IR(カジノを含む統合型リゾート)認定に向けて候補自治体による誘致合戦が本格化しています。2019年秋にはIR誘致に前向きな自治体が出そろい、2020年以降、自治体・事業者の決定〜開業準備が進められる予定です。本稿ではIR認定に関連して、具体的にどのような状況なのかを確認します。
IR実施法案が成立するまでの流れ(2002~2018年)
IRとはIntegrated Resortの略でカジノやホテル、劇場、国際会議場、ショッピングモールなどが集まった複合施設のことを指します。海外の代表的なIR先進地区であるラスベガスやマカオ、シンガポールからイメージできるようにIRの中心はカジノです。そのため日本では長い間国民のカジノに対する強い抵抗感でIRの導入構想が進展しませんでした。
IR計画のはじまりは2002年。カジノ導入を考える与野党の超党派議員連盟が発足し、カジノ合法化を目指す運動が続けられました。しかしカジノによるギャンブル依存症を指摘する反対の声も多く、IR整備推進法が成立したのは約14年後の2016年12月のことです。そして2018年7月にIR実施法案がようやく成立したというのがこれまでの経緯です。
しかし時事通信が2019年10月に実施した世論調査によると、カジノを含むIRの誘致には依然として57.9%の国民が反対しています。
IRは、利益によって他の施設のサービスを低価格で利用できる点などがメリットです。例えば韓国のパラダイスグループでは2016年のカジノの売り上げが約86.7%を占めています。今後もIRがもたらす利益や意義を国民に説明しながら、プロジェクトを進めていく必要があるでしょう。
最大3ヵ所のIR認定自治体が決まるまでの流れ(2019年~)
2019年9月24日に国土交通省が発表した自治体の意向調査によると、IR誘致に名乗りをあげたのは東京都、千葉市、横浜市、名古屋市、和歌山県、大阪府・大阪市、長崎県の7地域です(大阪府(市)は合わせて1地域)。この中から選ばれた最大3ヵ所の地域と事業者が2025年ごろを目標に開業を目指し、日本におけるカジノを伴った初の統合型リゾートを実現することになります。
候補自治体が出そろいつつあるIRですが認定自治体決定までのスケジュールは見えにくい部分もあります。今後の大きな流れは次の通りです。
- 2019年9月4日:国が基本方針案を公表。意見募集開始
- 2020年前半(見込み):国が基本方針を決定
- 時期未定:国が最大3ヵ所の事業地を認定
- 2024年度~:各地でのIR開業
このスケジュールで問題なのは、2~4の部分です。基本方針の決定や事業地認定の時期がはっきりしないため、開業時期も見えにくいという流れになっています。後ほど解説しますが、なかには国のさまざまな決定を待たずに意思決定をしていくという地域も現れています。
なぜ大阪はIRの最有力候補といわれるのか?
名乗りをあげている自治体の中で最有力候補といわれているのが大阪です。大阪が有利な理由としては、2010年というかなり早い段階で橋下徹府知事(当時)がIR誘致を表明、安倍首相や管官房長官と関係を深めながらプロジェクトを進めてきた点にあると考えられます。関西経済界と一枚岩でIR実現を目指してきたこと、既に地元住民向けにギャンブル依存症対策を進めていることなどもプラス材料といえそうです。
大阪がIR誘致に自信をのぞかせた出来事があります。2019年9月4日に大阪府の吉村洋文知事が、2020年前半といわれる国の基本方針決定前であっても2019年内に事業者の公募を開始する方針を明らかにしました。大阪が事業者の公募・決定を急ぐ理由は、2025年に開催される大阪万博前にIRを開業し、万博との相乗効果を狙う事情があるからでしょう。
本来であれば“順番が逆”のスケジュールですが、国も大阪の要望に対し正式発表前でも事業者を公募することを認める考えを示しました。最後にIRを誘致した場合の経済効果ですが、2019年8月段階でIR誘致に前向きだった事業者の構想案によると年間の経済効果(開業後)は約7,700億~1兆6,500億円と見込まれています。
一時的なイベントではなく長期的かつ巨額の経済効果が見込めるだけに、IRをめぐる誘致合戦はさらに熱を帯びそうです。(提供:Wealth Lounge)
【オススメ記事 Wealth Lounge】
・相続対策は「不動産評価」か゛決め手!その3つの具体策
・ビジネスジェットはなぜ日本で広がらないのか?3つの誤解を解く
・世界が混迷する今だから学びたい投資の原則!「相場の神様 本間宗久」の言葉
・企業もふだんの行いが見られる時代!投資の評価軸として広がる「ESG」とは?
・「相続対策の不動産投資」と「通常の不動産投資」。決定的な違いとは?