米国の投資家の間では、連続増配銘柄に投資する手法が広く認知されている。実は、日本株にも「花王」を筆頭に連続増配銘柄が存在する。日本株の連続増配銘柄の特徴や、ランキング上位企業の概要などを紹介する。

目次
1,連続増配銘柄の5つの特徴
2,日本の連続増配企業ランキングTOP10
3,日本の連続増配銘柄ランキングTOP10企業の概要を説明
4,連続増配を実施している代表的なアメリカ企業3選
5,連続増配企業投資のメリットとデメリット
6,連続増配銘柄への投資では10~20年後の資産形成を狙う

1,連続増配銘柄の5つの特徴――景気や為替相場に左右されにくい企業

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(画像=Thongdeelerd/Shutterstock.com)

配当を年々増額している連続増配企業には、主に以下のような特徴が見られる。

特徴1,株主還元意識が高い
特徴2,健全な財務体質と好調な業績が持続している
特徴3,生活に欠かせない内需系の事業を展開している
特徴4,過去に減配したことがない
特徴5,配当性向に上昇余地がある

それぞれの特徴の詳細を見ていこう。

特徴1,株主還元意識が高い

企業にとって配当は、株主還元策の柱である。企業が投資家に対する利益配分を増やすためには、以下のような方法がある。これらを行う企業は、株主還元意識が高いと言える。

・経営に影響を及ぼさない程度に配当を年々増額する
・自社株買いによって発行済み株式数を減らす

特徴2,健全な財務体質と好調な業績が持続している

長期にわたって企業が連続増配を実施するためには、配当金の原資となる利益を毎年出す必要がある。つまり連続増配銘柄は、バブルの崩壊やリーマンショックなどの不況や為替相場の変動にも屈することなく、健全な財務体質のもと事業を堅調に推移させてきた優良企業であることを表している。

特徴3,生活に欠かせない内需系の事業を展開している

生活に不可欠なトイレタリー用品・食料・衣料品などの生活必需品や一般消費財を日本国内で提供している企業の業績は、景気に左右されにくい。国内で安定した需要が見込めるため、業績が乱高下しにくいのだ。これは、連続配当の原資となる利益を毎年確保するための条件と言えるだろう。

特徴4,過去に減配したことがない

連続増配する企業は、過去に減配に踏み切ったことがないことも共通している。業績を多少下方修正しても、増配を続けるだけの体力があるからであり、今後も減配リスクは少ないと言えるだろう。

特徴5,配当性向に上昇余地がある

「配当性向」とは利益をどのくらい株主に還元しているかを示す指標で、以下の計算式で算出する。

・配当性向=1株当たりの配当金額/1株当たりの当期純利益

一般的には、配当性向が高いと株主還元意識が高いと考えられる。しかし、一部の成熟企業を除けば、配当性向に上昇余地があったほうが、今後増配を継続する余力があると考えることもできる。

日本の上場企業の配当性向は、平均30%程度。これを大幅に上回る場合、翌年度以降に増配を継続すると利益を圧迫する可能性もある。高い配当性向を維持できる連続増配企業は多くないことを覚えておこう。

2,日本の連続増配企業ランキングTOP10 上位5社は20年連続増配

それでは実際に、日本株の連続増配銘柄ランキングを見てみよう。

下表の「連続増配期間」は直近決算期までを対象とし、この期間が長い順に会社名と基本情報を掲載した。なお、ホームページや公式サイトで連続増配期間を確認できた企業に限定している。

簡単に比較するために、今期の予想年間配当金額と予想配当利回り、直近決算期の実績を基準とした配当性向、2019年11月20日の終値も併記した。

日本株 連続増配銘柄ランキングTOP10(2019年11月20日現在)

順位 コード 会社名 連続
増配
年数
(年)
予想
年間配当
金額
(円)
予想配当
利回り(%)
直近配当
性向(%)
株価
1 4452 花王 29 130.0 1.54 38.2 8,449
2 8566 リコーリース 24 90.0 2.40 20.9 3,745
3 7466 SPK 21 70.0 2.48 23.7 2,827
4 4967 小林製薬 20 68.0 0.77 28.9 8,810
  8593 三菱UFJ
リース
20 25.0 3.58 30.4 698
6 4732 ユー・エス・エス 19 55.4 2.65 50.1 2,091
  9058 トランコム 19 104.0 1.43 20.7 7,270
8 9435 沖縄セルラー電話 18 136.0 3.52 38.1 3,865
  2391 プラネット 18 40.5 2.63 54.7 1,541
  5947 リンナイ 18 96.0 1.12 23.6 8,580

3,日本の連続増配銘柄ランキングTOP10入りの企業の概要を説明

上記の「日本株 連続増配銘柄ランキング」でランクインした企業は株主還元意識が高いだけでなく、毎年配当を増額できるだけの利益を上げている優良企業ばかりだ。各社の事業内容や特徴をチェックしておこう。

1位,花王――日本での連続増配トップランナー、トイレタリー用品国内トップシェア企業

1887年創業、日本の消費財業界を代表する老舗企業。スキンケア・ヘアケア製品の「ビオレ」「メリット」、ファブリック・フォームケア製品の「アタック」「クイックルワイパー」、ヒューマン・ヘルスケア製品の「メリーズ」などのトイレタリー用品の国内売上トップシェアを誇る。「ソフィーナ」「キュレル」「KATE」などの化粧品でも大手。「EVA(Economic Value Added: 経済的付加価値)経営」を掲げており、継続的な成長によって企業価値の向上に努めている。

株主優待制度を設けていないが、安定的で継続的な配当による株主還元を重視しており、自己株式の取得や有利子負債の早期返済にも積極的だ。

2位,リコーリース――リース事業と金融サービスが2本柱のリコーグループ企業

中小企業を主な顧客とし、事務用品や情報関連機器、医療機器の分野で設備のリースと割賦販売を行っている。

リース・割賦事業のほか、創業以来展開しているのが金融サービスの提供だ。ターゲットである中小企業の設備投資以外の金融関連ニーズに応えられるような、先進的で付加価値の高い金融サービスや金融商品を提供している。

長期的で安定的な株主還元が基本方針で、上場以来24期連続増配を実施している。

3位,SPK――自動車部品や産業車両部品などを扱う専門商社

伊藤忠商事の機械部から分離し、1917年に設立された。自動車部品や自動車用品、産業車両部品の企画販売まで行う機能部品専門商社。本店は大阪。自動車整備や補修のアフターマーケットを事業領域とする。

増配の継続を基本方針としている。配当性向が50%を超える場合は配当を据え置くとしているが、過去21年間で配当が据え置かれたことはなく、増配を継続している。

4位,小林製薬――芳香消臭剤のトップメーカー、連続増配に加えて株主優待も魅力

1886年創業。家庭用品製造販売を主軸に、医薬品や健康食品などのニッチ製品にも定評がある。水洗トイレ用芳香洗浄剤「ブルーレット」、トイレ用芳香消臭剤「サワデー」などのロングセラー製品や、バリエーションが豊富な「消臭元」などの芳香消臭剤では国内首位。

業績は好調に推移しており、2018年12月期は17期連続の増益、かつ過去最高益を更新した。

当期の予想配当利回りは0.77%と高くはないが、業績の伸びに応じて20期連続の増配を実施している。株主優待は、100株以上の保有で年2回5,000円相当の自社製品詰め合わせが贈呈されるため、個人投資家に人気だ。

5位,三菱UFJリース――専門性の高いソリューションを提供する環境・社会貢献型企業

国内外のカスタマービジネスが基盤。不動産、環境・エネルギー、インフラ・企業投資、航空・ロジスティクスなどの各事業部門で、高い専門性を持つリースやファイナンスサービスを提供している。

継続的かつ安定的な株主還元を基本方針としており、2019年3月期は前期比5.5円の大幅増。20期連続の増配を実施している。財務面に加えて、社会的責任も評価される社会的責任投資(SRI : Socially Responsible Investment)指標銘柄に選定されている。

6位,ユー・エス・エス――中古車オークション市場でトップシェア、業績連動でも連続増配

1980年にインターネットを使った中古車の常設オークション市場運営で創業、現在では中古車オークション市場でトップシェア(35%)を誇る。

中古車は全国19ヵ所にある現車オークション会場に持ち込まれ、週に1回セリにかけられる。会員は以下のいずれかを選ぶことができる。

・現車オークション会場で直接下見
・衛星TV専用端末機を通して参加
・インターネット回線を通じてセリに参加

連結配当性向50%以上を基本方針とする業績連動型の配当政策をとっているが、実際は上場以来19期連続で増配を行っている。

7位,トランコム――輸送マッチングサービスに強み、企業の持続的成長で19期連続増配

共同配送事業の拡大に合わせて1995年にJASDAQに株式を公開、2000年以降は右肩上がりの成長を続けている。現在は全国に広がるネットワークと豊富な情報量を背景に、空車情報や貨物情報を提供する輸送マッチングサービスを中心に展開。

株主への利益還元を経営の重要施策としている。安定的な配当水準を維持しており、業績伸長に連動した適正な利益配分を行うという基本方針に則って、19期連続増配を実施。

8位,沖縄セルラー電話――中核の通信事業を通して、沖縄の経済発展に貢献する企業

沖縄地域の携帯・自動車サービスを行う会社として、KDDIの出資により1991年に設立された。

中核である通信事業を活かして、沖縄の観光情報サイトや特産品の紹介・販売サイトを立ち上げるなど、沖縄地域の課題解決に積極的に取り組んでいる。アグリ事業も展開しており、ICTを活用した植物工場を建設して沖縄に新鮮な食材を提供している。

今後の事業展開のための内部留保や財務体質強化のほか、配当の充実も同社の基本方針であり、18期連続で増配が行われている。

9位,プラネット――業界特化型EDIサービスから発展、連続増配と高配当性向を実現

日用品・化粧品主要メーカーが出資し、1985年に日本初の業界特化型EDIサービスを構築する目的で設立された。その後、プラネットのEDIサービスは業界の垣根を越えて、ペットフード・ペット用品業界やOTC医薬品業界でも採用され、現在は流通全体で普及している。今後は、グローバルマーケットに対応できる国際的なEDIサービスの開発を目指す。

株主への利益還元を経営の最重要課題としており、継続的な増配と高い配当性向を重視している。2019年7月期は、18期連続増配と54.7%の配当性向を実現した。

10位,リンナイ――連続増配継続方針の、国内外で事業展開する熱エネルギー機器メーカー

各種熱エネルギー機器の開発・製造・販売を手掛けるリンナイは、2020年に創業100周年を迎える。

同社が提供する製品は、厨房機器や給湯機器、空調機器、温水暖房システムを利用した床暖房と幅広い。日本だけでなく世界各国のエネルギー事情に合ったソリューションを提供するなど、社会に貢献することをポリシーとして事業を展開している。

連続増配方針は継続しており、2019年3月期で18期連続増配となった。同期の配当性向は23.6%だったが、現在行っている投資が落ち着き次第、配当性向の引き上げを検討する。

4,連続増配を実施している代表的なアメリカ企業3選 P&Gなど超有名グローバル企業も

株主還元意識の高い米国では、日本に比べて連続増配銘柄が多く、その年数も日本とは比べ物にならないほど長い。

ここでは、米国株の連続増配年数TOP10銘柄のうち、世界的な有名企業3社をピックアップ。連続増配年数、2019年11月21日終値(現地時間)、2018年12月期の1株当たり年間配当金額(日本円相当額は1米ドル=108円で換算)、実績配当利回りなどの基本情報を紹介する。

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)――トイレタリー業界のワールドワイドブランド

P&Gブランドで世界的に有名なプロクター・アンド・ギャンブル は、時価総額32兆円の世界最大の一般消費財メーカーである。創業は1837年。オムツの「パンパース」、化粧品の「マックスファクター」、ヘアケア製品の「ヴィダルサスーン」、歯磨剤の「Crest」などを世界中で展開している。

時代のニーズに合わせた事業展開と巧みなマーケティングで、持続的な成長と連続増配を維持している超優良企業だ。

基本情報

連続増配年数 63年
株価(現地時間2019年11月21日終値) 120.34米ドル(12,996円相当)
2018年12月期 1株当たり年間配当金額 2.955米ドル(319円相当)
12月31日終値 91.92米ドル(9,927円相当)
配当利回り(12月31日基準) 3.12%

スリーエム――「ポスト・イット」で有名な、米国の巨大化学・電気素材メーカー

「3M」ブランドで世界的に有名なスリーエム は、時価総額が10兆円を超える巨大グローバル企業。産業分野・交通分野ではビニール、ポリエステル、フィルム製品など、ヘルスケア分野では医療用テープや外科処置用製品などを中心に提供している。オフィス用・家庭用の主力製品は、粘着テープの「スコッチ」や「ポスト・イット」、ディスプレイ用資材などだ。

基本情報

連続増配年数 61年
株価(現地時間2019年11月21日終値) 165.03米ドル(17,823円相当)
2018年12月期 1株当たり年間配当金額 5.76米ドル(622円相当)
12月31日終値 190.54米ドル(20,578円相当)
配当利回り(12月31日基準) 3.02%

コカ・コーラ――世界中で最も飲まれているノンアルコール飲料メーカー

各種ノンアルコール飲料を製造・販売する世界NO.1メーカー。コカ・コーラ が取り扱うブランドは500種類以上だ。「コカ・コーラ」「ダイエット・コーク」「ミニッツ・メイド」「アクエリアス」などが有名。炭酸飲料、ダイエット炭酸飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、水、スポーツ飲料、エネルギー飲料など、消費者のニーズに合わせて多様な製品を提供している。

時価総額は24兆円超。P&G、3Mとともに、NYダウとS&P500の構成銘柄に採用されている。

基本情報

連続増配年数 57年
株価(現地時間2019年11月21日終値) 52.99米ドル(5,722円相当)
2018年12月期 1株当たり年間配当金額 1.60米ドル(172円相当)
12月31日終値 47.35米ドル(5,113円相当)
配当利回り(12月31日基準) 3.38%

5,連続増配企業投資のメリットとデメリット

上記のように、連続増配企業は優良企業であることが多い。これらに絞って投資することに、どのようなメリット・デメリットがあるだろうか。

メリット,忙しい人でも、手間をかけずにローリスクで株式投資ができる

・長期的なスパンで見たときに業績が右肩上がり
・「安定的で継続的な配当」や「継続的な増配」を株主還元策の基本方針としている

このような企業の株式を10~20年ほど保有すれば、ある程度の配当収入を得られるようになるだろう。

目的は配当収入なので、株価の変動に一喜一憂する必要はない。マーケットや個別銘柄の株価を毎日チェックする必要がないのも、多忙な人にとっては好都合だろう。

デメリット,連続増配が最善の株主還元策というわけではない

「連続増配を基本方針にしている会社だから、長期投資に適している」と判断するのは早計だ。

株主還元策には、大きく分けて「増配」と「自社株買い」がある。

自社株買いとは、市場に流通する自社株式を買い戻すことで株主への利益配分を増やすことだ。連続増配に加えて、積極的あるいは定期的に自社株買いを実施すれば、株主への利益配分はより多くなる。

長期保有を前提とした投資を検討している場合は、連続増配だけでなく自社株買いの状況や株主優待の内容も確認し、総合的に判断するべきだ。

6,連続増配銘柄への投資では10~20年後の資産形成を狙う

「自分には長期投資が向いている」と考えるなら、連続増配銘柄ランキングなどで銘柄をピックアップして、そこから探すのもいいだろう。

日本株の連続増配銘柄ならば、米国株のように為替手数料や為替レートを気にする必要がないので、投資初心者には適していると言えるだろう。

日本株の連続増配銘柄を購入したら、あとは気長に配当が増えるのを待つ、あるいは買い増して配当収入を増やすのもいいだろう。

文・近藤真理(フリーライター)/MONEY TIMES

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