GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)呼ばれる4大企業の中で、Googleは株式会社ではなくLLC(Limited Liability Company)であることをご存じだろうか? また、AppleとAmazonの日本法人も同じくLLCの組織形態である。
LLC(Limited Liability Company)の直訳は「有限責任会社」で、米国では株式会社と遜色ないほどポピュラーな存在である。日本では2006年5月に有限会社法を統合した会社法が施行されたのに伴い、有限会社に代わって設立できるようになり、「合同会社」と呼ばれる。
LLCのメリットは、経営責任が出資額の範囲内にとどまる「有限責任」でありながら、利益配分(配当の支払い)には制約がなく、自由に決められることにある。加えて、株式会社と比べて設立時のコストも安く、その手続き自体も容易だ。
しかも、米国のLLCには魅力的な税制上の選択肢が設けられている。実は、米国で不動産投資を行う際に現地でLCCを設立するという動きが日本の富裕層の間で密かに活発化しているのだ。では、税金に関してどのような恩恵を受けられるのだろうか?
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米国のLLCは「パススルー課税」で二重課税を回避できる!
日本の富裕層が注目する米国のLLCに設けられた税制上の選択肢、それは「パススルー課税(構成員課税)」と呼ばれるものだ。LLCが得た利益に対して法人税を取るのではなく、その組織の構成員たちが受け取った配当から所得税を徴収することで課税が完結する。
日本の富裕層は米国で設立したLLCの名義で現地不動産を購入し、「パススルー課税」を選んで法人税の徴収を避け、配当から差し引かれる所得税だけに税負担を抑えている。富裕層向けに海外資産の運用を提案している公認会計士の坂田富雄氏(仮名)はこう説明する。
「通常ですと、まずは法人が得た利益から法人税が課税されます。そして、税引き後の利益を出資者に還元したものが配当ですが、それを受け取る際には所得税が徴収されます。つまり、二重課税の状態に陥っているわけですが、『パススルー課税』を選べば法人税がかからず、それを回避できるのです」
ただし、日本における税制上の解釈は異なっているし、そもそもLLCの組織形態であっても、国内では「パススルー課税」を選択できない。日本では通常の外国法人として同じように扱われ、不動産の運用益はLLCが得たものとして法人税課税の対象となってくる。
さらに、このシリーズの第5回でも触れた「タックスヘイブン対策税制」が適用される可能性もある。2017年度に改正されるまでなら、海外で設立した法人に課される税率が20%以上に達していればその恐れはなかったが、現在はその水準に達していても単なるペーパーカンパニーだと税務当局が判定すると同税制が適用され、出資者の雑所得とみなして15.105〜55.945%の累進税率が課されるのだ。
「日本の富裕層が米国のLLCを通じて現地の不動産に投資しているのは、すでに税務当局が察知しています。その邦人に実態が伴っていることの裏づけをしっかりと残しておく必要があり、相応のノウハウのある専門家抜きでは乗り切れないでしょう」(坂田氏)