うっかり口にしがちな残念な口癖とは?
相手の話を否定する所から入るのも厳禁です。「それはちょっと」「しかし、そうはうまく行かないと思いますよ」など、まだ試しても、行動してもいないうちから否定されると、相手にとって、とてつもないマイナスのダメージとなります。求められてもいないのに否定されると、開きかけていた心はほぼシャットダウンされてしまいます。その「うっかり」が命取りになることもありますから、注意してください。
さらに細かいことを言えば、残念な口癖を持っている人がいます。よくあるのが、言葉の最初に「いや」などとつけてしまう人。「いや、そうなんですよ」「いやぁ、先日お会いした時に」など、本人は相手の言葉を否定するのではなく、無意識に「いや」と前置きをつけて会話のリズムを作っていることがあります。
自分流の一番話しやすい話し方なのかもしれませんが、相手からすれば、「いや」という言葉を聞いた段階で、直後に肯定の言葉が続いたとしても気持ちは少々引いてしまいます。「いや」のほか、「しかし」「でも」「やっぱり」なども同類の言葉です。
間違いがないのは、「そうですね」。全部「そうですね」から入れば、相手を肯定したことになるので、話の流れを乱すことはありません。
また返答に困った時はとっさに相手の言葉の語尾を取って、オウム返しにする方法もあります。すると、それだけで「こちらはきちんと話を聞いていますよ」という意思表示につながります。
つい早口になりがちな人も注意です。自分では頭の中でストーリーが整理されているにもかかわらず、相手には「よくわからない」と言われると、つい「何でわからないの?」と思ってしまうでしょう。
しかし、相手にはこちらの頭の中が見えていないのですから、ちょっとでも理解できない部分があってつまずいてしまうと、もうその続きはあっという間に通り過ぎていき、追いつけません。
早口と言われたことがなくても、意識的に通常の話し方よりもゆっくりと話したほうが、相手に理解してもらいやすくなります。特に電話の場合は、話すスピードについてはより意識したほうがいいでしょう。
会話のテクニックとしては些細なことかもしれませんが、どこに落とし穴があるかわかりません。落ち着いて話すことが、まず一番大切なことです。
「本当の話し上手は聞き上手」という言葉があるくらいで、聞く力のほうが、話し方を学ぶよりよほど重要です。上手に聞くことで、相手を饒舌にして、満足行く形で話しきって頂いたあと、「で、どんな用件だったっけ?」となり、自分の希望を通しやすくなる傾向があります。自分の交渉を成功に導くために聞き上手になるということ意識しましょう。
POINT 相手の話を遮ったり、勝手にまとめてしまわない。「いや」といった無意識の口癖も要注意。
石井通明(いしい・みちあき)
日本交渉学会正会員
1979年生まれ。アルバイト時代にコールセンターでテレフォンオペレーターの仕事に従事。そのまま会社に就職し、リーダー、課長、部長に5年で昇進し、取締役COOに最短で就任。現場では、電話業務から強いられる困難な応対をまとめる立場として、交渉の能力を高めた。そのあと、コールセンターの依頼主やクレーム主との対応などで交渉術の奥深さを知り、交渉のスキルを高めるために、2012年から交渉学の権威である英国ウェールズ大学で3年間学び、MBAを取得。ハーバード流交渉術や行動心理学、コンフリクトマネジメント(職場で発生する利害の衝突・対立を、組織の成長や問題解決につなげようとする取り組み)などを研究。MBAを取得後、交渉のスペシャリストとしてコンサル、講演をこなす。日本交渉学会の気鋭の若手として活躍中。交渉学についての学術論文「声の印象による交渉術」が大阪大学、学会から高い評価を得た。(『THE21オンライン』2019年10月31日 公開)
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