(本記事は、二神雅一氏の著書『思考のリミッターを外す「非常識力」 日本一不親切な介護施設に行列ができる理由』ユサブルの中から一部を抜粋・編集しています)

「常識を破る人」になるための考え方

思考のリミッターを外す「非常識力」 日本一不親切な介護施設に行列ができる理由
(画像=Webサイトより※クリックするとAmazonに飛びます)

物事を実現していくためには、実際に行動に移さなければいけません。そんなときに身につけておきたい考え方とやり方があります。

まずは「考え方」。それから「やり方」です。考え方、やり方の両方を身につけることで、常識を破る人になることができるのです。

では、それぞれのポイントをお伝えしましょう。

【考え方1】「我が事」として考える

初めてリハビリができるデイサービス事業をスタートさせたきっかけとなったのが、訪問リハビリの利用者さんが通っていたデイサービスを視察したことだったのはすでにお伝えしました。

手遊びやお遊戯をする彼らを見て、「これではせっかく機能を取り戻しても、それを維持できない」と感じ、それができる施設を作ろうとしました。

そのとき、同時に思ったことがあります。

「自分が同じ立場になったら、こんなところには絶対に行きたくない」

これが、常識を破る人になるための考え方のひとつである「我が事として考える」です。

25年前当時の(今も多くはそうですが)デイサービスは、室内を折り紙で飾りつけたり、レクリエーションやカラオケ、お遊戯、手遊びなどをするのが主流でした。

私は自分が同じ立場になったとき、そんなところには絶対行きたくないと思ったのです。ですから、自分のデイサービスではそういったことを全面禁止にしました。これは当時からすれば、非常識な考え方でした。

もちろん、利用者さんが回復した機能を維持し、自分ができることを知って社会的自立をできるよう支援していくことは、事業化するにあたり大切なことですし、目指していることでした。

ですが、もしも何か新しいことを始めようとしたときには、具体的なビジョンを持って取り組まなくてはいけません。いつまでも理想論だけでは形にならない。

「我が事として考える」ことはその形にするための切り口になります。

「自分だったらこんなのは嫌だ」

「自分だったらこうしたい」

「こうすればもっと良くなるのに」

など自分に置き換えたときに浮かぶアイデアは、同じように求めている人が、その背後にたくさんいる可能性が高いのです。

リハビリ特化型デイサービスを始めたときに、最初に最も良い反応を示してくれたのは、それまでの一般的なデイサービスに通うことを嫌がっていた男性利用者さんでした。そこから市民権を得ていきました。

【考え方2】数字や常識に縛られない

デイサービス事業をスタートさせたのは、2000年に介護保険制度がスタートした翌年のことでした。自宅に訪問してリハビリをする訪問リハ事業としてたった一人で始めた会社も、そのころには数十人の従業員を雇えるくらいの規模に成長していました。

デイサービスを始める方針を打ち出した当時、幹部たちがエリアのマーケティング調査をしてくれました。

施設を作ろうと考えているエリアの高齢者の割合がどのくらいか、そのうち何割が介護保険制度を使っているか、さらにすでにデイサービス事業所が何ヶ所くらいあって、その結果からエリアにどのくらいの市場が残されているのか……新規出店する際には当たり前に行われる調査です。

そしてその調査をした社員はとても優秀でした。そして、出店予定エリアには競合が多いと報告をしてきました。

ですが、私は少し違った見方をしていました。

「我々にはライバルはいない」と考えていたのです。

カテゴリ的にはデイサービス事業であっても、考えていたのはまったく違うサービス展開でした。利用者さんに歌やお遊戯をさせるようなデイサービスであれば、彼らの調べ上げた数字通りのライバルがいたでしょう。

しかし当時、リハビリをしてくれるデイサービスはありませんでした。わざわざバリアを作ったり、手すりを必要最小限にしたり、自立を促したり、利用者さんにトレーニングを促したり……といった施設は常識外れな考え方でした。

常識に縛られて、彼らの数字を信じて「そうだね。ここには市場が残されていないね」となっていたら、もしかしたらそこで終わっていたかもしれません。

仮に一般的なデイサービスを始めていたとしても、先発の“その他大勢”がライバルになっていたでしょうから、常識を破ることにはならなかったでしょうし、業界で一番になることもなかったと考えられます。

ですから、同じカテゴリであっても、そこにないものを既存の市場に浸透させることのほうが重要だと考えていたのです。

そして、その考えはマッチしました。

特に、それまで男性の利用者さんの中には、デイサービスのイメージが保育園の高齢者版というイメージがあったのです。訪問リハからデイサービスに誘導する際にも、彼らは口を揃えて「幼児が行くようなところには行きたくない」と言っていました。

それでもとにかく見学していただくように促し、「うちのデイサービスにはレクリエーションやゲームは一切ありません。身体を鍛えたりするマシンがあったり、専門の療法士と1対1でリハビリができます」とお伝えし、実際に体験をしていただくと、ほぼ契約に至ったのです。

常識に縛られなかったことで、潜在的なニーズを見つけることができたのです。

【考え方3】ゼロから始める必要はない

「新しいサービスを創出する」というと、まったくの0から何かを生み出さなければいけないのかと考えてしまうかもしれません。

0から1を生み出すことは、確かにとてもエネルギーがいります。ですが、これができずに心が折れてしまってあきらめてしまうのは、とてももったいないと私は思います。

こだわらないでもらいたいのは、必ずしも「0からまったく新しい商品・サービスを創出する必要はない」ということです。人によっては0→1よりも、1を2にも3にもアレンジしていくのが得意な人もいます。これはこれで優れた能力です。

リハビリ特化型デイサービス施設を作ったときも、デイサービスそのものはすでに数多く存在していました。ですから私は、そこで0→1を生み出したわけではありません。

「どのような場所であれば自分は行きたくなるか」と我が事として考えながら、既存のものをアレンジして結果的に新たなサービスを創出するに至ったのです。だから「ライバルはいない」と考えることができたのです。

もちろん、新しいサービスでしたから、利用者さんに理解してもらう苦労はありました。表向きは普通の「デイサービス」ですから、利用者さんのほとんどは身の回りの世話をしてもらえる場所だと思っていたことでしょう。

思考のリミッターを外す「非常識力」 日本一不親切な介護施設に行列ができる理由
二神雅一(ふたがみ・まさかず)
株式会社創心會(そうしんかい)代表取締役、作業療法士、介護支援専門員。1965年、兵庫県西宮市生まれ。中学より松山市で育つ。愛媛十全医療学院・作業療法学科を卒業。後、作業療法士として香川県と愛媛県の病院で4年間勤務。その後、訪問リハの会社などに転職し、30歳で独立。岡山県倉敷市にて「創心会在宅ケアサービス」を設立する。介護保険制度が開始された2000年に「株式会社創心會」に組織変更。

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