(本記事は、二神雅一氏の著書『思考のリミッターを外す「非常識力」 日本一不親切な介護施設に行列ができる理由』ユサブルの中から一部を抜粋・編集しています)

「常識を破る人」になるためのやり方

ハードワーク
(画像=Pixelbliss/Shutterstock.com)

読者の中には「軸」や「考え方」よりも「やり方」を知りたい人がいるかもしれません。ですが、安易にノウハウやテクニック論に走ってしまうのはあまりお勧めしません。

なぜなら、考え方が間違った状態でノウハウを身につけても正しく使うことができないからです。自動車の運転のやり方を身につけても、安全運転の考え方を知らなければ事故を起こします。それと同じです。

そのことを踏まえた上で、読み進めてください。

【やり方1】まず「自分が動く人」になる

何か事を成し遂げようと思ったら、絶対に必要になるものがあります。それが「周囲からの応援」です。一人きりでできることには限界があります。自分と志を同じくしてくれる仲間や、応援してくれる人たちがいるからこそ、できることは次第に大きくなっていくのです。

仲間を集めるためには「信頼」が必要です。仲間を信じ、自分もまた信頼される。その順番は、まず自分。次に相手です。

私の会社「創心會」には「創心の精神」というものがあります。

「創心=心を創る」ですが、こう書くと「利用者さんの心を創ること」と思われるかもしれません。確かに最終的にはそれを求めているのですが、創るべきは、まず自分の心なのです。相手の心を動かすために、まず相手の心に寄り添える自分の心を創らないといけません。

「主体変容(=周りを変えるためにはまず自分が変わる)」という言葉がありますが、創心の基本精神です。

様々な商品・サービスは、第一に利用者さんの困り事や悩みを解決するために存在すべきだと思っています。相手の心に寄り添える自分になり、相手をよく理解することが、相手の心を動かすきっかけになるのです。

もしもあなたが「どうして自分には仲間がいないのか」「なぜ尊敬を集められないのか」と考えているなら、まずここから始めてみてください。

【やり方2】時間と負荷をかける

何か新しいことを始めると、必然的にそこへ時間を費やすことが多くなります。これは避けられないと思ったほうがいいかもしれません。

ビジネスでも習い事でも、またスポーツや武道でも、最初はある程度の量をこなさなくてはいけません。営業電話をかける量、練習をする量、基礎体力づくりのためのトレーニングの量……量をこなすことで、それは「質」に変化していきます。

そして、さらにそこへ「負荷」をかける。すると、「地力」がついてきます。

私は起業したときに、あることを決めました。

それは「一日12時間以上働く」です。8時に出社をしたら、何があっても8時まで帰らないことにしました。働く時間の「量」です。

さらに、仕事のリズムができてからは「人の3倍働いて、人の倍稼いで、人並みに遊ぶ」ということをモットーにして負荷をかけました。

実際、数年間はほぼ“365日仕事仕事”の日々を過ごし、年間労働時間が4000時間を超える時期もありました。恐らく、日本で一番働いている作業療法士じゃないかと思っていました。タフに仕事をしていたときは意外にも目標に向かう充実感に満たされて、疲れ知らずで働けたのです。

私は、同時に質もアップさせていくようゲーム感覚で、働く時間に負荷をかけていきました。

訪問リハで利用者さんの家を一日5件回っていたところを6件にする、7件にする、8件にする。時間がいっぱいになったら、出勤・退勤時間を30分ずつズラしてもう1件増やす。もしくは1件ごとの時間を圧縮して、総時間を変えずに質を上げる。

すると面白いもので、時間を少なくした分、技術的精度が上がりました。その人が必要なものに目が行くようになり、短い時間でも従来と同等かそれ以上のリハビリ効果を出すことができるようになったのです。

質を上げていくためには、集中的に時間を費やすことに加え、そこに情熱を注ぎこむことが重要です。

日本の明治維新の理論的支柱となった私塾に、吉田松陰の作った『松下村塾』があります。

高杉晋作や久坂玄瑞といった幕末志士、伊藤博文や山縣有朋といった明治維新後の日本を作った偉人たちを排出し、近代民主化の「明治」という時代を実現させました。

諸説ありますが、吉田松陰が松下村塾を開いていたのはたった1年4ヵ月です。しかし、彼にとっては、燃えるような日々の積み重ねだったに違いありません。

このように短期間であっても、命がけで情熱を注ぎこむことで、後世に名を残すような偉業もなし得るのです。

私もちょうど30代で仕事もわかってきて、気力も体力も充実していましたから、量をこなして技術力を向上させ、経験値を増やし、感覚を研ぎ澄ませ、20分間という間隔も時計を見ずにぴたりと当てられるほどにまでなりました。気がつけば、利用者さんはみるみる増えていき、結果的に事業の売上もアップしていったのです。

もしも今よりもう一段階上のレベルに行きたいなら、一番簡単な方法は時間と負荷をかけることです。あなたなりのシチュエーションで考えてみてください。

【やり方3】困難と戯れる

「若いころの苦労は買ってでもしろ」という言葉を聞いたことがあると思います。

なぜなら、すべての苦労には意味があるからです。さらに言うと、「この苦労には意味がある」と考えて真剣に向き合っていけば、必ずその経験はその後の人生に活かされるからです。意味のある苦労をしていると、それは確実にあなたの血となり肉となって身につきます。

だから、苦労は“買ってでもすべき”なのです。

意味のある苦労をするためには、「何のためにやるのか」という目的意識が大前提として必要になります。その軸がブレてはいけません。

私は目的を持って、価値あるものを創ろうとしていました。だから意味のある苦労ならば、その先には必ず価値あるものがあるはずだと、行動し続けました。

先にも述べましたが、一時期の私は年間4000時間働いていました。しかも、それが3年ほど続きました。単純計算で1ヶ月350時間近くです。休日なし&一日10時間働く日々が1000日続く計算ですね。書いていて恐ろしくなりました(笑)。

最初は朝8時半からスタートしていた訪問リハを、枠がいっぱいになって8時に、そして7時半に。夜は5時までだったものを6時、7時……最後の人は8時台にしてもらってなどとしているうちに、労働時間は増えていきました。

食事は車の中で食べられるおにぎりやサンドイッチ。車を降りてからもダッシュで利用者さん宅へ移動。外回りが終わって事務所に帰ってからも事務処理をしたり、厚生大臣に認可をもらうための書類(電話帳くらいの分厚さがありました)を夜中の1時まで作っていたりしていたことを覚えています。

「そこまでしなきゃいけないのか」と思うかもしれません。

ですが、非常識なことを成し遂げたいと思って、自分の中に目的がきっちりと決まっているなら、困難とも戯れる覚悟が必要では、と私は思っています。

あの時期がしんどくなかったと言ったら嘘になります。しかし、そんなときには「しんどいけど、これは成長している証拠」と考えることにしたのです。私の中には常に「人生苦しいときが上り坂」という言葉があります。もちろん、しんどい渦中にいるときは逃げ出したくなることもあります。

思考のリミッターを外す「非常識力」 日本一不親切な介護施設に行列ができる理由
二神雅一(ふたがみ・まさかず)
株式会社創心會(そうしんかい)代表取締役、作業療法士、介護支援専門員。1965年、兵庫県西宮市生まれ。中学より松山市で育つ。愛媛十全医療学院・作業療法学科を卒業。後、作業療法士として香川県と愛媛県の病院で4年間勤務。その後、訪問リハの会社などに転職し、30歳で独立。岡山県倉敷市にて「創心会在宅ケアサービス」を設立する。介護保険制度が開始された2000年に「株式会社創心會」に組織変更。

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