ジャパンベンチャーリサーチの発表によると、2018年のVC(ベンチャーキャピタル)による国内スタートアップへの出資額は3800億円を突破し、5年連続での最高額を達成している。国内スタートアップに追い風が吹いていることは間違いないが、一方で、アメリカの約10兆円という規模と比べればわずか4%程度にとどまっている。

なぜ今、国内スタートアップに資金が集まっているのだろうか。また、資金調達のハードルが下がったとはいえ、日本が大きく遅れを取っていることには理由があるのだろうか。

株式会社ドリームインキュベータ執行役員の宮宗孝光さんは、これまで戦略コンサルタントとして大企業の経営者を、インキュベーターとしてスタートアップの創業者を、それぞれ支援してきた経歴を持つ。スタートアップ支援に軸足を置く現在は、個人の活動として起業家向けの勉強会も実施しているという。

大小さまざまな規模の経営者と数多く触れ合ってきた宮宗さんだからこそ見える、スタートアップ企業を取り巻く現状とその課題。そして、成功する起業家の共通点とは。個人がより起業家としてチャレンジしやすくなった現代にこそ知っておきたい、令和時代に活躍できるリーダー像を掘り下げた。(取材・藤堂真衣/写真・森口新太郎)

宮宗孝光
宮宗孝光(みやそう・たかみつ)さん
株式会社ドリームインキュベータ執行役員。
東京工業大学大学院を卒業後、シャープ株式会社でDVD用半導体レーザーの開発・量産化に携わる。ドリームインキュベータにて大企業・ベンチャーの戦略策定や採用、M&A、提携といったコンサルティングを行い、3社の上場、3社の東証一部上場企業へのMBOに貢献する。起業家を集めての勉強会も自主的に主宰し、その参加者のうち10名が上場を果たす。現在は国内ベンチャー投資ファンド「DIMENSION」の代表取締役も兼務。

スタートアップのVC調達額は過去最高を記録。見えてきた3つの背景

Moneylist#19
(画像=森口新太郎撮影,ZUU online)

──スタートアップのVC調達額が大きく伸びていますが、そこにはどのような背景があるのでしょうか?

まず現状をご説明すると、2012年には国内ベンチャーの資金調達総額は640億円ほどでした。それが18年時点では、約6倍の3800億円ほどに伸びています。

背景に挙げられるのは、まず低金利政策です。借り入れのハードルが下がっていることで、起業に対するハードルも下がっていると見ることができます。さらに、メガベンチャーといわれるような成長企業がベンチャーを買収、もしくは支援をする側に回りつつあることも影響しています。ヤフー株式会社の子会社であるZコーポレーションに代表されるような投資会社も現れ、積極的に出資やM&Aに乗り出しています。

最後にもう一つ考えられる要因としては、大企業が社外のスタートアップと連携して事業を進める動きが増えていることです。

スマホによって起きた“消費”と“つながり”の変革

Moneylist#19
(写真=森口新太郎撮影)

──大企業が自社で新規事業を起こしにくくなっているのですか?