苦戦しており、今後、他分野でも影響力を高めていくことを目指しています。日本の宇宙ビジネスの置かれている状況や将来予測を解説します。

ロケット事業以外にも多岐にわたる「宇宙ビジネス産業」

2040年,100兆円,宇宙ビジネス
(写真=spainter_vfx/Shutterstock.com)

米国の大手投資銀行モルガン・スタンレーが、2040年代には宇宙ビジネスの市場規模が1.1兆ドル(日本円で約120 .2兆円)に達するとの予測レポートを発表しています。大手投資銀行の中には最大で2045年に2.7兆ドルになると予測するところもあり、今後宇宙ビジネス産業はさらに巨大になると見込まれます。

では、宇宙ビジネスとは、どのような事業内容を指すのでしょうか。もっともわかりやすいのはロケット事業です。ドラマ『下町ロケット』の大ヒットでロケット事業に社会的関心が高まりましたが、堀江貴文氏が出資したベンチャー企業、インターステラテクノロジズが、小型ロケット「MOMO(モモ)3号機」の打ち上げに成功したことも話題を呼びました(2019年5月4日)。

MOMO3号機は民間単独のロケットとしては史上初めて、高度100キロの宇宙空間到達という快挙を達成しました。同社の目的は、需要が高い小型衛星打ち上げ事業への参入です。小型衛星の打ち上げはコストが最低数十億円かかる高コストの大型ロケットに頼っているのが現状です。そのため、低コストで小回りのきく小型ロケットの開発が世界中で進んでいるという事情が背景にあります。

もっとも、宇宙ビジネスはロケットや人工衛星だけではありません。衛星放送や衛星携帯に関わる「放送・通信事業」、気象予報や情報収集のための「地球観測事業」、カーナビやスマホのGPS利用のための「測位事業」などがあります。

日本で躍進が見込まれる宇宙ビジネス「地上設備」と「観測分野」

今後の日本の宇宙ビジネスの拡大を市場規模の推移でチェックしてみましょう。国内の宇宙関連産業には次の2分野があります。2016年から2050年の市場規模の変化(成長率目標設定)は次の通りです。

[宇宙機器産業]
・ロケット/宇宙ステーション補給機
2016年市場規模:1,356億円→2050年予測:3,665億円(年平均成長率3.0%)
・人工衛星/宇宙ステーション
同1,556億円→同2,633億円(同1.6%)
・地上設備
同357億円→同1兆2,031億円(同10.9%)

[宇宙利用産業]
・観測分野
同16億円→同4,523億円(同18.1%)
・電気通信事業
同1,254億円→同4,983億円(同4.1%)
・コンシューマサービス(BS/CS放送事業)
同6,554億円→1兆6,097億円(同2.7%)
出所:NTTデータ経営研究所「長期的な宇宙ビジネス市場規模の試算」※総務省資料

宇宙ビジネス全体の国内市場規模は、2016年の1兆1,093億円から2050年には4兆3,932億円と、約4倍に拡大する見込みです。

この中でとくに伸び率が高いと見込まれるのが地上設備と観測分野です。現在は世界に占める日本のシェアが地上設備0.3%、観測分野0.7%と低迷しており、2050年に4.0%に達するよう、高い成長率の目標を設定しています。

近未来に深まる一般ビジネスと宇宙ビジネスの連携

ここまで、本筋の宇宙関連事業の市場について解説してきましたが、他分野への波及効果もかなり大きくなることが予想されます。

一例としては、BS/CS放送対応のテレビ及びアンテナ、カーナビ、携帯電話端末などの民生機器製造分野。あるいは、宇宙利用産業が提供するサービスや宇宙関連機器を購入・利用して事業を行うユーザー産業分野。そして、宇宙サービス産業から得た情報や蓄積されたデータを利用して制作する映画・ゲームソフト等のコンテンツや、テーマパーク等の娯楽事業、応用範囲は多岐にわたりそうです。

これまで遠い存在だった宇宙ビジネスが、身近な一般ビジネスと関連してくる可能性が高くなるわけで、ビジネスパーソンが宇宙ビジネスにアンテナを張るのが当たり前の時代になるのも、そう遠くないかもしれません。(提供:Wealth Lounge

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