連載『中華圏富裕層の実態』では、香港で50年ぶりとなる金融機関「Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB)」を創設し、富裕層向けに資産運用をサポートしている長谷川建一氏が、中華圏富裕層の特徴について紹介していく。7回目のテーマは「中国人富裕層の投資トレンド(後編)」である。

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長期化し、過激化する香港デモ

中華圏富裕層#7
(画像=PaulWong / shutterstock, ZUU online)

香港では、6月から始まった逃亡犯条例改正案に反対するデモが、香港政府の対応のまずさもあり、反政府運動となって長期化している。最近は先鋭化し、暴力行為や破壊行為が目立ってきた。

特に、中国の習近平国家主席と香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の会談後に、警察が「法に基づく支配の名目」のもと「暴徒を罰する」として力の行使を強めて反政府運動の鎮圧に乗り出した印象は強く、反政府派は反発を強めている。週末のみだった抗議活動も、平日にまで呼び掛けられるようになり、混乱は拡大している。

香港政府は、一時反対派への呼び掛けも試みた節はあるが、本腰を入れた対応とは言い難く、口先だけのポーズとの受け止め方が大半である。反対派は、香港政府と警察の取り締まり姿勢が暴力行為をエスカレートさせており、暴力行為を止めたいなら、政府はわれわれの要求に耳を傾けるべきだと、要求を強めているが、先鋭化して破壊活動を行うことへの複雑な市民感情も生まれてきており、社会を二分した現在の情勢は香港の将来を暗くするだけにように見える。

学校は休校となり、高速道路が一部封鎖され、交通機関も運休や遅延が目立つようになるなど、治安の問題にもなってきており市民生活へ深刻な影響が出てきている。また、警察と反政府派の衝突に巻き込まれて、一般市民が犠牲になる事案も発生しており、香港情勢の緊迫化は、非常に危険な水準に達していると言うべきだろう。

香港経済は悪化の一途をたどっており、小売り業や観光業は、顧客の激減で打撃を受けている。2019年第3四半期の香港経済の成長率は、マイナスに転じ、10年ぶりにリセッション(景気後退)状態に陥った。

中国以外に資産を移転 香港系華人富裕層40年の歴史

もともと、香港を拠点にする中華圏富裕層は、国際分散投資の教科書とも言える行動をとってきた。香港返還前となる1990年代前半には、イギリスやカナダ、オーストラリアへと投資を拡大。居住権や国籍などの取得という事情もあったが、天安門事件以降、中国に対するアレルギーが強まるという逆風もあり、香港から中国以外の自由主義経済圏に資産を移転させるという理由は根強かったのである。